はじめに
本連載では、マルチプラットフォーム化が進む.NETと、そのWebアプリケーション開発フレームワークであるASP.NET Coreの全体像を俯瞰します。ASP.NET Coreは、アプリケーションの目的や開発スタイルに応じて選択することができる多彩なサブフレームワークを搭載しています。それらの基本的な性質や機能を読者に示すことで、ASP.NET Core導入の一助になることを目的とします。
対象読者
- Core以前のASP.NETに慣れ親しんだ方
- Web開発の新しい選択肢としてASP.NET Coreを理解したい方
- ASP.NET Coreの多彩なフレームワークを俯瞰したい方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
-
macOS Monterey / Windows 10 (64bit)
- .NET SDK 6.0.100
- Google Chrome 103
アプリケーションの機能拡張手順
今回は、第5回で作成したサンプルアプリケーションMvcSampleをベースに、機能を拡張していきます。サンプルアプリケーションはdotnet newコマンドで自動生成された、単にテキストだけのページを表示するものでした。これをRazor Pagesのサンプルと同じく「足あとアプリ」(訪問者の名前とメッセージを日時とともに記録するアプリ)に機能拡張していきます(図1)。見た目はほとんど一緒になりますが、実装は当然のことながら異なってきますので、今回はその違いを理解していきましょう。
アプリケーションの機能拡張の手順は、以下のようになります。基本的な流れはRazor Pagesにおけるものと同じですので、第3回の説明を適宜参照してください。ここでは、4. のScaffoldingのみ説明します。
- Scaffoldingに必要なツールをインストールする(第3回と同様)
- Scaffoldingに必要なパッケージをインストールする(第3回と同様)
- 足あとデータを取り扱うモデルを追加する(第3回と同様、名前空間は変更)
- Scaffolding機能を使ってCRUDページを作成する
- データベースのマグレーションを実行する(第3回と同様)
アプリケーションにScaffoldingを行う場合、都度2.~5.の手順を実施します。
FootmarkモデルをScaffoldingする
ツールとパッケージがインストールされ、モデルクラスFootmarkを作成できたら、このモデルに対してScaffoldingによりCRUD機能(作成、参照、更新、削除)を追加します。プロジェクトのルートフォルダで、以下のコマンドを実行してください。
% dotnet-aspnet-codegenerator controller -name FootmarkController -m Footmark -dc MvcFootmarkContext --relativeFolderPath Controllers --useDefaultLayout --referenceScriptLibraries -sqlite …中略… RunTime 00:00:12.65
コマンドの最初の引数controllerはジェネレータの指定で、MVCに基づくScaffoldingを行うことの指示です(Razor Pagesではrazorpages)。コマンドを実行すると、データベースコンテキストクラスが自動的に生成されたことが示され、実際に追加されたコントローラやビューのファイルが表示されます。
dotnet-aspnet-codegeneratorコマンドには多数のオプションが指定されましたが、主なものを表1に示します(一部、第3回の表2の再掲になります)。
オプション | 説明 |
---|---|
-m | モデルクラスの名前 |
-dc | 使用するDbContextクラスの名前(これでクラスファイルが作成される) |
-udl | 既定のレイアウトを使用する指示 |
-outDir | ビューを作成するフォルダ(プロジェクトルートの相対パス) |
--referenceScriptLibraries | 作成・編集ページに_ValidationScriptsPartialを追加 |
--sqlite | データベースプロバイダにSQLiteを使用 |
ここまでで、アプリケーションに必要なファイルが揃いました。この時点での、プロジェクトの構成は図2のようになっています。ControllersフォルダにコントローラであるFootmarkController.jsファイルが追加され、Views/FootmarkフォルダにCRUDに対応したビューのファイル(Create.cshtmlなど)が追加されていることが分かります。
Scaffoldingとデータベースのマイグレーションが実行された時点で、コントローラ(アクション)とビュー、データベースなどは図3のように構成されます。
アプリケーションの実行方法はRazor Pagesと同様ですので、第3回を参照してください。