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クラウド時代にマッチする、ドキュメント生成・更新APIライブラリ「DioDocs(ディオドック)」(AD)

.NET向けExcel操作APIライブラリ「DioDocs for Excel」を使って帳票アプリを作ろう

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フォントとロケールの罠

 このようにExcelファイルの作成は、すぐにできます。この簡単さがゆえに、DioDocs for Excelの便利さを感じるのですが、実は、ちょっと問題があります。

PDFに書き出す

 DioDocs for Excelは、PDFとして書き出すこともできます。これはとても簡単で、Saveメソッドのオプションを変えるだけです。次のように「SaveFileFormat.Pdf」を指定すれば、PDFとして出力されます。

// PDFとして保存
workbook.Save("example.pdf", SaveFileFormat.Pdf);

 しかし生成されたPDFを開くとわかりますが、実際には、日本語がまったく表示されません(図5)。これは、日本語フォントがコンテナにインストールされていないのが理由です。

図5 日本語が表示されない
図5 日本語が表示されない

フォントをインストールする

 こうした「フォントがない」という状況は、実行環境としてWindowsしか想定しておらず、LinuxやDockerコンテナを想定していない開発では、よく起きます。

 この問題を解決するには、コンテナのなかにフォントをインストールします。ただしもちろん、ライセンスの関係から、Windowsにインストールされているフォントをそのまま使うことはできません。

 そこでライセンス上、問題がないオープンソースのフォントなどを用います。ここでは、アドビ社がオープンソースとして提供している「源ノ角ゴシック(source-han-sans)」や「源ノ明朝(source-han-serif)」を使うことにします。

 いくつかのファイル形式がありますが、ここでは「OTF形式」を使います。GitHubのディレクトリのOTF/Japaneseフォルダに、文字の太さ(フォントのウェイト)が違うファイルがあるので、好みのものを選びます。ここではふつうの太さの「SourceHanSans-Regular.otf」と「SourceHanSerif-Regular.otf」をダウンロードします。

 こうしてダウンロードしたOTF形式ファイルを、プロジェクトフォルダに適当なディレクトリに配置します。ここではfontsディレクトリに配置しました(図6)。

図6 fontsディレクトリを作ってフォントを置いた
図6 fontsディレクトリを作ってフォントを置いた

DioDocs for Excelでフォントを指定する

 これでフォントの準備ができました。次にプログラムを修正して、このフォントを使って描画します。リスト1に対して、次の2点を修正します。

(1)フォントディレクトリの設定

 DioDocs for Excelでは、WorkbookクラスのFontsFolderPathプロパティに、フォントの場所を設定します。図13のようにfontsディレクトリに設定したのであれば、次の文を追加します。

Workbook.FontsFolderPath = "fonts";
(2)標準スタイルのフォントを変更する

 フォントを指定しない場合、標準スタイルのフォントが使われます。そこで標準スタイルのフォントを変更します。

workbook.Styles["標準"].Font.Name = "使いたいフォント名";

 問題は「使いたいフォント名が何か」という点ですが、Adobe Fontsの場合は、SourceHanSansReadMe.pdfおよびSourceHanSerifReadMe.pdfに書かれていて、ファイル名と同じく「SourceHanSans-Regular」および「SourceHanSerif-Regular」です。ですから、源ノ角ゴシック(source-han-sans)なら、

workbook.Styles["標準"].Font.Name = "SourceHanSans-Regular";

 源ノ明朝(source-han-serif)なら、

workbook.Styles["標準"].Font.Name = "SourceHanSerif-Regular";

 このようにします(太さがRegularではない場合は、それに合わせてください)。

標準のフォントは列幅の計算に使われる

 DioDocs for Excelでは、セルごとにフォントを設定できますが、その場合でも、標準スタイルのフォントは必ず設定するようにしてください。標準スタイルのフォントは、列幅の計算に使われるからです。標準スタイルのフォントが存在しない場合、PDFに出力したときに、列幅が正しく表示されないことがあります。

 LinuxにてPDF出力時に列幅の計算に使用するフォントが実行環境にない場合、列幅が正しく出力されない – GrapeCity ナレッジベース (zendesk.com)

フォント名を知る

 フォントのファイルから、フォント名を知りたいなら、内部構造を確認しなければなりません。それには、適当なOpenTypeフォントを扱えるツールを使うとよいでしょう。例えば、FontForgeというフォントエディタソフトを使ってOTF形式ファイルを開き、フォント情報を確認すると、そのフォント名がわかります(図7)。

図7 フォント名を確認したところ
図7 フォント名を確認したところ

カルチャの問題

 これでフォントの問題は解決するのですが、もう1つ、DioDocs for Excelを使ううえでは、カルチャを日本語にしないと、列幅が狭くなるという問題があります。

 Azure上でPDF出力すると列幅が狭くなりページ余白が大きくなる – GrapeCity ナレッジベース (zendesk.com)

 この問題は、カルチャを日本に設定することで解決できます。

workbook.Culture = CultureInfo.GetCultureInfo("ja-JP");

タイムゾーンの問題

 カルチャと並んでもう1つ、Dockerコンテナ環境では、「タイムゾーン」の問題が生じることがあります。「時間が9時間ズレている」という現象が発生したときは、プログラムのなかで明示的に、タイムゾーンの変換をしましょう。

// 現在日時を取得
DateTime now = DateTime.Now;
// Asia/Tokyoタイムゾーンに変換
TimeZoneInfo jst = TimeZoneInfo.FindSystemTimeZoneById("Asia/Tokyo");
DateTime now_jst = TimeZoneInfo.ConvertTime(now, jst);

Console.WriteLine(now_jst.ToString("yyyy/MM/dd HH:mm:ss"));   

まとめ

 以上の修正をした最終的なプログラムを、リスト2に示します。dotnet runで実行して生成したPDFファイルを見ると、今度は、正しくPDFが表示されていることがわかります(図8)。

[リスト2]フォントとロケールの問題を修正したもの
using GrapeCity.Documents.Excel;
using System.Globalization;

// ワークブックの初期化
Workbook workbook = new Workbook();

// フォントの設定
Workbook.FontsFolderPath = "fonts";
workbook.Styles["標準"].Font.Name = "SourceHanSans-Regular";

// カルチャの設定
workbook.Culture = CultureInfo.GetCultureInfo("ja-JP");

// アクティブなワークシートの取得
IWorksheet worksheet = workbook.ActiveSheet;

// 書き込むダミーのデータ
object[,] data = new object[,]{
    {"氏名", "電話番号", "メールアドレス", "郵便番号", "都道府県", "住所"},
    {"大川仁美", "055425366", "hitomi38579@itihvkjd.hlkpt.lm", "406-0854", "山梨県", "笛吹市境川町寺尾3-18-15"},
    {"菅井礼子", "0744610199", "reikosugai@siadwn.fwr", "639-2245", "奈良県", "御所市今住3-8-16"},
    {"福地浩之", "0596008348", "hiroyuki0893@cnous.xb.gwe", "511-0065", "三重県", "桑名市大央町3-12-3"},
    {"芦田重樹", "0583477675", "iashida@hpebuwjuf.gy", "501-0411", "岐阜県", "本巣市上高屋4-2-18"},
    {"高岡宏寿", "0520974210", "itakaoka@lukbsilq.ae", "441-8021", "愛知県", "豊橋市白河町3-17"}    
};        
// データを設定する
worksheet.Range["A1:F6"].Value = data;

// PDFとして保存
workbook.Save("example.pdf", SaveFileFormat.Pdf);
図8 正しい日本語が表示された
図8 正しい日本語が表示された

 ここまで説明してきたように、コンテナのなかは、フォントがインストールされているとは限りませんし、カルチャとして日本が設定されているとも限りません。ですから、普段、あまり気にしていないような、既定の環境を前提とした作り方では、うまくいかないことがあるので注意してください。ここで紹介した以外にもグレープシティ社のナレッジベースにDocker関連のTipsなどの情報があります。併せてこちらも参照してみてください。

 今回は、簡単なコンソールアプリを作りながら、DioDocs for Excelの基本的な使い方を説明しました。次回は、今回説明した内容を使って、ASP.NETでありがちな帳票Webアプリケーションを、どのように構築すればよいのかを説明します。

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この記事の著者

大澤 文孝(オオサワ フミタカ)

テクニカル・ライター、プログラマ/システムエンジニア。情報セキュリティスペシャリスト、ネットワークスペシャリスト。入門書からプログラミングの専門書まで幅広く執筆。   主な著作として、「Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築(共著)」(...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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