LINE DEVELOPER DAYを企画・運営するDeveloper Relationsチームとは?
企業単独では国内最大級の技術カンファレンス「LINE DEVELOPER DAY 2018」が、11月21日東京・港区の「八芳園」で開催される。八芳園は1万2000坪の敷地の大半を日本庭園が占めている。足を一歩踏み入れると都心にいることを忘れてしまう風情のある会場だ。
同イベントの企画・運営を担当しているのが、昨年12月に新設されたDeveloper Relations(DevRel)チームだ。同チームに所属する櫛井さんは「私たちのチームの活動は大きく3つある」と語る。一つは、LINEが公開するAPIやOSSの活用促進や事例づくりなど、いわゆるエバンジェリズム活動。次に、自社エンジニアが働きやすく充実した環境をつくり満足度を向上させる活動。そして、社外に向けた技術的観点からの広義のブランディング・採用活動である。
実はこれまでのLINEでは、先のような技術ブランディングやエンジニアサポートにかかわる活動については、関係部署が都度連携したり、期間限定のプロジェクトチームを立ち上げるなどで対応してきたという。「継続的かつ横断的にやる必要性が高まり、組織化することになりました」と櫛井さんは、DevRelチームが新設された背景を説明する。
DevRelチームはさまざまなバックグラウンドを持つ個性的なメンバーで構成されているという。例えば櫛井さんはイベントの企画やブログでの情報発信、エンジニアサポートなどに携わるほか、オフィス訪問「いってきた」シリーズで有名な「941::blog」をプライベートで運営している。
櫛井さんが社外向けの情報発信を担当することが多いのに対して、LINEのエンジニアが快適に働ける環境作りなどの社内向けの活動を中心に担当しているのが、三木さんだ。「例えば海外で開催される技術カンファレンスに参加する際にフルサポートする仕組みを作ったり、エンジニアのモチベーションがアップするようなコミュニティ活動の支援をしたりしています。DEVDAYのようなマンパワーがかかるイベントの場合は櫛井さんとともに動くことが多いですね」(三木さん)
そして櫛井さん、三木さんとともにDEVDAYの企画・運営を担当しているのが、桃木さんだ。桃木さんは2013年にLINEに入社して以降、PRチームに所属し、企業やサービスの広報や、LINEの事業戦略発表会「LINE CONFERENCE」などの企画運営を担当。2016年より技術領域の広報も担当するようになり、2018年8月からDevRelチームに正式にジョインした。「DevRelチームでは、LINEの技術に関するブランディング、取材やWeb企画のアレンジのほか、LINE BOOT AWARDSなど、LINEが提供する技術の活用促進を目的としたイベントの企画運営に携わっています」と桃木さんは話す。
そのほかにもエバンジェリストやアドボケイトとして活動する人たちも所属しており、勉強会の主催や外部のコミュニティに行って技術を使ってもらうためのコミュニケーションを担当しているという。
テーマは「Next LINE」、50以上のセッションを用意
回を重ねるごとに、規模を拡大している同イベント。昨年はライトニングトーク(LT)を含め39セッションを用意し、1000人を超える参加者が集まったという。今回は大小合わせ50以上のセッションを企画するなど、パワーアップしている。
今回のテーマは「Next LINE」。実は過去3回では対外的なテーマは掲げていなかったが、今回、テーマを掲げたのには理由があると言う。それは、LINEがプロダクトとしてはすでに完成されたものだと思われがちで、LINEの新たな挑戦や目指すビジョンなどが現状では伝わりにくいからだ。
LINEはAIアシスタント「Clova」をはじめとするAI領域、Fintechなどの金融事業、ブロックチェーン技術を活用したネットワーク・サービス展開など新たな領域に進出している。また、すでに多くのユーザーが日常的に利用するコミュニケーションアプリ「LINE」も新しい機能追加やさまざまな改善が常に繰り返されている。
「DEVDAYはLINEの新たな技術領域におけるチャレンジや、それを支えるLINEエンジニアの技術的知見や経験、挑戦を発表できる場にしたい」(桃木さん)、「どんどん新しいことに取り組んでおり、そこにかなり投資をしている。そこをしっかり伝えたい」(櫛井さん)、「日本だけではなく海外拠点も力を合わせて開発しており、グローバルレベルで新しいプロダクトが次々と具体化している。そういった現在のLINEの姿を知ってもらいたい」(三木さん)というように、このテーマには3人の熱い思いが込められている。
テーマの設定だけではない。「1日いても飽きないようなイベントづくりをしている」と櫛井さんは明かす。メイントラックと3つのサブトラック、カフェスペースに併設されるLTトラック、それに今年はポスターセッションの6ラインが並行して実施されるという。
メイントラックは400人以上が入るホールAで実施。3つのサブトラックはそれぞれ定員100人前後とメイントラックと比べると小規模だが、「幅広い技術分野のエンジニアが登壇し、専門的で深い内容が語られる」と三木さん。「新たな領域として具体的なキーワードを挙げるとすると、AI、Fintech、ブロックチェーンなど」と櫛井さん。
昨年発表および提供開始し、今年7月には開発環境が公開された「Clova」のAI領域、今年の「LINE CONFERENCE」でも大きく取り上げた「LINE Pay」をはじめとする金融事業領域(Fintech)、そして先日今後の構想やdAppサービスを発表したブロックチェーン領域、それらの技術的な取り組みやロードマップなどを紹介する予定だという。
他にも、ビッグデータ、広告、インフラ、機械学習、IoTなど、さまざまな技術的取り組み・挑戦が語られるという。また、LINEのMessaging API(LINE Bot)やClovaスキルの外部開発事例や新機能解説が重点的に行われるトラックや、海外拠点の取り組みに特化したトラックもあり、多彩なセッションが準備されている。
昨年初めて実施し、好評だったLTに加え、今年から新たな試みとして実施するのがポスターセッションだ。実はこの2種類のセッションには、「LINEのエンジニアたちが参加者とより近づき、気軽にコミュニケーションもしてほしい」(櫛井さん)という強い思いが込められている。
新たな試みはこれだけではない。今回、社内のエンジニアに呼びかけたセッションの公募もその一つだ。「これまでは私たちが伝えたいテーマを選んでセッションを構成してきた。しかし今回は現場の人たちに話したいことを聞いてみたいと思い、公募という形をとりました」(櫛井さん)
応募件数は約130件。「予想以上に集まった」と嬉しい悲鳴を上げる3人。当日は選抜され、磨かれたネタが各トラック、LT、ポスターセッションで披露されるというわけだ。
見どころ満載のイベント。その中でもDevRelチームおすすめのセッション
櫛井さん、三木さん、桃木さん3名から、実施が予定されるおすすめのセッションをいくつか挙げてもらった。
『LINEのインフラプラットフォームはどのように大規模サービスをスケールさせ運用コストの小さなインフラを提供しているのか』
LINEでは、物理サーバー3万台以上・インターネットトラフィック1Tbpsを超える規模のインフラを運用しており、そのインフラ上に展開されるサービスの開発エンジニアは総勢2,100名にのぼり、開発拠点は国内外で10箇所を超えています。 このセッションでは、膨大なトラフィックをさばくためのネットワークデザインや大量のインフラリソースをマネージメントする方法などのこれまでの実例を交え、大規模インフラをどのようにしてスケールさせているのかだけではなく、いかにして開発エンジニアとインフラエンジニア双方の負担を軽減させているかについてお話しします。
『LINEが目指す理想の広告プラットフォーム』
LINEでは、2016年6月より「LINE」や関連サービス上での運用型広告配信プラットフォーム「LINE Ads Platform」を提供し、徐々にその規模を拡大してきました。短時間で複雑な処理をこなし、かつ膨大なデータをリアルタイムで集積分析するなどの広告プラットフォームに求められる様々な問題を解決するため、LINEではほとんどのコンポーネントを自社で開発、今年8月には大規模刷新を実施し、500台を超えるサーバーで運営される新たなプラットフォームに生まれ変わりました。このセッションでは、なぜLINEは広告プラットフォームの大部分を自分たちで開発してきたのか、どのようなシステムを目指して作ってきたのかをご紹介します。
『Machine Learning at LINE』
LINEには個々の事業部と独立した組織として、社内横断的なデータ活用をミッションとする「Data Labs」という専門組織があり、データサイエンティストによる高度な分析、あるいはレコメンドエンジンや分析のインフラ・各種のレポートなどを提供し、多様なサービスを、様々な形で支えています。このセッションでは、特に機械学習に関わる取り組みについて、どういった分業体制のもと機械学習技術の提供が行われているか、どういった工夫により「多様なサービス」「膨大なユーザ数」への技術提供が実現可能か、深層学習などの技術トレンドをどのように活用しているかなどについてご紹介します。
『フロントエンド開発によって進化するLINEの未来』
LINEでは、非常に多くのサービスをウェブアプリとして開発しています。ファミリーアプリを支えるWebView基盤開発やLINEの中でのWeb Applicationの役割など、フロントエンド開発チームがどのような技術を使い課題に取り組んでいるのか、これまであった実例を交えながら紹介します。また、今年リリースされたLINE Front-End Framework(LIFF)の開発経緯やユースケースの紹介、今後の展望などについてもお話しします。
『BITBOX: How to Secure a Cryptocurrency Exchange』
LINEは今年の7月よりグローバルの仮想通貨交換所(cryptocurrency exchange)「BITBOX」を運営開始しています。これまで多くの仮想貨幣取引所が外部からの攻撃を受けていることからも、仮想通貨取引所にとってセキュリティは最も重要な要素の一つです。このセッションでは、「BITBOX」の開発運営における、様々な脅威からユーザ資産を安全に保護するためのセキュリティ戦略やアーキテクチャなどを共有します。
『サーバーレスで!Clova スキル開発入門 (C#)』
ゲストセッションの一つとして、Microsoft社のエンジニアちょまど(@chomado)さんを迎え、スマートスピーカー概要、「LINE Clova」「Google Home」「Amazon Echo」開発の比較、Clovaスキルの具体的な作り方などについてお話しいただきます。特にClovaスキル開発は、サーバーサイドをMicrosoft Azure Functionsを使ってサーバーレスで構築し、Messaging API(LINE Bot)との連携も行い、Clovaに話しかけると何らかの処理結果をLINEにpushする方法の解説がデモを交えて行われます。
『LINE API New Features』
このセッションでは、直近一年間でのLINEが公開するAPIアップデートをまとめてお届けします。Chatbotの開発に不可欠な「Messaging API」は、自由で多様なフォーマットのメッセージ作成が可能になりました。トーク上で表示できるWebアプリケーションフレームワーク「LIFF」もリリースされ、「LINE」をプラットフォームとするアプリの可能性が飛躍的に高まっています。また、もう一つのプラットフォームとして「Clova」があります。「Clova」にオリジナルのスキルを開発・追加するための「Clova Extention Kit」がリリースされ、Voice UIのアプリケーション作成も可能になりました。これらの新機能とそれが可能にするユースケースをカバーします。
『今日作れるスマートスピーカースキル- Clova SDK ライブコーディング -』
AIアシスタント「Clova」は、この夏に開発環境「Clova Extensions Kit」および「Clovaスキルストア」がオープンし、誰でもClovaのスキルを開発、公開することができるようになり、既に多くの企業や個人の開発者にご参加いただき、便利なスキルが次々と公開されています。このセッションでは、まだスキルを作ったことが無い方にも気軽にトライしていただけるように、簡単に「LINE」メッセージを送信できる「Clova」ならではの機能を使ったスキル開発手順をライブコーディングでご紹介します。
『モノからつながる世界・モノから広がる世界へ LINEが手がけるIoTへの取り組みとその未来』
LINEでは、家電や電子機器といった身の回りのモノを「LINE」アプリや「Clova」につなげることで、モノと人とのコミュニケーションを実現し、モノからはじまる新しい出会い・新しい価値をつくりだすサービス・プラットフォームを日々開発しています。このセッションでは、IoT、LINEアプリ、Clovaに興味のある方に向けて、LINEが手がけている家電連携やBLE(Bluetooth Low Energy)通信を活用したデバイス連携などのIoTへの取り組みについて発表します。また、サードパーティ開発者向けに公開している開発者向けプロダクトについても、その開発手順や実装方法などを紹介します。
『"Clova Inside"の裏側 – いつでもどこでもサポートしてくれる自然言語理解の仕組み』
LINEでは、昨年よりAIアシスタント「Clova」およびその搭載デバイスを提供しています。AIアシスタントは、自然言語処理や音声認識、音声合成、画像処理、検索などの人工知能分野の技術を、複数同時にかつ絶対に必要とする応用先のひとつです。このセッションでは、「Clova」のVoice UIを実現する自然言語理解(NLU:Natural Language Understanding)システムの開発・運用に関連するトピック、例えばNLUシステムの全体像や直面した具体的な課題とそれらの解決方法、統一感あるVoice UI設計のための考え方などについてお話しします。開発過程で見つかる新しい問題の面白さや、問題を解決するための新しい技術やビジネスの可能性について共有し、AIアシスタント開発に取り組むことの魅力をお伝えします。
以上は一例で、当日は27のセッションに加え、24のLT、10のポスター展示解説が行われるなど、盛りだくさんな1日になっている。
また、イベントの最後に行われる懇親会にも力を入れている。セッションに登壇したエンジニアをはじめ、たくさんのLINEエンジニアが参加するので、セッションで気になったことなどを直接質問する機会にもできるという。
LINEの技術、企業文化、そこで働くエンジニアの素顔が見えるイベント「LINE DEVELOPER DAY 2018」。気になる人は今すぐ参加申込みをしてみよう。
LINE DEVELOPER DAY 2018
コミュニケーションアプリ「LINE」をはじめとしたLINEのさまざまなサービスにおける技術領域でのチャレンジや、LINEエンジニアの技術的知見や経験などを紹介するエンジニア向け技術カンファレンスです。今年は「Next LINE」をコンセプトに、LINEが投資する新たな技術領域におけるチャレンジや、それを支えるLINEのエンジニアの技術的知見をテーマとしたセッションを数多く用意しています。
開催概要
- 開催日時:11月21日(水) 10:00開場、18:05終了予定(イベント終了後、懇親会を開催)
- 場所:八芳園(東京都・港区)
- 参加費:無料
- 応募締切:10月31日(水)23:59
- イベント概要・参加申し込み