本記事のレポーター
- 岩塚 卓弥、栗原 伸豪、山口 大輔(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)
- 久保田 瞬、齊加 匠、朱 力、宮舘 康夫(NTTデータ)
- 角田 誠、金子 輝良(NTTコムウェア)
SpringOne Platformとは
SpringOne Platform(以下SpringOne)は、Pivotal Software, Inc.(以下、Pivotal)が開発を牽引するOSSのアプリケーションフレームワークであるSpring Framework(以下Spring)や同社の商用プラットフォームPivotal Platformに関する最新情報、ユーザ事例を中心に、DevOpsやマイクロサービスといったソフトウェア開発のトレンドを扱うカンファレンスです。毎年一回米国で開催されており、2019年はテキサス州オースティンでの開催となりました。参加者数は年々増加傾向にあり、今年の参加者は全体で3500名程度、日本からも60名以上の参加者が来場しました。昨年に引き続き富士通株式会社とNTTデータの二社がスポンサーとしてカンファレンスを支え、スピーカーとしてもヤフー株式会社とSBペイメントサービス株式会社からそれぞれ2名ずつ登壇しており、国内企業からの一層の注目度の高まりを感じました。
今回のカンファレンスでは、「Swagless」という非常にユニークなキャンペーンが行われていました。多くの技術系カンファレンスではステッカーやTシャツなどのノベルティ(Swag)が配布されることが一般的となっています。Swaglessキャンペーンは、こうしたノベルティの生産や破棄による環境負荷を考慮し、スポンサーがノベルティを配布する代わりにその分の費用をNPOに寄付するというものです。一参加者としては手土産がないのは少し寂しい気持ちもありましたが、過去に持ち帰って自宅に死蔵されているノベルティの数々のことを思い起こすと、とても合理的なキャンペーンであったと思います。
VMwareとPivotalの今後の関係
カンファレンス初日のKeynoteではPivotalのSVPであるJames WattersさんがMC、VMware, IncのCEOであるPat Gelsingerさんがゲストスピーカーという形で、主にPivotal とVMware の統合後のブランドビジョンであるVMware Tanzu(以下Tanzu)について説明がなされました。TanzuはKubernetesベースのモダンアプリケーションにおけるビルド(Build)、実行(Run)、管理(Management)というサイクルの包括的なサポートを目指しています。その中でPivotalやSpringコミュニティはビルドの重要な一翼を担っていると語られました。Tanzuの構成図の中には、同じくVMware社が買収したBitnami、Heptioの名前も確認できました。
Gelsingerさんは最近のソフトウェア開発の潮流について、モダンなアプリケーションの開発や開発スピードを加速してゆくことにプライオリティが置かれていることを踏まえ、この流れを開発者とIT運用担当者の橋渡しをするためのまたとないチャンスであると捉えていると述べました。そして、その橋渡しのための鍵はKubernetesであるということが、産業界でも共通の認識になっているとの見解を示しました。その上で、Tanzuによってこの橋渡しを実現し、2、3年後までにVMwareが最もenterprise friendlyなKubernetes企業となるという抱負を語りました。
最後に、WattersさんがPivotal買収の動機について尋ねると、GelsingerさんはKubernetesへの移行が企業の中で浸透しつつある状況と、Pivotal が十分な規模や業界での評判を得てきたという点を踏まえ、再び一丸となる好機と捉えたためだという理由を明かしました。さらに、VMwareが開発者コミュニティにリーチすることができるのもPivotalと一体となったことによるものであると語りました。
短いトークの中でVMwareの今後のビジョンを示しつつ、両社の良好な関係をアピールしていた点が印象的でした。