スタートアップ継続のための重要なヒント――Button 創業者兼CTO Mike Wakerly氏
続いて登壇したのはButton社の創業者兼CTOのMike Wakerly氏。
Wakerly氏はButtonを「たくさんの異なるビジネスをつなぐ、テクノロジースタートアップ」と説明した。例えば、ローカルのシティガイドアプリを使って、他のアプリに掲載されいるレストランを探して予約、そこまでの交通手段も予約できるなど、リンキングとトラッキングの技術を活用したサービスを提供している。ビジネス的には、別のアプリに遷移して、トランザクションがおこればそこから収益が生まれる仕組みだ。
「普段は技術の話をすることが多いが、今回は(Buttonの)ストーリーだけでなく、最終的にスタートアップを生み出すためのアイデアをメッセージとして贈りたい」とセッションの目的を話したWakerly氏。セッションのタイトルは「Your technology is only as good as your team & your culture」だ。
これについてWakerly氏は「テクノロジーに投資するのと同様に、これら(チームの価値、文化)にも投資する必要があるということ。すばらしい技術的なアイデアや、最新のAWS製品を活用するだけでは不十分で、作るものをサポート、発展できなければなりません。そのためには技術的なアルゴリズムではなく、チームの価値や文化、プラクティスが必要だと思うのです」と説明。
Buttonでの事例を用いながら、継続するスタートアップを実現するための重要な考え方を共有した。
10社のうち1社しか生き残らないと言われるスタートアップ企業。その1社になるために必要なこととして、大きく4つのポイントがあるとWakerly氏は以下のように示した。

①カンパニーバリュー(企業価値)
まず、基盤となるのが「カンパニーバリュー(企業価値)」だ。顧客もサービスもないところから事業を始めるとき、「コードを書かなければ」「顧客を見つけなければ」といった思いが先に立つ。「成功してからカンパニーバリューを見つければいい」との考えになりがちだと、Wakerly氏は指摘する。
「気持ちは分かるが、生き残る1社になりたいなら、企業価値を創業の段階から準備しておくべきだ。そうでないと、いつ(企業価値を)決める時間があるんでしょうか」(Wakerly氏)
Wakerly氏はカンパニーバリューをライフジャケットに例え、「船に乗ったときにライフジャケットを付けておらず水に投げ出されてから後悔しても遅い。それと同様に、企業価値も必要になってから準備するのでは遅い」と強調した。
②チームの価値
2つ目に挙げたのは「チームバリュー(チームの価値)」だ。企業価値をより具体的なチームに落とし込んでいくことになる。
Buttonのチーム価値は、“Growth and Learning”。年齢やキャリアに関係なく「お互いに先生であり、学生である」といった考え方のもと、教えあい学び合っている。
チームでなんらかの危機に対応するシーンを取り上げたWakerly氏は「今、その人(チーム)が何をやっているか」をオープンにし、理解し合うことが重要になってくると説明。例えばサーバーがなぜ落ちたのか、トラブルシューティングをする際、いろんな人と話すとアイデアが豊かになる。また、復旧作業に何日もかかる場合には他のチームの力を借りる必要も出てくるからだ。
さらに、危機を乗り越えたあとは、分析をしていくことも重要だ。「今回はこういう風に問題を解決した」と振り返るのだ。適切な、システマティックな形で分析することで、学びの機会になる。そのためにButtonではトラブル解決後、その解決プロセスを振り返るテンプレートを用いて学びにつなげているという。
「お客さまがいない段階であっても、自己分析をしていく。それが文化の体質、筋肉になっていく」とWakerly氏は強調した。
③採用と教育
3つ目に、「Hiring & Developing People(採用と教育)」を挙げたWakerly氏
採用については「一緒に問題解決したい人を採用することが大事」であり、そのために「雇用担当者をフルタイムで雇うべき」と進言した。
「(雇用担当者の採用は)あとでいいと思う人も多いかもしれない。今はマーケットにヒットするサービスを探している段階かもしれないが、10社のうちの(生き残れる)1社になりたいのなら、雇用についてノウハウを持っている人も必要です」(Wakerly氏)
また、雇用は二方通行なので、面接して応募者から情報を聞き出すだけでなく、雇われる側にも会社の価値観などを学んでもらう必要があるとも指摘した。
社員の教育については「私が度々チームから学びを得ているのは、フィードバックへの貪欲さです」と話したWakerly氏。
マネージャーにとっては、すぐにフィードバックを与えることでチームのメンバーが常によい働きをすることにつながる。その他のメンバーにとっては、「デモンストレーションをして、本当によく危機に対応した。よくやった」といったフィードバックをすることで、成長につながるという。
さらに、「私たちが強調したいのは、危機は自分たちのチームをデモンストレーションし、成長する機会であるということです」とWakerly氏。システムが落ちるなど一見非常にストレスフルな状況も、見方を変えれば、このような課題から何を得られるのか気づける機会でもあるとの考えを示した。
④テクノロジーで課題に立ち向かうとき
最後のトピックとして、Wakerly氏は、危機に直面した際の、テクノロジーでのチャレンジについて語った。
「トラブルは繰り返したくない」と思う人もいるかもしれないが、システムが改善していくわけなので、繰り返してよいとWakerly氏は強調した。一度チームで解決すれば、それは学びとなり、今後の開発や新しいシステムの構築に生かしていくことができる。
Wakerly氏は、問題の対処法には、以下の通りいくつかのフェーズがあると示した。
- DETECT
- TRIAGE
- ANALYZE
- BUILD
- RESOLVE
まず“Detect”の段階で、問題の最前線に立っているときに実行できる唯一のことは、「 “おもてなし”を提供すること」だという。クライアントに対しては、コミュニケーションをとり、自分たちのシステムに何が起きているのか状況をきちんと示すしか道はないと話した。
“Triage”の段階には数週間かかってしまう場合もあるが、「焦らず、学習していることを互いに共有し、エクセレンスを提供する、といったコアとなる価値を設定します」とWakerly氏。
さらに“Analyze”については、「問題を分析しシェアすることで、1~2名で対応したトラブルでもチーム全体で理解することができる」と重要性を指摘。そこで学んだことに基づいて“Build”し、“Resolve”していくと説明した。
最後にWakerly氏は「(スタートアップ設立の)早い時期に、例えば3人しかいない会社で、日々のやりくりに苦労している段階で、『企業価値を設定すべき』と主張するのは難しいかもしれません」と前置きしたうえで、「しかしそれらはあなたのチームにとっての筋肉になるのです。しばらくたって何か問題が起きたとき、チームが焦らず対応できるための基盤になります」と企業価値の必要性を今一度強調し、セッションを終えた。
(後編に続く)
