SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Boost 2023 セッションレポート(AD)

サイボウズで脆弱性診断を内製化、モバイルアプリ専門のPSIRTを構築した方法とは?

【Session6】目指せ!モバイルのセキュリティ品質向上への道~モバイル専門のPSIRTを組織した話~

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

モバイルアプリに特化した専門チームを立ち上げる

 モバイルアプリの脆弱性診断の内製化を実現するため、小西氏らは製品のセキュリティに対応するPSIRTにモバイルアプリの現状についてヒアリングを実施した。主な内容は現在の管理方法や各製品のモバイル開発チームについてだ。ある程度、現状を把握するとPSIRT内で専門チームのメンバーを募集して、チームの立ち上げを進めた。

 チームの立ち上げでは、ヒアリング結果をもとにチームでやるべきタスクを洗い出し、モバイルアプリ開発チームへのヒアリングを実施した。そして専門チームにおける業務の進め方、チームの体制、フローの整備を進めた。

 また同時にモバイル専門PSIRTチームへの相談窓口を作り、開発チームに周知することで、開発チームがモバイルアプリのセキュリティに関して相談できるようにした。こうしてモバイルアプリのセキュリティに対応できる専門チームの体制が整っていった。

モバイルアプリの脆弱性診断体制を構築する

 知識や知見を蓄え、チームを整え、いよいよモバイルアプリの脆弱性診断のための体制作りに着手した。

 社内診断の大まかな流れはこうだ。まずは新しく実装する機能に対して、診断が必要かどうか判断する。もし診断が必要であれば、診断項目を記載した試験仕様書を作成する。そして仕様書を元に診断を実施し、結果を報告する流れになる。

 それぞれの段階で必要なものは何かと考えると、診断可否の判断と試験仕様書作成では診断を考察する知見、つまり診断観点が必要となる。診断を実施する際には診断方法が必要となる。そして診断報告時には診断結果にもとづいた対応フローが必要となる。そのため診断観点、診断方法、診断対応フローを準備していくことにした。

 必要なものをどのように準備したのかを順に見ていこう。まず診断観点では、チームでOWASP MASVSの輪講を実施し、知見を高めていった。輪講中のメモからMiroで付せんを作り、それぞれの機能に対してどのような場所を注意するかという視点で分類していった。この分類から診断観点を判断できるチェックシートを作成した。例えばデータを表示する機能なら、画面表示、エラー文、クリップボードなどに注目し、それぞれの観点を確認する。これで診断可否の判断や診断項目の作成ができるようになった。

 次に診断方法の作成では、サイボウズのkintoneで診断方法を登録するためのアプリを作成し、具体的な診断方法を登録していった。登録する項目は、脆弱性のタイプ、脆弱性が起こりうる場所、どのようなケースで発生し、どのように診断するのかなどの手順を登録していく。またどのような結果が出れば脆弱性があると判断できるかも記載してある。

診断方法の作成
診断方法の作成

 最後に製品ごとの診断の進め方や、脆弱性を検出した時の共有や報告方法などの診断対応フローを作成した。同じくkintoneでモバイルアプリの診断を管理するアプリも作成し、診断状況の把握や議論に役立てることにした。

 こうして診断を社内で進めていく体制が構築できた。この取り組みから、小西氏はさまざまな変化を実感できたという。モバイルアプリ診断を常に実施できるようになり、外部からの指摘や検出された挙動に対して専門的な観点で判断が可能となった。また相談窓口を作ったことで相談も増えた。

 これまでの取り組みを振り返り、小西氏は「モバイル製品のセキュリティ面での品質向上につなげることができました」と話す。今後は診断項目を最新の状況に合わせた改善と最適化、iOSの診断方法の拡充、チーム全体で知見を増やす場の提供などに向けて取り組みを継続していく。

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Boost 2023 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:サイボウズ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/18058 2023/08/03 12:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング