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【C#で知っておくべき新機能】最新バージョンを徹底解説!

C# 11の新機能を理解しよう──オブジェクトの初期化とジェネリック型数値演算を解説

【C#で知っておくべき新機能】最新バージョンを徹底解説! 第1回


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 第1回では、オブジェクトの初期化やジェネリック型数値演算を中心に、requiredメンバー、auto-default構造体、インタフェースの静的抽象メンバと静的仮想メンバへの対応を紹介します。

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はじめに

 C#は、去る2022年11月に.NET 7のリリースとともにバージョン11となりました。C#は、.NETの標準プログラミング言語として絶え間ない進化を続けており、このバージョン11にも便利で使い勝手のよい機能が多数実装されました。

 全3回からなる本連載では、このC#の最新バージョンである11にフォーカスし、その新機能を紹介していきます。また、バージョン11以前の新機能にも関連の深いものについて言及することで、新機能を線として理解できることも意識します。

表 C# 11の新機能
分類 機能 概要
オブジェクトの初期化 auto-default構造体 構造体の初期化時に既定値が入る
requiredメンバー オブジェクト初期化子において初期化を強制する
Generic mathサポート インタフェースの静的仮想メンバ インタフェースの静的なメンバにabstract、virtualの指定が可能に
checked演算子 オーバフロー時の例外の発生の有無を切り替え可能に
シフト要件の緩和 シフト演算子における右辺のデータ型の制限の撤廃
符号なし右シフト演算子 論理右シフトのための演算子「>>>」が追加
数値IntPtrとUIntPtr nint型とnuint型はIntPtr、UIntPtrのエイリアスとなる
refフィールド refフィールドとref scoped変数 ref構造体のフィールドをref(参照渡し)で持てるようになる
文字列関連 UTF-8文字列リテラル 文字列リテラルの接尾辞「u8」の追加
生の文字列リテラル 3個以上の二重引用符("""~)による生の文字列リテラルを記述可能に
文字列補間中の改行 文字列補間の中かっこ({ })に改行を含められる
その他 リストパターン switch文やswitch式でリストに対する[]を使ったパターンマッチングが可能に
ReadOnlySpan[char]のstring定数によるパターンマッチ ReadOnlySpanに対して文字列リテラルによる定数パターンがis演算子やswitch文・switch式で使えるように
fileローカル型 ファイル内からだけアクセス可能とするスコープ
拡張nameofスコープ メソッドに対する属性中でnameof式によって引数の名前が参照できるように
ジェネリック属性 ジェネリック属性をシンプルな方法で作成できるように
メソッドグループからデリゲートへの変換 デリゲートのインスタンスをキャッシュ化できる

対象読者

  • C#の最新バージョンの機能を把握したい方
  • C#の経験者で、C#に改めて入門したい方
  • プログラミング言語の最新パラダイムに関心のある方

必要な環境

 本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。

  • macOS Ventura
    • .NET 7 SDK(7.0.100)

オブジェクトの初期化

 まずは、オブジェクトの初期化に関する新機能を紹介します。C# 11では、クラスや構造体のオブジェクトをより安全に初期化するための機能が2つ追加されています。

[NOTE]サンプルの実行

 掲載サンプルは、基本的にプロジェクトのProgram.csファイルに記述されています。簡略化のために、C# 9より使用可能になったトップレベルステートメントの記法を用いています。このため、クラスなどの定義がソースコードの後方に配置されます。また、.NET 7環境でのみ動作しますので、.NET 7環境を用意した上で、プロジェクトフォルダでdotnet runコマンドで実行してください。

auto-default構造体(Auto-default structs)

C# 11では、構造体の初期化時に明示的に代入しなかったフィールド・自動プロパティに対して、クラスと同様に既定値が入るようになります。

 C# 10までは、構造体のフィールドと自動プロパティは、コンストラクタ等による明示的な初期化が必要でした。初期化していないフィールドなどを参照しようとすると、コンパイルエラーとなります。

 C# 11では、auto-default構造体(Auto-default structs)により、構造体のより安全な初期化が可能になっています。コンストラクタで初期化されないすべてのフィールドと自動プロパティは、自動的に既定値で初期化されるようになります。このauto-default構造体により、クラスと構造体の差異が一つなくなったことになります。

 以下は、3つのフィールドを持つ構造体の例です。コンストラクタの開始部でメソッドdisplay_allを呼び出していますが、この時点でフィールドは0とnullに初期化されており、安全に表示できます。

リスト auto_default/Program.cs
// AutoDefaultSampleインスタンスの生成、コンストラクタ中で表示が実行される
var a = new AutoDefaultSample(100, 5.0);
// 実行結果:0, 0, 

// 構造体AutoDefaultSample
struct AutoDefaultSample
{
    int _i;
    double _d;
    string? _s;

    // 引数を2個受け取るコンストラクタ。_sは自動的に初期化
    public AutoDefaultSample(int i, double d)
    {
        display_all();
        _i = i;
        _d = d;
    }

    // フィールドをすべて表示するメソッド
    void display_all() => Console.WriteLine($"{_i}, {_d}, {_s}");
}

requiredメンバー(Required members)

C# 11では、required修飾子を指定された自動プロパティとフィールドは、オブジェクト初期化子において初期値の代入が必須になります。

 C# 10までは、オブジェクト初期化子において明示的な初期値の必要なメンバがある場合、それはプログラマの責任において記述していました。このため、初期化漏れという問題がありました。

 C# 11では、required修飾子の指定によって、オブジェクトの初期化時に明示的な初期化を強制できるようになります。以下は、required修飾子の指定されたフィールドの初期化漏れによるエラーが発生するコードの例です。

リスト required_member/Program.cs
// 2番目以外、requiredされたメンバーの初期化が抜けているのでコンパイルエラー
var obj1 = new RequiredMember {};
var obj2 = new RequiredMember { b = 100, s = "Hello" };
var obj3 = new RequiredMember { s = "World" };
var obj4 = new RequiredMember { b = 200 };

class RequiredMember
{
    public int a;
    // 以下は明示的な初期化が必要
    public required int b;
    public required string s { get; init; }
}

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 山内 直(WINGSプロジェクト ヤマウチ ナオ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介> WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。出版社を経てフリーランスとして独立。ライター、エディター、デベロッパー、講師業に従事。屋号は「たまデジ。」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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