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Developers Summit 2022 レポート(AD)

ソフトウェアの自動テストはこれからどう変わるのか――これまでの10年から考える【デブサミ2022】

【17-C-3】ソフトウェアテスト自動化の変遷。変わったことと変わらないこと。テスト自動化の導入パターン。

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変わってきた開発エンジニアの領域と変わらない目的の重要性と人への依存

 現在、開発の中やデプロイメントパイプラインに自動テストを入れ込まないと、もうソフトウェア開発が進まなくなってしまっている。さらに開発エンジニアが担う領域が拡大している。従来であればテストはテスト担当のエンジニアが行い、開発は開発エンジニアが行うものだった。しかし現在だと開発エンジニアも一緒にテストに参加する必要があり、それにともない理解しておくべき技術領域も増えている。開発環境におけるOSSや仮想化、コンテナ化、テスト技術における技法や設計を知らなければ、テストそのものがうまく行えない。

 この10年でさまざまなことが変わっていったが、その一方で変わらないものもある。それが目的を明確にすることと、継続して運用することの重要性である。浅黄氏は「目的が明確であればあるほど、それを自動化することで継続して運用していけば必ず成果が出ると思っています」と述べた。なぜこのテストをしているのかが明確であれば、これを継続して運用していくことでデグレも必ず見つけることができると言う。この目的の重要性は、10年経っても変わらない。

 ここで浅黄氏は、自動化の導入支援で活用している「Test Automation Circles」を紹介した。これは、真ん中の「コア」から外側に向かって順に実行することで、テスト自動化の助けになるものだという。まずは「コア」となる目的「なぜテストをするのか」を決める。そして、その目的に対し「どんなテストをするのか」という「コンセプト」を決めていく。具体的には、目的に対し、どのような戦略を立て、どんなスコープで、どういった設計をしていくのかという具合だ。続いて「アーキテクチャ」、つまり「何を使って実現するのか」という具体的な手法、円の最も外側には「モニタリングとコントロール」、実現された自動テストを実際に実行・分析していくことにつながっていく。最後に、この円が作られている「ベース」、すなわちリソースや文化などの自動テストを築くための土台も重要であると付け加えた。

Test Automation Circles
Test Automation Circles

自動テストを導入する4つのパターンと自動テスト導入による効果

 自動テストを導入するときのパターンを分類すると次の4つになる。

  1. システムの価値をテストする
  2. 繰り返す必要があるテスト
  3. スピードを重視するテスト
  4. インターフェースをテストする

 一つ目の「システムの価値をテストする」は、システムが提供する主要な要件や機能が正常に動作することを確認するために導入するパターンである。シナリオテストやリグレッションテストの自動化が行われる。システムとして変わらない部分をテストする。これが自動テストになっていればずっと使われるし、また自動テストが動いていれば、自信をもってリリースすることができる。

 二つ目の「繰り返す必要があるテスト」は、繰り返し操作するテストのために自動テストを導入するパターンである。インプットするデータのパターンが大量にあるものの操作が同じというものや、複数あるアウトプットのパターンを確認するために操作が必要になるといったものは自動テストが適している。ほかにはテストケースを繰り返すパターンもある。操作は同じだがブラウザやスマートフォンごとに確認が必要というテストである。また何らかの修正をしたときに、再び一括してテストを行う必要がある場合も自動化が望ましい。

 三つ目の「スピードを重視するテスト」は、テストのスピードを速めて開発者へのフィードバックの時間を短縮するために自動テストを導入するパターンである。テストは速ければ速いほど良い。これはTDDやATDDの概念と同じである。開発者へのフィードバックを早めることによって、修正するスピードも速くすることが可能になる。そのために、独立性や冪等性(べきとうせい 同じ操作を何度おこなっても同じ結果であること)の確保、スコープを絞ったファンクショナルテストを自動化するなどテスト設計の見直しが必要になる。

 四つ目の「インターフェースをテストする」は、バックエンドの動作を確認するために導入するパターンである。バックエンドの動作確認のテストを分割するほか、APIの動作や機能を確認するテストの自動化を行う。

自動テストがこれからどのように変わっていくのか――予想できること

 今後の自動テストがどのような変化や進化を遂げていくのか、浅黄氏は「正直なところ、自分でもどうなるかわかりません。しかし、軸であるスコープとスピードはまだまだ変わり続けていくだろうと思っています」とコメントした。

 スコープについては、ユニットテストやインテグレーションテスト、UIテストなどテストのレイヤーによって自動化が進んできている。最近ではアーキテクチャによってより細分化がされており、UIのテストであっても単体で動き、かつわざわざブラウザを表示しない、Headlessで動かすのが標準になっていると言う。また、海外ではシフトライト側のテストの自動化が進みつつあるなど、自動テストだけにフォーカスするのではなく、全体を俯瞰することが求められている。そしてスピードは、常により速くなっていくことは間違いない。

 そして浅黄氏が今気にかけているのが、スケールである。特にテスト環境の大規模化が進んでいて、DockerやKubernetesなどがあるため、冪等性が担保できるような環境が常に作れるようになっている。これまであったような、環境が用意できなくて並列テストが実行できない、ということがなくなり、テスト対象が並列化で用意されて、テストも順次実行できるという状態になってきているという。今後はこのあたりが常に進んでいくだろうと、自動テストの今後について締めくくった。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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