一般社団法人コード・フォー・ジャパン(以下、Code for Japan)は、IT活用の面で支援を求める自治体と、それに必要な技術・ノウハウを持つ企業とのマッチングを行う「コーポレートフェローシップ」を発表。1月7日より、参加希望の自治体と企業の募集を開始した。
Code for Japanは、米国のCode for Americaをモデルに設立された団体で、オープンデータやシビックテック(市民が地元の課題の解決する取り組みやそのための技術)を日本国内で推進している。コーポレートフェローシップはその施策の1つで、企業が自治体に職員を派遣し、地域コミュニティと協力して地域の課題解決に取り組む。
発表に臨んだCode for Japan代表の関 治之氏によれば、職員を派遣する企業にとっての参加メリットには、「CSR(企業の社会的責任)の遂行」「人材育成」「新規事業のシード獲得」があるという。派遣された職員は、地元の市民や団体とコミュニケーションを取りつつ、白紙の状態あるいはそれに近い状態から課題解決に取り組むことになるため、リーダーシップ人材やグローバル人材を育成する場として最適。また、自治体や地域がかかえる課題に直接触れるため、ITを活用したソリューション開発などの発想を得られる機会ともなる。もちろん、自治体やその地域の人脈なども広げることができるだろう。
マッチングは、事前にCode for Japanが自治体側からヒアリングした課題を公開して、そこに企業側が応募する形で始まる。そこから、課題解決に必要なスキルを持つ人材が複数企業から2~3名選ばれ、派遣先の自治体内で勤務する。派遣期間中の人材への給与は、派遣企業が負担する。派遣期間は3か月。また、派遣企業は、派遣する職員1名当たり50万円程度(予定)のコーディネートフィーを、Code for Japanに支払う。
Code for Japanでは半年ごとに派遣を行う。初年度は半年に5自治体ずつ派遣を行う予定で、派遣先自治体を増やしながら、今後3年間でトータル100自治体に人材を派遣することを目標に掲げている。
トライアルプロジェクトで人材育成に確かな実感
また、コーポレートフェローシップを開始するに当たり、Code for Japanは福井県鯖江市とトライアルプロジェクトを行った。鯖江市はオープンデータへの先進的な取り組みを行っているが、オープンデータ活用の成果や効果を、広く市民が実感できていないという課題を抱えているという。トライアルプロジェクトでは、この課題の解決にチャレンジした。
現地に派遣され、トライアルプロジェクトを推進したSAPジャパン ソリューション&イノベーション統括本部 テクノロジーソリューション部 シニアソリューションプリンシパルの奥野和弘氏が最初に取り組んだのは、オープンデータの取り組みをさらに推進するために今後取り組むべき施策の整理。そこから、優先的に実施すべき施策として次の3つを導き出した。
- 統一された窓口サイトの設置
- データ公開の手引きの整備
- 市民による定期的なアイデアソンの実施
さらに「3. 市民による定期的なアイデアソンの実施」を実現するための準備として、「若者が住みたくなる、住み続けたくなるまち」づくりと、「外国人観光客に感動を提供するまち」づくりをテーマとして、「デザインシンキング in 鯖江」と題したアイデアソンを開催。参加者は、合わせて30名の鯖江市民および鯖江市役所職員と、デザインシンキングの指導のためにSAPジャパンから派遣された10名。成果として、合計133ものアイデアが生まれた。
プロジェクトを終えた感想として、奥野氏は「これまで無意識に使ってきたカタカナ語を使ってはいけないなど、これまでの仕事のやり方が通用しないことも多く、これまでSAPジャパンで携わった仕事の中で一番きつかった。しかしその分、慣れきっていた仕事を見直す機会になるなど、学べたことも大量にあった」と述べ、コーポレートフェローシップが人材育成に効果があることをアピールした。
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市古 明典(編集部)(イチゴ アキノリ)
CodeZine編集部3年目の44歳。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より現職。9月から翌年2月まではNFL観戦のため、常時寝不足。...
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