日本の銀行で初めてAPIを公開した住信SBIネット銀行
既存産業にテクノロジーを組み合わせる動きがさまざまな業界、企業で起こっている。その中でいち早く注目を集めたのが、金融とITを組み合わせたFinTechだ。日本の金融機関としてFinTechにいち早く着目し、さまざまな挑戦をしてきたSBIグループでは、金融機関におけるイノベーションの実現に向け、2017年、FinTechの活用をはじめとするコンサルティングサービスを提供するSBI FinTech Incubationを設立した。同社代表取締役の木村氏は「FinTech分野でのオープンイノベーションの促進、FinTechを活用したビジネスの高度化へ貢献することが当社のミッション」と語る。
そのために構築・提供しているのが「フィンテックプラットフォーム」である。このフィンテックプラットフォームはオープンAPI公開基盤を含むプラットフォーム・サービスであり、国内外のFinTechベンチャーが提供する各種FinTechサービスおよびシステムを接続することで、金融機関は利用したいFinTech機能を選択できる仕組みとなっている。
フィンテックプラットフォームの元となるのは、住信SBIネット銀行が2016年3月に構築したAPI公開基盤である。同基盤の開発の目的は、口座残高や取引などのデータを、社外のアプリケーションからシームレスに利用できるようにすることで、ユーザーに新しいサービスを提供するため。FinTechベンチャーであるマネーフォワードが提供する資産管理アプリ「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行」は同基盤を使った第一号のサービスだ。
ではなぜ、住信SBIネット銀行はこのようなAPI公開基盤の開発に踏み切ったのか。同プロジェクトのリーダーとして開発を推進していたのは、当時システム部長兼担当役員だった木村氏である。
「開発面での課題は、いかに早く、コストをかけずに開発を効率的に進めていくかでした。この解決手法として考えたのがAPI化です。ちょうど世の中的にも、オープンAPIという方向に流れ出した頃。そこで時代にマッチしたシステム構成に変えるために、2015年12月に開発をスタートさせたのです」(木村氏)
API公開基盤を短期間で開発できたわけ
同基盤は先述したように翌3月にはリリースされており、スピーディーに開発されている。
一般的に金融システムの開発というと、長い年月をかけて開発するというイメージがある。なぜスピーディーな開発が実現できたのか。その理由は、住信SBIネット銀行のシステムアーキテクチャが疎結合を前提とした作りとなっていたことにある。
「銀行のシステムはレガシーと言われていますが、住信SBIネット銀行はインターネット専用の銀行です。開業当初からすべての業務において、その時に一番いい構成でシステムを構築していくという考えがありました。そのため、拡張性を考え、住信SBIネット銀行開発当初の2006年から、アーキテクチャは疎結合で開発を進めてきました。だから、APIの開発もハードルは高くありませんでしたね」(木村氏)
現在、マイクロサービス化を図っている企業も多いが、住信SBIネット銀行では「マイクロサービス」という言葉がない頃から、すでに時代に合わせてシステムを変化に柔軟に対応できるよう、アーキテクチャを選択していたというわけだ。