SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

オラクル技術エキスパートが紹介する 開発者のためのデータベース完全ガイド

さまざまな「空間データ」を活用しよう~ラスターデータ、点群データをデータベースで扱うには

オラクル技術エキスパートが紹介する 開発者のためのデータベース完全ガイド 第11回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ラスターデータの活用

 衛星写真のラスターデータに、年間の気温推移や標高のラスターデータなどを併せて植生の分析を実施したり、農地のベクターデータと合わせることで、農地に対する助成金を不正に申請している作付けの無い農地を探し出したり、実効雨量のラスターデータと土砂災害危険地域を表現するベクターデータを重ね合わせることで、その時点で土砂災害発生の危険が高くなっている場所を割り出すなど、他の空間データと合わせることでより有用に活用することが可能になる傾向があります。

 前回のベクターデータの際に述べた、「空間データが空間データを求める」という傾向がラスターデータでも同様であり、他のさまざまなデータと空間的な関係を鍵として、結び付けることによって多くの可能性が開けていくものになります。

その他の空間データ

 ここまでは、空間データとしてよく利用される数値のセットで表現するベクターデータと、画像の形式で表現するラスターデータについて述べてきましたが、他にも空間データの仲間と呼ばれるものがまだ数多くあります。道路は一般の地図ではベクターデータの「線」で表現されますが、そこから経路の探索を可能にするために道路の接続情報をデータ化した道路ネットワークデータも地理空間データの一種です。また、GPSの普及とともに取得が容易になった時間とともに移動する動体のデータは、空間データに時間の要素が加わり時空間データとも呼ばれますが、空間データとしての特性も強く持ちます。

 また、自動運転技術、SmartCityなどのSmartテクノロジーが注目される中、3D空間データの取得や利活用の機運が高まっています。レーザー等による3D空間のスキャンデータである点群と呼ばれる膨大な点の集合データも処理系と量の特殊性から空間データの1ジャンルとして認知されています。また、ベクターデータの延長線としては、内部に閉じられた3次元空間(体積)を持つ固体(ソリッド)のデータ表現や、逆に体積を持たない表面(サーフェイス)を表現するデータ表現などがあります。また国交省が主導しているPLATEAUのように、都市の3Dデータとその主要な地物にセマンティクスを与える3D都市モデルというような複合的なデータの整備も進められつつあります。

 オラクルデータベースも3Dの測地系データを保持し、これらのデータを格納、管理する機能を有していますし、CityGMLという3D都市データのデータ形式を格納するスキーマ構造 とソフトウェア群(3DCityDB)に対応しています。しかしながら、これらのデータは、取得するセンサーの特性、利用目的、そのためのアプリケーション等がさまざまであるために、さまざまなデータ形式が乱立した状態になっているのが現状です。そのためこれらの空間データを統合し、相互に運用しようとした場合、データの変換等が必要となるケースが多く、まだまだ大きな課題を持った領域となっています。

 これらのデータは、都市機能や屋内外のモビリティの向上、農業、工場といったさまざまな分野での自動化や最適化に結びついていくことが期待されているものでもあるため、今後、活用が進む中で、他の空間データと相互運用の可能性を模索していくことになるのではないでしょうか。そのような場合に多くの空間データを集約し、空間的につなぐ機能を提供できる空間機能を有したデータベースが果たせる役割があるのではないかと思っています。

本稿に関する補足情報

オラクルデータベースでのGDALの利用に関する補足

 オラクルデータベースでは、オラクルインストールディレクトリ以下のmd/gdalディレクトリ($ORACLE_HOME/md/gdal)にGDALが同梱されています。

 Bash系Shellの場合、下記のように環境変数を設定することで、GDALのOracle GeoRaster Driverがpluginとして読み込まれるようになります。

 また、当該ディレクトリのREADME.txtにも利用方法に関する記載があります。

export GDAL_HOME=$ORACLE_HOME/md/gdal
export GDAL_DATA=${GDAL_HOME}/data
export GDAL_DRIVER_PATH=${GDAL_HOME}/lib/gdalplugins
export PROJ_LIB=${GDAL_HOME}/lib
export GDAL_CACHEMAX=500
#export CPL_DEBUG=ON
#export CPL_LOG_ERRORS=ON
export PATH=${GDAL_HOME}/bin:${PATH}
export LD_LIBRARY_PATH=${GDAL_HOME}/lib:${LD_LIBRARY_PATH}

今回利用したラスターデータの入手先

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
オラクル技術エキスパートが紹介する 開発者のためのデータベース完全ガイド連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

中井 亮矢(日本オラクル株式会社)(ナカイ リョウヤ)

 日本オラクル株式会社でOracle Databaseを担当するエンジニア。主に地理空間機能、グラフ機能、機械学習機能を中心とするデータ活用や性能チューニングの領域で、製造業、小売業、公共・公益などの様々な問題解決およびコンサルティングに従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/17492 2023/03/15 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング