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あらゆるソフトウェア開発者のサポートを目指す開発ツール「Visual Studio 2015」特集(AD)

.NETアプリケーションをMacで開発してDockerで動かそう!

あらゆるソフトウェア開発者のサポートを目指す開発ツール「Visual Studio 2015」特集 第3回

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 .NET FrameworkはWindowsで人気のあるアプリケーション実行環境です。2014年11月に.NET Frameworkのコア部分を、マルチプラットフォームのオープンソースとして公開していくとMicrosoftが発表しました。Linuxで動作する.NET Framework互換環境は以前から存在していましたが、正式サポートがないため導入が難しい一面がありました。しかし、Microsoftが正式なサポートを明言したことにより、LinuxやMacでC#アプリケーションを導入する機会が増えようとしています。

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はじめに

 本稿では、MacでC#によるWebアプリケーションを作成し、Linux上のDockerにデプロイする方法について紹介します。なお、現時点ではプレビュー版であり、不具合が発生したり、利用方法が変更される可能性があることをご了承ください。

 筆者が動作確認した環境のバージョンは以下のとおりです。

本稿で利用した環境一覧
ソフト バージョン 用途
Mac OS X 10.10.3 開発端末
Visual Studio Code 0.5.0 開発エディタ(詳細は『マイクロソフトのクロスプラットフォーム対応新コーディングツール「Visual Studio Code」』を参照)
HomeBrew 0.9.5 パッケージ管理。.NET Version Managerのインストールに使用
.NET Version Manager 1.0.0 Beta6 .NETのバージョン管理に使用
Node.js 0.12.2 Yeomanの実行に必要
Yeoman 1.4.6 ASP.NETアプリのひな形作成に使用
CoreOS Stable 717.3 サーバー用OS
Docker 1.5.0 実行環境用コンテナ

 私見ではありますが、Microsoftテクノロジーの魅力は、生産性が高いC#言語と、機能が豊富な.NETのクラスライブラリ群ではないかと考えています。

 これまで本番サーバーにLinuxが採用されていた場合、開発言語はJava、PHP、Rubyなどが選択されていたと思います。しかし、.NET Framewrok(以降、.NET)がマルチプラットフォーム対応することにより、今後C#が採用される機会が増えていくと思われます。柔軟な静的型付言語に興味があるようでしたら、C#を試していただけると幸いです。

環境のセットアップ

 それでは、Macで.NETの開発環境を整えていきましょう。

HomeBrewのインストール

 まずは、ソフトウェアの管理を行うHomeBrewをインストールします。ターミナルを起動し、以下のコマンドを入力します。

HomeBrewをインストールするコマンド(ruby)
$ ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"

 インストールが成功すると、brewコマンドが使用できるようになり、.NET環境を簡単に管理できるようになります。

.NET環境のインストール

 brewコマンドを使って、.NETリポジトリの設定と導入を進めていきます。

HomeBrewで.NETをインストールするコマンド(brewコマンド)
##### ASP.NETのリポジトリを追加 #####
$ brew tap aspnet/dnx

##### パッケージ(formula)をアップデート #####
$ brew update

##### .NETバージョンマネージャ「dnvm」をインストール #####
$ brew install dnvm

 brewコマンドで、.NETバージョンマネージャ「dnvm」をインストールします。これに伴い、Linuxの.NET実行環境であるMonoがインストールされます。その後、GitHubのASP.NET最新モジュールもインストールされます。

起動スクリプトの設定

 手動作業として、シェルの起動スクリプト(Bashの場合「bash_profile」)にdnvm.shが自動で呼び出されるように設定します。

Bash起動時にdnvm.shを読み込む設定(シェル)
##### 毎回、自動で読み込まれるように設定
$ echo source dnvm.sh >> ./bash_profile

.NETバージョンマネージャ「dnvm」の起動

 .NETバージョンマネージャのセットアップが完了したので、.NETバージョンマネージャ「dnvm」を起動します。

ターミナルの画面(dnvmコマンド)
ターミナルの画面(dnvmコマンド)

 コマンドdnvmを引数なしで実行した場合は、現在の設定が表示されます。

dnvmコマンドの実行結果(dnvmコマンド)
$ dnvm
...中略...
Default Stable: https://www.nuget.org/api/v2
Default Unstable: https://www.myget.org/F/aspnetvnext/api/v2

 それでは、upgradeコマンドを実行してみましょう。最新の.NET frameworkが提供されていれば、そのバージョンに更新されます。

コマンドの実行結果(dnvmコマンド)
$ dnvm upgrade
...中略...
Updating alias 'default' to 'dnx-mono.1.0.0-beta5'

$ dnvm list
Active Version              Runtime Arch Location             Alias
------ -------              ------- ---- --------             -----
  *    1.0.0-beta5          mono         ~/.dnx/runtimes      default

 実行結果に表示されているように、ユーザーフォルダの/.dnxフォルダに実行に必要なファイルや、依存パッケージのDLLが格納されます。インストールされた.NET Frameworkのバージョンを一覧表示したり、切り替え設定を行ったりすることができます。

 dnvmコマンドの主要な引数は下表のとおりです。

dnvmコマンドの主要引数
引数 説明
upgrade 最新版をインストール。-fオプションで再インストール、-uオプションでUnstable(開発中)バージョンをインストール
install フィードやファイルを指定してインストール
use インストール済み.NETバージョンを選択

 以上で、.NET環境のセットアップができました。

Webプログラムのひな形を作成

 それでは、Webプログラムのひな形を作成しましょう。MicrosoftのWeb技術「ASP.NET」のプロジェクトは、C#プログラム(*.cs)、ビューファイル(*.cshtml)、設定ファイル(*.json)などから構成されます。これらを1つずつ手動で作成していくことは手間なので、ひな形を作成できるYeomonというツールを使用します。

Node.jsとYeomanのインストール

 まず、HomeBrewでNode.jsをインストールします。Node.jsはサーバーサイドJavaScript環境として有名なプロダクトです。ここでは、Node.jsのパッケージ管理ツールnpmを使用するためにインストールします。

 Yeomanのインストールはnpmコマンドを使用します。Yeomanは、ひな型生成の「Yo」、ライブラリ依存管理「Bower」、ビルドツール「Grunt」から構成されます。あわせて、YeamanでASP.NET5のジェネレーターをインストールします。

Node.jsとYeomanのインストール(brewコマンド)
##### HomeBrewで、Node.jsのインストール
$ brew install node

##### npmで、Yeomanのインストール
$ npm install -g yo

##### npmで、ASP.NETのジェネレータをインストール
$ npm install -g generator-aspnet

Web基盤「ASP.NET」

 ASP.NETはWebにフォーカスしたMicrosoftのテクノロジーです。最新のASP.NET MVCでは、Web標準やオープンソースと相性の良い技術を採用しています。

YeomanでASP.NETのソースを生成

 YeomanとASP.NET5ジェネレータがインストールできたので、実際にASP.NETのひな形を生成してみましょう。「yo aspnet」と入力することで、ASP.NETのひな形を生成する画面が表示されます。現時点では「空プロジェクト」「コンソールアプリケーション」「認証ありWebアプリケーション」「認証なしWebアプリケーション」「WebAPI」「Nancy(注1)」「クラスライブラリ」の7種類から選択できます。

注1

 RubyのSinatraに影響を受けた軽量フレームワーク。 詳細はGitHubのNuncyページ参照。

ASP.NET5のジェネレーターを起動してWebAPIを生成(yoコマンド)
##### ASP.NET5ジェネレートを生成 #####
$ yo aspnet
...中略...
? What type of application do you want to create? (Use arrow keys)
?? Empty Application
  Console Application
  Web Application
  Web Application Simple [without Membership and Authorization]
  Web API Application
  Nancy ASP.NET Application
  Class Library

##### プロジェクトの種類を選択して、名前を入力するとひな形が生成される #####

? What type of application do you want to create? Web API Application
? What's the name of your ASP.NET application? MyWebApi
   create MyWebApi.gitignore
   create MyWebApi/hosting.ini
   create MyWebApi/Startup.cs
   create MyWebApi/project.json
   create MyWebApi/Properties/launchSettings.json
   create MyWebApi/Controllers/ValuesController.cs
   create MyWebApi/wwwroot/README.md

 本稿ではWebAPIを作成できる「Web API Application」をカーソルで選択して、エンターキーを押下します。ここではプロジェクト名として「MyWebAPI」と入力します。

プログラムの実行

 Yeomanでひな形を生成するとコマンド例が表示されますので、そのとおり実行してみましょう。パッケージ管理コマンド「dnu」とアプリ起動コマンド「dnx」を使って、ソースコードのビルドと実行ができます。ASP.NET5の概要については、筆者の解説記事をご覧ください。

WebAPIアプリケーションのビルドと起動(dnu/dnxコマンド)
##### フォルダを移動 #####
$ cd "MyWebApi"

##### dnuコマンドで、依存するDLLをnugetサーバーから取得 #####
$ dnu restore
Microsoft .NET Development Utility Mono-x64-1.0.0-beta5-12103
...中略...
Restore complete, 9014ms elapsed

##### dnuコマンドで、ビルドを実行 #####
$ dnu build
...中略...
Build succeeded.
    0 Warning(s)
    0 Error(s)
Time elapsed 00:00:02.3776756

##### dnxコマンドで、Webサーバー「kestrel」を起動 #####
$ dnx . kestrel
Started

 以上の操作で、localhostの5000ポートでWebサービスを起動できました。

WebAPIの実行結果をブラウザで確認
WebAPIの実行結果をブラウザで確認

 なお、Yeomanで生成されたコードを編集するには、Visual Studio Codeを使うと便利です。詳細はマイクロソフトのクロスプラットフォーム対応新コーディングツール「Visual Studio Code」をご覧ください。

 ソースが準備できたので、Dockerにデプロイする方法について紹介していきます。

Dockerについて

 Dockerとは軽量なコンテナ型の仮想化ソフトウェア環境で、デプロイをシンプルに管理できます。ASP.NET5のアプリケーションもDockerで動作させることができます。

 先ほど作成したWebAPIアプリケーションをCoreOSで動かしてみましょう。CoreOSはDockerに特化した軽量Linuxディストリビューションです。本稿では、Microsoft AzureでDocker環境を準備しますが、Dockerがセットアップできれば、他のクラウドサービスでも構いません。

Microsoft Azureで、CoreOSの設定

 Azureでインスタンスを作るには、ギャラリーからCoreOSのStableを選択します。

CoreOSのセットアップでアカウント情報を設定(Azureの管理画面)
CoreOSのセットアップでアカウント情報を設定(Azureの管理画面)

 sshキーかパスワードを設定します。

CoreOSのセットアップでエンドポイントを追加(Azureの管理画面)
CoreOSのセットアップでエンドポイントを追加(Azureの管理画面)

 外部から接続するためエンドポイントにHTTPとSSHが存在する状態に設定します。CoreOSのセットアップが完了すると、そのままDockerが使用できる状態になっています。

CoreOSにログイン

 プロビジョニングが終わったら、ターミナルからSSHクライアント「ssh ユーザー名@アクセスするサーバー名」で接続します。サーバーに接続できたら、Docker用のフォルダとファイルを作成するため、以下のコマンドを実行します。

CoreOSでDockerの設定を準備(シェル)
##### ユーザーのホームへ移動 #####
cd 

##### 作業フォルダを作って移動 #####
mkdir sample
cd sample

##### デプロイ用Docker設定ファイルを作成(vim以外のエディタも可) #####
vim Dockerfile

Dockerfileの編集

 Dockerfileを記述する前に、コンテナに格納するファイル群を準備します。通常はGit等のソース管理リポジトリから最新ソースを取得してきますが、今回は手動でローカルフォルダのファイルを配置します。筆者の場合は、FileZillaのSFTPを使用してCoreOSにアップロードしました。

Dockerの設定を行うフォルダ構成
Dockerの設定を行うフォルダ構成

 ファイルが準備できたら、Dockerの挙動を設定する「Dockerfile」を作成します。

Dockerfileの設定内容
FROM microsoft/aspnet:1.0.0-beta5

ADD ./MyWebApi /app
WORKDIR /app
RUN ["dnu", "restore"]

EXPOSE 5000
ENTRYPOINT ["dnx", ".", "kestrel"]

 本稿のDockerファイルでは、以下の命令を設定しています。

  1. FROM命令で、Microsoftが提供しているDockerのOSイメージ「aspnet:1.0.0-beta5」を指定
  2. ADD命令で、MyWebApiフォルダに配置したホストファイル群をコンテナ側にappにコピー
  3. WORKDIR命令で、appフォルダを作業ディレクトリに設定
  4. RUN命令で、「dnu restore」コマンドを実行
  5. EXPOSE命令で、Dockerが通信に使用するポートを指定
  6. ENTRYPOINT命令で、Dockerで起動した時のコマンド「dnx . kestrel」を指定

 Dockerファイルの命令についてはコンテナ仮想化ツールDockerをつかったコードによるWebアプリケーション実行環境の構築をご覧ください。

Dockerイメージ作成

 Dockerfile設定とファイルの準備が整いました。続けてコンテナに配置する元となるDockerイメージを作成します。

Dockerイメージの作成コマンドを実行(dockerコマンド)
##### Dockerイメージを作成(Dockerfileが存在するフォルダで実行) #####
$ sudo docker build -t codezine .
...中略...
Successfully built 84217453f212

##### Dockerイメージの確認 #####
$ sudo docker images

REPOSITORY       TAG         IMAGE ID     CREATED       VIRTUAL SIZE
codezine         latest      84217453f212 8 minutes ago 821.7 MB
microsoft/aspnet 1.0.0-beta5 3f72afbf5e5a 2 days ago    729.7 MB

 まず「docker build」コマンドでcodezineという名前のDockerイメージを作成します。Dockerfileの内容に従い順次コマンドが実行されます。初回は、OSイメージの取得やdnu restoreコマンドでアセンブリの取得をするため時間がかかります。

 「docker build」コマンドでイメージが作成できたら、「docker images」コマンドでDockerイメージが作成されていることを確認します。

Dockerコンテナに配置

 Dockerイメージが作成できたので、コンテナにイメージを配置します。

Dockerイメージの確認(dockerコマンド)
sudo docker run -t -p 80:5000 codezine

 コマンド「docker run」でポート5000を80に割り当てて実行します。エラーがない場合は、そのままコンテナの実行モードに入りますので、ブラウザからデプロイ結果を確認します。

Dockerのデプロイに成功し、WebAPIを呼び出せていることを確認
Dockerのデプロイに成功し、WebAPIを呼び出せていることを確認

 無事動いていることを確認できました。

 Dockerコンテナに正しくデプロイできたので、いったん停止して、次はバックグラウンドとして起動します。これによって、常時起動することができます。

実行中のDockerコンテナの確認と停止
##### 上記コマンドで実行できているDockerコンテナを確認 #####
sudo docker ps

CONTAINER ID        IMAGE               COMMAND             CREATED             STATUS              PORTS                  NAMES
bc14f4a3267e        codezine:latest     "dnx . kestrel"     3 minutes ago       Up 3 minutes        0.0.0.0:80->5000/tcp   berserk_mestorf

##### 上記のコマンドで確認できるコンテナIDを指定して、コンテナを停止 #####
sudo docker stop bc14f4a3267e

##### デーモンとして起動する場合は、-dオプションをつけて実行 #####
sudo docker run -t -d -p 80:5000 codezine

 以上、C#とASP.NETで構築したアプリケーションが、Dockerで運用できるようになりました。

最後に

 駆け足でしたが、.NETアプリケーションをMacで開発してLinuxにデプロイするという流れを紹介してきました。C#と.NETは、15年以上の歳月を経て成長してきた信頼あるアプリケーション基盤です。今後、MacとDockerで簡単に開発できることから、活用する機会は増していくと思われます。まだプレビュー段階ですが、今後の開発言語の一つとして注目してみてはいかがでしょうか。

参考資料

  1. オープンソース化され、MacOS XとLinuxに対応する「.NET Core」とは何か?』(Publickey)
  2. Linux & Mac OS でも動く ASP.NET 5』(マイクロソフト 井上章 のブログ )
  3. GithubのASP.NETホーム(英語)
  4. ASP.NET5のHomeBrewプロジェクト(英語)
  5. ASP.NET5のMacインストール方法(英語)
  6. Visual Studio CodeにおけるMacのセットアップ(英語)
  7. あなたのWeb開発人生を変えるYeoman、Bower、Yoのインストールと使い方 』(@IT)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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