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LINEとAzureで実現する「温泉MaaS」とは? 地域の課題をエンジニアの力で解決【デブサミ2021夏】

【B-2】地域課題解決のためエンジニアが集結!温泉MaaSを支えるMicrosoft AzureとLINEの技術

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2021/09/08 12:00

 ICTを活用することで、人の移動を根本的に変えるサービスとして注目されている「Mobility as a Service(MaaS)」。今年5月、マイクロソフトとLINEは「Microsoft Azure」を活用し、MaaSの普及拡大を支援する共同プロジェクトを開始すると発表した。「地域課題解決のためエンジニアが集結! 温泉MaaSを支えるMicrosoft AzureとLINEの技術」というセッションでは、日本マイクロソフトの清水宏之氏と共にLINEの比企宏之氏が登壇。LINEがMaaSの支援をする理由のほか、LINE APIとAzure活用した長野県千曲市の事例「温泉MaaS」が紹介された。

目次
左から:日本マイクロソフト株式会社 MaaS & Smart Infrastructureソリューション本部 専任部長 清水宏之氏、LINE株式会社 Technical Evangelismチーム マネージャー 比企宏之氏

左から:日本マイクロソフト株式会社 MaaS & Smart Infrastructureソリューション本部 専任部長 清水宏之氏、
LINE株式会社 Technical Evangelismチーム マネージャー 比企宏之氏

使いやすいMaaSを実現するためのUXのあり方とは

 日本マイクロソフトの清水氏は運輸・物流・建築・不動産領域のインダストリースペシャリストとして活動を行いながら、特に民間主体のモビリティサービス、スマートシティサービスのビジネス支援を担当。地域交通課題解決に向けた取り組みとして、LINEとのMaaS領域の共同プロジェクト推進に注力している。一方のLINEの比企氏は、LINE APIのデベロッパーリレーション、クラウドとの連携を含めたLINE APIのエコシステムの構築を担当。最近はMaaSのテックサポート、オフラインのDXの推進にも注力しているという。

 昨今、話題となっているMaaS。MaaSとは、ICTを活用してマイカー以外の全ての交通手段によるモビリティ(移動手段)を一つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐという概念だ。「以前からある公共交通や移動車やバイク、自転車、徒歩などの所有するモビリティは変わりがないが、共有タイプのモビリティの種類がどんどん増えている」と清水氏は語る。

 従来の共有タイプのモビリティとしてはレンタカーなどしかなかった。だが今はカーシェアやライドシェア、シェアバイク、シェアサイクル、さらにはキックボードなども登場している。これらのモビリティは現在、個別に手配する必要がある。「これを一つにまとめて手配できるようにするのが、MaaSが目指す世界」と清水氏は説明する。スマートフォンなどで目的地を設定すると、さまざまなモビリティサービスを組み合わせ、ストレスなく移動できるようにするのである。

 MaaSというとこうした方法論に注目が集まりがちだが、より大事なのはMaaSによってどんな課題をどう解決できるのかだ。2019年より国内では「スマートモビリティチャレンジ」支援事業がさまざまな地域で実施されており、「モビリティによる地域の課題解決がトレンドになっている」と清水氏は言う。

 地域課題を解決するソリューションとして注目されているMaaS。なぜ、LINEがその支援を始めるのか。

 理由の一つは、LINEが生活インフラとして定着しつつあること。2021年6月時点における、LINEアプリの月間アクティブユーザーは約8900万人。これを日本の総人口で割ると、約70%の人が利用していることになる。「企業などでのLINE公式アカウントの活用も年々、増えている」と比企氏は語る。

 もう一つの理由は、LINEが2019年6月より「Life on LINE」というビジョンを掲げていることにある。これは24時間7日間、生活全てをLINEがサポートするということ。「24時間7日間ずっとLINEを使ってもらうには、オフラインをいかにカバーするかが最重要になる。そこで19年7月にリリースしたのが『LINEミニアプリ』。これを使えば、LINEの中でモバイルオーダーや会員証などのサービスを簡単に提供できるようになるというもの。LINEミニアプリを導入する企業はどんどん増えています」(比企氏)

 Life on LINEの対象は小売り、エンターテイメント、移動、金融、行政都市などさまざまな領域があるが、「今回は移動の領域に焦点を当てて、フォローすることとなった」と比企氏。とはいえ、LINEがMaaSのサービスを提供するわけではない。LINE APIの提供により、各事業者の課題を解決していくという。「LINEから見たMaaSとは、使いやすいオーダーメイドの移動体験を提供すること。日々の暮らしを支える身近で簡単なサービスにすることを目指している」(比企氏)

 一般的に身近で簡単なサービスにするために、重要になるのがUXである。UXの一般的な定義はユーザー・エクスペリエンスだが、「企画者はユニーク・エクスペリエンスに陥りがち」と比企氏は言う。つまり他社と差別化するために、オリジナリティを入れることにこだわり、かえって使いにくいものになったりすることがあるという。

 だが、本来オフラインでユーザーが求めるUXとはユニバーサル・エクスペリエンスだという。ユニバーサル・エクスペリエンスとは次の「4つのレス」を可能にする。

 第一にサービスへのシームレスな流れやアプリ導入作業が不要などの「フリクションレス」であること。第二に同じようなサービスで操作方法を迷わせない「操作学習レス」であること。第三に適切なタイミングでのサービスと心地よいコミュニケーションが提供できる「心の壁レス」。第四はサービスの中にキャッシュレスが内包されており、キャッシュレスすら意識させない「プライスレス」であることだ。

 すでにLINE APIはさまざまな課題解決に活用されており、その概要は「LINE API Use Case」というサイトで紹介されている。「同サイトでは操作できるデモやシステム図、OSS、開発するための情報もそろっている。関心のある方はぜひ、見てほしい」と比企氏。

 LINE API Use CaseではMaaS系のものだけではなく、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)的な新しい移動体験が得られるユースケースのデモも提供している。「PCの画面とスマホのLINEアプリの画面が同期するUXとなっている。ぜひ、PCとスマートフォンで操作をしてほしい」と比企氏。

LINE APIのユースケースが見られるサイト
LINE APIのユースケースが見られるサイト

 そして今回、LINEとAzureが連携することで、「移動の効率化だけではなく業界やオフライン/オンラインの壁を越えた、シームレスなワクワクする顧客体験『Beyond MaaS』の世界を目指していく。月間8900万ユーザーを持つLINEのオフラインでの顧客接点のサービスのフリクションレスをAzureとLINE APIで実現し、オフラインの世界を変えたい」と比企氏は意気込みを語る。


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著者プロフィール

  • 中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

     大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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