急速に拡大するスマートフォン広告に求められる「自動化」
急速に市場を拡大しつつあるオンライン広告。なかでも急速な伸び率を見せているのがスマートフォン広告だ。サイバーエージェントグループでもスマートフォン事業の売上は順調に推移しており、いまや全体の77%(※1)を占めるほど存在感を増している。CyberZはこのスマートフォン関連事業に特化した子会社として、急成長を続けてきた。特に2014年は、サイバーエージェントグループ全体のスマートフォン広告領域において昨年の倍近い数字で増収増益となり、国内No.1シェア(※2)を勝ち取った。この勢いは2015年も続いていくことが予測される。
※1 2015年2月時点
※2 株式会社CyberZ/シード・プランニング共同調べ(2014年度版)
こうしたCyberZの躍進を支えているのが、スマートフォンアプリマーケティングツール「F.O.X」。アプリインストール後のアプリ内のアクション、遷移、継続利用などを計測・分析し、スマホアプリプロモーションの最適化を実現するマーケティングツールである。GoogleやFacebook、Twitter、LINEなど世界中のメディアと連携し、日本を中心に世界にも利用が増えてきているという。市川氏は「基本的には裏側の隠れたところで動くツールではあるが、いまやスマートフォンマーケティングの中核を担うようになりつつある」と胸を張る。
日本におけるスマートフォンに特化したマーケティングツールとして圧倒的なシェアを持ち、これまでに対象となった端末数は1億台以上。さらに今後も増え続けることが予測されるため、CyberZは早々に人工知能の研究をはじめ、実用化を進めてきたという。
ここで市川氏は、これまでのアドテクノロジーの進化について紹介する。オンライン広告がはじまってから高い広告効果を出すために、「どこに出すか(純広告)」「どのカテゴリに出すか(アドネットワーク)」「最適な投資、単価で出すか(DSP)」「誰にどうやって出すか(DMP)」というように広告主や代理店の関心は移り変わってきた。現在は「どこに出すか」から「誰に出すか」に、配信方法も「期間・場所指定」から「フレキシブルな入札」に、そして対象も「媒体の属性」から「ユーザーに直接」へと、よりパーソナルなアプローチが求められつつある。
その一方で、オンライン広告の業界地図である「カオスマップ」に象徴されるように、広告に関わるプレイヤーが複雑化しており、広告全体の管理や運用が難しくなってきたという実情も見逃せない。そして、そうした状況下でも広告を運用・管理するのはテクノロジーではなく、人力であり、ノウハウなども属人化しているのが現状だ。
広告配信の自動化により、担当者はより戦略的な業務に専念できる
市川氏は、こうした現状を踏まえ、「人はあくまで目標の設定と確認に集中すべき。『F.O.X』は近い未来にターゲティングから広告配信、効果計測、レポーティング、分析、運用と、そのすべてを自動的に最適化していきたい。そうすることで運用する人がいなくても、有効な広告が打てるようになる」と展望を語る。代理店やマーケティング担当者は、広告の戦略を考えることとその検証・考察に特化すべきというわけだ。
そこに人工知能による予測・自動化が、売上予測、コンテンツの最適化、ユーザーへの接触、ターゲティング、行動予測、配信最適化などに大いに効力を発揮するという。
たとえば、1日の売上を構成するのは、「DAU(1日にアプリにアクセスするユーザー数)」と「ARPDAU(1日にアクセスした人の平均課金額)」という要素に分解することができる。つまり「DAU」と「ARPDAU」の予測ができれば、1日の売上を予測できることになる。そこで「DAU」「ARPDAU」をそれぞれ過去の時系列データから分析し、予測する。すると、現在の予測値で約10%未満の誤差での予測が可能になるという。事前に売上の予測ができれば、売上目標との乖離がわかり、「広告によって、どうやって埋めるか」という戦略を先取りして考えられるようになる。しかしながら、広告に関わるプレイヤーは複雑化しており、最適なプロモーションを行うことは難しい。そこで、人工知能を活用したシミュレーションを行うという。
たとえば月間の売上目標を達成するための最適プロモーションについて市川氏は次のように説明する。ユーザーを月初に獲得した方が月内の貢献度は高いため、広告も月初に集中することが望ましい。しかし、大量出稿は獲得効率が悪化するため、月初だけに集中しても思うような効果は上げられない。そこで月間を通じての最適な予算投下の計画が必要になる。このような複雑な最適化問題は人間よりも機械の方が得意な作業であり、人工知能によるシミュレーションが有効に活用できる。

他にも次のような取り組みが紹介された。
(1)ランキング予測×最適広告投下
アプリは人気ランキングの上位になるほど注目され、インストール数も増え、必然的に売上も増加する。ランクインするためには広告投下が有効だが、その際に有効な広告費や広告手法などを見極め、売上増加に対する最適バランスを導き出す。
(2)クリエイティブの自動生成
配信先のコンテンツを読み込み、その中でユーザーにとって最適な画像やテキストを抽出し、広告作成を自動化する。現在はまだ十分には対応できていないが、将来的には文章の自動化も行っていく予定だという。
(3)アプリ運用の最適化
かつては一部のアプリ、サービスに集中していたが、現在はアプリの種類も多様化したことによりユーザーが多くのアプリを使っているので、ユーザーとのタッチポイントが増えている。そこでターゲットとなるユーザーの行動を予測し、プッシュ広告やコンテンツ広告、メディア配信など、最適な接触方法を導き出してアプリへの呼び戻しを行い、エンゲージメントを最大化させる。
この他、まだ実用化には時間を要するものもあるが、様々な施策に取り組んでいるという。いずれもカギとなるのは、CyberZがこれまでに取得し蓄積してきた、そしてこれからも増え続けていくであろう膨大なデータである。
市川氏は「こうしたデータを保有していることを自社の強みとし、それらを人工知能を用いて有効活用することで世界中のスマートデバイス市場を牽引したい。我々が怠けては市場が停滞してしまうという自覚をもち、広告主をはじめユーザーに有益な価値を提供していきたい」と意欲を語った。
最後に市川氏は「CyberZは仲間も多く募集しているので、ぜひ一度、CyberZのサイトを見てほしい」と呼びかけ、セッションを終えた。
CyberZでは下記のような方を求めています。
- 人工知能・機械学習でF.O.Xの持っている大量のデータを読み解くことにワクワクする方
- ベンチャー企業ならではの攻めの姿勢で最先端の技術を取り入れていきたい方
- 大きな裁量権のもと、スマートフォン業界へインパクトを与える新しいチャレンジをしたいと思える方
F.O.Xを創っているエンジニアには積極投資もしているので、興味をもった方はまずは気軽にオフィスに遊びに来てください。