その他の新機能
ここからは、これまで紹介したもの以外の機能強化について紹介します。
[NOTE]デリゲートへのメソッドグループ変換の改善(Improved method group conversion to delegate)
本連載では新機能として紹介していませんが、C# 11ではメソッドグループの変換から作成されたデリゲートオブジェクトをキャッシュし、そのデリゲートオブジェクトを再利用するようになりました。これによって、デリゲート化のコストが低減します。C# 10までは、メソッドグループの変換から作成されたデリゲートオブジェクトをコンパイラが再利用することは禁止されていました。
fileローカル型(File local types)
C# 11では、ファイル内からだけアクセス可能とするfile修飾子が追加されました。
fileローカル型により、クラス定義などがそれを記述したファイル内でのみ有効になり、名前の衝突を回避しやすくなります。以下は、file修飾子を指定したクラスの定義例です。クラスFileLocalはProgram.csファイル内でのみ有効となり、他のファイルに同様の定義があったとしてもエラーにならなくなります(配布サンプルにはother.csファイルに同様の定義があります)。
"Hello, World!".method(); file static class FileLocal { public static void method(this string s) => Console.WriteLine(s); // 実行結果:Hello, World! }
拡張nameofスコープ(Extended nameof scope)
C# 11では、メソッドに対する属性中でnameof式によって引数の名前が参照できるようになりました。
nameof式は、変数名や型名などから文字列定数を生成します。拡張nameofスコープにより、属性の引数にnameof式を使えるようになったことで、以下のように変数名を直接記述できます。
using System.Diagnostics.CodeAnalysis; [return: NotNullIfNotNull(nameof(s))] static string? method(string? s) => s; Console.WriteLine(method("Hello")); // 実行結果:Hello
C# 10までは、以下のようにreturn属性の値に引数の名前を含める場合、文字列として直接記述する必要がありました。
[return: NotNullIfNotNull("s")]
ジェネリック属性(Generic attributes)
C# 11では、ジェネリック属性をシンプルな方法で作成できるようになりました。
ジェネリック属性により、以下のようにAttributeクラスを継承するジェネリック属性のクラスを定義し、使用側でジェネリック型をそのまま記述すればよくなっています。
Console.WriteLine("String: {0}", method_string() ?? "null"); Console.WriteLine("Int: {0}", method_int()); [GenericAttribute<string>()] static string method_string() => default; [GenericAttribute<int>()] static int method_int() => default; class GenericAttribute<T> : Attribute { }
なお、ここで指定できる型パラメータは、具象型である必要があります。C# 10までは、以下のように属性クラスのコンストラクタに引数として型を渡すようになっていました。
class TypeAttribute : Attribute { public TypeAttribute(Type type) { ParamType = type; } public Type ParamType { get; } } [TypeAttribute(typeof(string))] static string method() => default;
まとめ
今回は、パターンマッチングの拡充や、残りの新機能について紹介しました。
C#では、本連載でその一部を紹介したように非常に細かな改変が各バージョンで施されています。よりモダンで使い勝手のよい言語として成長し続けるC#を、今後も見守っていきたいものです。