前回の記事【「機械学習」を始める前に知っておくこと・検討すべきこと 】へ
これもあれも機械学習?
日本政府もAI(人工知能)の必要性を表明しました。これを受け、AI技術の中核となる機械学習への注目は一過性ではなく、しばらく継続するものと思われます。
筆者としてはうれしい反面、各種メディアで取り上げられたことで、機械学習がバズワード化してしまったように感じられます。今では、多くの製品が何らかの機械学習機能を搭載したと言い始めたり、以前から搭載されていた機械学習(あるいはそれに類似した)機能をこのタイミングで大々的にアピールしたりと、マーケティング戦略の一環として「機械学習」という言葉が利用されています。
このように、新旧様々なものが機械学習と言い出したことで、「どの機能がどう機械学習と関連しているのか」「そもそもどのような機械学習サービスを選べばいいのか」が分からなくなった方が増えているように感じます。そこで本稿では、機械学習の機能・サービスを提供形態から次の3つの型に分類し(コンサルティングのように人が介在するものを除く)、
- 組み込み型
- プラットフォーム型
- ライブラリ型
そして、それぞれにどのような特徴があるか明確化したいと思います。また最後に、筆者が所属するオラクルが提供している機械学習機能を紹介します。
「組み込み型」で提供される機械学習サービス
機械学習が製品に組み込まれている場合があります。ERPパッケージやEPMパッケージなどアプリケーションと言われる製品の中の一部機能に機械学習を使用しているケースがこれに該当します。最近では、機械学習機能が組み込まれたSaaS(Service as a Service)も数多くあります。
また、以前は組み込まれている機械学習機能のことをアピールしなかったけれども、昨今のブームに乗って、機能はそのままに機械学習を強くアピールし出した製品やサービスもあります。
そもそも、機械学習というと何か新しいものと感じられるかもしれませんが、そうではありません。コンピュータのスペックが急激に向上して大規模な学習などが行えるようになり、今まで聞いたことがないような事例が出現したために、新技術のように感じられるだけです。基礎となる技術は半世紀前からあります。
このような特徴から、組み込み型の場合、機械学習サービス・機能が搭載されているといっても、従来のアプリケーションとあまり違いを感じないこともあります。それは機械学習自体が役に立たないのではなく、なじみのある機能ゆえにその良さを実感できないだけだと思います。
組み込み型のメリット
組み込み型のメリットは、使い方が決まっているため、業務に詳しいユーザーであれば無理なく使いこなせることです。見方を変えると、組み込み型の機械学習機能とはアプリケーションの拡張機能の1つです。機械学習のことを理解や意識をしていなくても、ユーザーはその恩恵にあやかっていることになります。
また、組み込み型として提供されている機械学習サービスには学習済みのモデルが利用されていることがあります。そのため、機械学習のモデル作成のために必要な学習データ(過去データ)が少なかったとしても、いきなり予測分析などが行えたりします。加えて、特定のアプリケーションに最適化されているため、ユーザーインターフェイス(操作画面)なども洗練されていることが多く、機械学習の結果をどう表現するかなどに頭を悩ますこともありません。
組み込み型のデメリット
組み込み型では機能が制限され、アプリケーションやサービスで提供されている以上のことができない場合があります。また、あくまでサポート的な機能なので機械学習といっても万能ではなく、そもそもそのアプリケーションがビジネスにうまくはまらなければ、真価を発揮することはありません。
学習済みのモデルが提供されている場合には、そのモデルを更新できないケースがあります。機械学習により生成されたモデルは、同じような傾向を見せるデータに対しては高い予測結果を返してくれますが、学習データと大きな差があるデータの場合、予測結果の精度は著しく低くなります。データがたまってきた段階でモデルの更新や変更ができれば問題ないのですが、更新や変更できない場合には注意が必要です。
まとめ - すぐ役立つが利用範囲が限られる
組み込み型は良くも悪くも、用途が決まっているため、導入スピードや効果において高い評価を受けることがあります。一方、カスタマイズが難しくなっているため、適用範囲は限られることを理解しておく必要があります。そもそも、業務に適したアプリケーションを選ぶことが最も大切なことであり、機械学習機能に関しては副次的なものと割り切るべきでしょう。