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次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用

フレームワークとツールの両面で完成度アップ! 「Angular」バージョン7の新機能

次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用 第18回

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速度向上のための改善

 速度向上は、Angularのバージョンアップで常に重要なテーマです。Angular 7では、以下の改善が行われました。

不要なPolyfillの自動削除

 Angular 6までのAngular CLIで生成したプロジェクトでは、JavaScriptでメタデータ(引数型などの追加情報)を利用するためのPolyfill(互換性確保のためのライブラリ)を、図3の通りインポートしていました。

図3 アップデート前のpolyfill.ts(p001-angular6/src/polyfill.ts)
図3 アップデート前のpolyfill.ts(p001-angular6/src/polyfill.ts)

 このPolyfillは実行中に随時コードを変換して実行するJIT(Just-in-Time)モードでは必要ですが、リリース時などで事前にコードを変換するAOT(Ahead-of-Time)モードでは不要になります。しかし、Angular 6までのプロジェクトでは、図3の記述により、リリース時に不要なインポートが行われていました。

 Angular 7のAngular CLIでは、リスト1の「ng update」コマンドでAngular 6以前のプロジェクトをアップデート時に、図3のインポートを削除して、リリース時に不要なPolyfillを含まないようにします(JITモードでは自動的にPolyfillが追加されます)。

図4 アップデート後のpolyfill.ts(p002-angular6-update/src/polyfill.ts)
図4 アップデート後のpolyfill.ts(p002-angular6-update/src/polyfill.ts)

ファイルサイズの警告・エラー

 Angularでは、ビルドで変換してまとめた(バンドルした)ファイルのサイズが指定サイズを超えると警告やエラーを発生する機能「Bundle Budget」が利用できます。Angular 7のAngular CLIで新規生成したプロジェクトでは、「ng build --prod」コマンドで実行されるProductionビルド時のBundle Budget設定が、プロジェクト設定ファイル(angular.json)にデフォルトで記述されるようになりました。

[リスト2]angular.jsonに記述されるBundle Budgetの設定
"production": {
(略)
  "budgets": [
    {
      "type": "initial",
      "maximumWarning": "2mb", // 2MBで警告
      "maximumError": "5mb"    // 5MBでエラー
    }
  ]
}

Angular MaterialとCDKの機能追加

 Angular Materialは、Googleが提唱するデザインガイドライン「Material Design」をAngularに提供するコンポーネントです。また、CDK(Component Dev Kit)は、Angular Materialのコア機能を切り出したものです。Angular 7のAngular MaterialとCDKには、以下の機能が追加されました。

Virtual Scrolling(仮想スクロール)

 Virtual Scrolling(仮想スクロール)は、スクロールするUI要素を実現する機能です。画面に表示される周辺のHTML要素だけを動的にロードすることで、大量のデータをスムーズにスクロールできます。10万行の文字列をリストに表示する図5のサンプルで実装方法を説明します。一見普通のリストですが、開発者ツールで内容を参照すると、画面に表示されている周辺のHTML要素だけがロードされることがわかります。

図5 Virtual Scrollingのサンプル(p003-vscroll)
図5 Virtual Scrollingのサンプル(p003-vscroll)

 「ng add @angular/material」コマンドでAngular Materialを追加後、モジュール定義ファイル(app.module.ts)をリスト3の通り記述します。Virtual Scrollingのモジュール(ScrollDispatchModule)を(1)で参照して、(2)でインポートします。

[リスト3]Virtual Scrollingのモジュールを設定(p003-vscroll/src/app/app.module.ts)
import { ScrollDispatchModule } from '@angular/cdk/scrolling'; // ...(1)
(略)
@NgModule({
  imports: [
    ScrollDispatchModule // ...(2)
  ],
(その他の設定は略)
})
export class AppModule { }

 Virtual Scrollingのテンプレート記述はリスト4の通りです。

[リスト4]Virtual Scrollingのテンプレート記述(p003-vscroll/src/app/app.component.html)
<!-- Virtual Scrollingの領域 ...(1)-->
<cdk-virtual-scroll-viewport itemSize="30" class="example-viewport">
  <!-- Virtual Scrollingの各要素 ...(2)-->
  <div *cdkVirtualFor="let item of items" class="example-item">
    {{item}}
  </div>
</cdk-virtual-scroll-viewport>

 (1)の<cdk-virtual-scroll-viewport>タグがVirtual Scrollingの領域を表します。itemSize(30)は、1行あたりの高さ(単位はpx)です。(2)では、Angularで繰り返しを表す*ngForの代わりに*cdkVirtualFor属性(ディレクティブ)を設定して、データ配列itemsの各要素を表示する<div>タグを記述します。itemsは、コンポーネント(app.component.ts)でリスト5の通り記述して、要素数10万の配列を生成します。

[リスト5]Virtual Scrollingで表示するデータ(p003-vscroll/src/app/app.component.ts)
items = Array.from({length: 100000}).map((_, i) => `${i}番目の行`);

 Virtual Scrollingの詳細は、公式ドキュメントも参照してください。

ドラッグアンドドロップ

 ドラッグアンドドロップの機能がCDKに追加されました。最初に、単純なドラッグアンドドロップの例を図6のサンプルで説明します。四角形をマウスでドラッグできます。

図6 ドラッグアンドドロップのサンプル(p004-dragdrop)
図6 ドラッグアンドドロップのサンプル(p004-dragdrop)

 ドラッグアンドドロップを利用するには、プロジェクトにAngular Materialを設定したあと、ドラッグアンドドロップのモジュール(DragDropModule)をapp.module.tsに設定します(詳細はサンプルコード参照)。ドラッグする要素は、リスト6の通り記述します。要素にcdkDrag属性(ディレクティブ)を設定して、ドラッグ可能にします。

[リスト6]ドラッグする要素のテンプレート記述(p004-dragdrop/src/app/app.component.html)
<div class="example-box" cdkDrag>
  ドラッグで移動できます
</div>

 次に、ドラッグアンドドロップでリストを並び替える図7のサンプルを説明します。

図7 ドラッグアンドドロップでリストを並び替えるサンプル(p005-draglist)
図7 ドラッグアンドドロップでリストを並び替えるサンプル(p005-draglist)

リストのテンプレート記述は、リスト7の通りです。

[リスト7]リストのテンプレート記述(p005-draglist/src/app/app.component.html)
<!-- 並び替えるリスト ...(1)-->
<div cdkDropList class="example-list" (cdkDropListDropped)="drop($event)">
  <!-- リストの各行 ...(2)-->
  <div class="example-box" *ngFor="let phone of phones" cdkDrag>{{phone}}</div>
</div>

 (1)がリストに対応します。cdkDropList属性(ディレクティブ)を設定するとドラッグアンドドロップで並び替えができるようになります。また、ここでは並び替え時のイベント(cdkDropListDropped)に、後述するdropメソッドを指定しています。(2)はリストの各行に対応し、cdkDrag属性(ディレクティブ)を設定してドラッグ可能にします。各行には後述するデータ配列phonesの各要素を表示します。

 リスト7に対応するコンポーネントの実装はリスト8の通りです。

[リスト8]リスト処理の実装(p005-draglist/src/app/app.component.ts)
export class AppComponent {
  // リストに表示するデータ ...(1)
  phones = [
    'Apple iPhone XS',
    'Apple iPhone XS Max',
(略)
  ];
  // ドロップ時の処理 ...(2)
  drop(event: CdkDragDrop<string[]>) {
    // 配列の並び替え ...(3)
    moveItemInArray(this.phones, event.previousIndex, event.currentIndex);
  }
}

 (1)がリストに表示するデータの配列です。(2)はリストの行をドロップしたときの処理で、引数eventから並び替え前のインデックス(previousIndex)と並び替え後のインデックス(currentIndex)を取得して、CDKが提供する(3)のmoveItemInArrayメソッドで並び替えています。

 ドラッグアンドドロップの詳細は、公式ドキュメントも参照してください。

セレクトボックスのselectタグ対応

 Angular Materialのフォーム(mat-form-field)で実現するセレクトボックスは、従来はAngular Material独自タグ(mat-select)だけが利用できましたが、Angular 7のAngular Materialでは、HTMLのselectタグも利用できるようになりました。図8のサンプル(p006-mat-select)で利用方法を説明します。なお、Edgeブラウザーではmat-selectのセレクトボックス表示が乱れる(意図せずブラウザー画面の横幅いっぱいに表示される)ため、図8はChromeブラウザーで実行しています。

図8 Angular Materialのセレクトボックス表示(p006-mat-select)
図8 Angular Materialのセレクトボックス表示(p006-mat-select)

 テンプレート記述は、リスト9の通りです。(1)がAngular Materialのmat-selectとmat-optionタグ、(2)がHTMLのselectとoptionタグでの記述例です。リスト9を動作させるには、Angular MaterialのMatSelectModuleとMatInputModuleモジュールをapp.module.tsに設定する必要があります。詳細はサンプルコードを参照してください。

[リスト9]セレクトボックスのテンプレート記述(p006-mat-select/src/app/app.component.html)
<mat-form-field><!-- 独自のmat-select、mat-optionタグ ...(1) -->
  <mat-select placeholder="スマートフォン会社">
      <mat-option value="apple">Apple</mat-option>
(略)
    </mat-select>
</mat-form-field>
<mat-form-field><!-- HTMLのselect、optionタグ ...(2)-->
  <select matNativeControl placeholder="スマートフォン会社">
    <option value="apple">Apple</option>
(略)
  </select>
</mat-form-field>

 Angular Material独自タグはアニメーションなどリッチなユーザー体験を提供する一方、HTMLのselectタグは動作速度やアクセシビリティーなどの点で優れており、要件に応じて開発者が選択できます。

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Angular ElementsのContent Projectionサポート

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この記事の著者

WINGSプロジェクト  吉川 英一(ヨシカワ エイイチ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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