Tomcat用のプロジェクトとファイル構成
では、いよいよプロジェクトを作成しましょう。
Eclipse Tomcat PluginのプロジェクトはTomcatプロジェクト
Eclipse Tomcat Pluginを利用してWebアプリケーションを作成する場合、パースペクティブはこれまで通りJavaパースペクティブでかまいません。一方、プロジェクトは、Javaプロジェクトではなく、Tomcatプロジェクトを作成する必要があります。[ファイル]メニューから
[新規] > [プロジェクト]
を選択し、新規プロジェクト画面を表示させます。画面中の[Java]フォルダを展開すると、中に[Tomcatプロジェクト]があるので、それを選択して、[次へ]をクリックします(図2)。
すると、図3の新規Tomcatプロジェクト画面が表示されるので、[プロジェクト名]に「FirstTomcatProject」を入力し、[次へ]をクリックしてください。なお、この画面で[完了]をクリックしてプロジェクトを作成することもできますが、絶対に[完了]をクリックせずに、次画面へ進めてください。理由は後述します。
次に、図4の画面が表示されるので、[コンテキスト名]、[Webアプリケーション・ルートとするサブディレクトリー(オプション)]ともに「/cztomcat」へと変更し、[コンテキスト定義の更新を可能にする]チェックボックスにチェックが入っていることを確認して、[完了]をクリックします。
無事プロジェクトが作成されると、パッケージエクスプローラーには図5の構造のプロジェクトが作成されています。
このうち、プロジェクト直下のsrcフォルダとbinフォルダは不要なので削除してもかまいません。すると、図6のプロジェクト構成になります。
これで、プロジェクトが作成できたので、このプロジェクト内にサーブレットやその他必要なファイル類を、適所に作成していけばWebアプリケーションが作成できます。
TomcatプロジェクトはWARファイル構成
では、適所とはどこでしょうか。ここで、今作成したFirstTomcatProjectプロジェクトの実フォルダ構成を見てみましょう。
注目すべきは、cztomcatフォルダです。このcztomcatフォルダをアプリケーションのルートフォルダとしたら、その配下のフォルダ構成は、まさに、WARファイル構成となっています。
Eclipse Tomcat Pluginが作成するTomcatプロジェクトは、内部がそのままWARファイル構成となっており、そのため、アプリケーションの実行に関しても、Tomcatにwarファイルのデプロイを行うのではなく、このルートフォルダそのものをTomcatにアプリケーションとして認識させる方法をとっています。このことから、アプリケーションの開発途中も、動作確認のために、いちいちwarファイルの作成→デプロイの手間が省け、かなり効率よく開発が行えるようになっています。
この点が、WTPとの決定的な違いです。詳細は次回に紹介しますが、WTPでは、プラグインによってデプロイの自動化は行われるものの、内部手順としては、あくまで、warファイルの作成→デプロイと同等の手順を取るため、その分の時間がどうしてもかかってしまいます。
ウィザードの第2画面が重要
ここで作成したFirstTomcatProjectプロジェクトは、FirstTomcatProjectフォルダ直下にアプリケーションのルートフォルダとしてcztomcatフォルダが作られています。図4のプロジェクトを作成するウィザードの第2画面で、[Webアプリケーション・ルートとするサブディレクトリー(オプション)]の入力欄に「/cztomcat」と入力しました。実は、ここに入力したパス名がそのままアプリケーションのルートフォルダとして作成されます。
この入力欄について注意しなければならないことがあります。それは、デフォルト値が「/」だということです。もし、このデフォルトのままプロジェクトを作成してしまうと、プロジェクトフォルダがそのままアプリケーションのルートフォルダとなってしまいます。
逆に、この入力欄に適切なフォルダ名を入力することで、プロジェクトフォルダとアプリケーションフォルダを別フォルダにすることができます。結果、プロジェクトフォルダ直下にアプリケーションフォルダとは別のフォルダを作成することで、データベースのスクリプトファイルや設計ドキュメントファイルなど、プロジェクトに含めておきたいがアプリケーション内に含めたくないファイル類をまとめておくことができます。
もちろん、プロジェクトフォルダとアプリケーションフォルダを同一にしても、アプリケーションは作成できますが、アプリケーションフォルダ内にアプリケーションとは関係ないファイル類も混ざるので、避けた方がよいです。
これが、第1画面で[完了]を絶対にクリックせずに第2画面を表示させる必要がある理由です。勢い余って第1画面で完了させてしまう人が多々いますが、必ず、第2画面を表示させ、[Webアプリケーション・ルートとするサブディレクトリー(オプション)]の入力欄に適切なフォルダ名を入力するようにしてください。
コンテキスト名でアプリを特定する
図4の第2画面にはもう1つ入力欄として、[コンテキスト名]というのがありました。こちらを補足しておきましょう。詳細は後述しますが、特に設定を変更していなければ、ローカル環境のTomcatにアクセスするには以下のURLを使います。
- http://localhost:8080/
ただし、これは、Tomcatのルートアプリケーションへのアクセスとなります。Tomcat内にアプリケーションを複数デプロイした場合、URLのパス部分の最初の文字列で、アプリケーションを特定します。例えば、次のようなURLがあるとします。
- http://localhost:8080/cztomcat/hello
この場合、cztomcatがアプリケーションを特定する文字列であり、これを、コンテキスト名、あるいは、コンテキストルートといいます。そして、このコンテキスト名を設定しているのが、第2画面の同名の入力欄です。
FirstTomcatProjectプロジェクトでは、アプリのルートディレクトリ名と同様に「/cztomcat」と設定したので、以下の内容で始まるURLは全て、FirstTomcatProjectプロジェクトのcztomcatアプリケーションを指すことになります。
- http://localhost:8080/cztomcat/
なお、Tomcatプロジェクト作成ウィザードのコンテキスト名のデフォルト値はプロジェクト名となっています。プロジェクト名は、キャメル記法など大文字小文字混在の、しかも長い名称でもかまいませんが、コンテキスト名は小文字のみで構成し、あまり長くしない方がよいです。そのため、やはり、ここでも、ウィザードの第2画面への入力は必須といえます。
WEB-INF/srcとworkフォルダについて
図7内のフォルダで説明していないものがあと2個あります。それらについて補足しておきましょう。
まず、WEB-INF/srcは、srcという名称から分かるように、ソースファイルである.javaファイルが格納されるフォルダです。この中に格納された.javaファイルは、特にコンパイルエラーがなければ、保存時にEclipseによってコンパイルされ、WEB-INF/classesフォルダに自動的に格納されるようになっています。
次に、workフォルダは、JSPを変換したサーブレットが格納されるフォルダです。EEの仕様として、JSPは実行時にTomcatやアプリケーションサーバによって一旦サーブレットに変換され、それがクラスファイルにコンパイルされて実行されるようになっています。実運用のTomcatでは、この変換ファイルはTomcat本体内の所定のフォルダに格納されるようになっていますが、Tomcatプロジェクトでは、これらのファイルもプロジェクト内に配置され、確認できるようになっています。
なお、第2回で紹介したように、パッケージエクスプローラは、あえて実フォルダ構成とは違う見え方となります。WEB-INF/srcはもちろんのこと、workフォルダもソースを格納するフォルダなので、図6からもわかるように、ソースフォルダ扱いのアイコンになっています。
さらに、WEB-INF/srcは、プロジェクト直下に配置され、コーディングしやすいようになっています。一方、WEB-INF/classesは、Javaプロジェクトのbinフォルダ同様に、パッケージエクスプローラーからは見えないようになっています。
Tomcatプロジェクトのフォルダ構成のまとめ
ここまで解説してきたTomcatプロジェクトのフォルダ構成を図にまとめると、図8のようになります。
サーブレットの格納先
Tomcatプロジェクトのフォルダ構成が理解できたのなら、Webアプリケーションのファイル類の配置先は、それぞれ次のようになることが理解できるでしょう。
HTML、CSS、JS、画像などの静的ファイル
アプリケーションフォルダ直下のサブフォルダに格納します。
サーブレット
WEB-INF/srcに.javaファイルとして作成します。
JSP
JSPを直接Webから呼び出すことは避けた方がよいため、WEB-INF直下に適切なサブフォルダを作成して、その中に格納します。
図9は、試しに、HelloServlet.javaを、FirstTomcatProjectに作成した状態のパッケージエクスプローラーです。
このHelloServletは、URLパターン/helloでアクセスすると、画面上に「Hello World!」と表示するサーブレットです。