はじめに
連載の第1回となる今回は、Python 3.10以降の機能のうち、Union型・パラメータ仕様変数、明示的な型エイリアス、ユーザ定義の型ガードなど、Python 3.10で実装された型関連の機能を中心に紹介します。
バージョン | 機能 | 概要 |
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3.10 | Union型 | Union演算子(|)によるUnion型の記述が可能に |
パラメータ仕様変数 | ParamSpecにより関数の引数を参照した型定義が可能に | |
明示的な型エイリアス | TypeAliasにより明示的な型エイリアスの指定が可能に | |
ユーザ定義の型ガード | ユーザ定義の型ガードが関数により定義可能に | |
構造的パターンマッチング | パターンを使用した処理の仕訳が可能に | |
ネスト可能なwith文 | 一つのwith文で複数リソースの指定が可能に | |
的確なエラーメッセージ | エラーメッセージの内容がより的確に | |
3.11 | 可変長ジェネリクス | 型変数タプルTypeVarTupleにより可変長引数にもジェネリクスが利用可能に |
Self型 | 定義されているクラスを表す型変数Selfが使用可能に | |
TypedDictの改良 | 要素ごとに省略可・不可を指定できるように | |
文字列リテラル型 | LiteralString型により関数引数などに文字列リテラルのみの指定が可能に | |
データクラス変換 | typing.dataclass_transformによりクラスをdataclassとして扱うことが可能に | |
ExceptionGroupとTaskGroup | 複数タスクで発生する例外をまとめて送出することが可能に | |
トレースバックの詳細エラー表示 | エラー発生時に行番号に加えてカラム位置も出力されるように | |
3.12 | 型引数構文の導入 | ジェネリッククラスと関数がシンプルな型引数構文で作成可能に |
**kwargsのより精密な型付け | TypedDictを使用することで**kwargsの型付けをより精密に | |
静的型付けのためのオーバーライドデコレータ | typing.overrideの導入でスーパークラスのメソッドのオーバーライドの意図がより明確に | |
f-stringsの構文の形式化 | Python 3.6で導入されたフォーマット文字列リテラルがPython 3.12でさらに強化されて使いやすく | |
改良されたエラーメッセージ | トップレベルでNameErrorとなるときのメッセージを具体的なモジュール名を出すように |
対象読者
- Pythonの最新の機能を把握したい方
- Pythonの経験者で、Pythonに改めて入門したい方
- プログラミング言語の最新パラダイムに関心のある方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
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macOS Ventura
- Python(3.11.4)
- Visual Studio Code 1.80(Python v2023.14.0)
- mypy(1.5.1)
サンプルの実行
掲載サンプルは、それぞれの.pyファイルに記述されています。動作確認は、Python 3.11をHomebrewでインストールしたmacOS上で、拡張機能「Python」をインストールしたVSCode(Visual Studio Code)のPythonデバッグコンソールに出力させることで行っています。また、静的型チェックツールmypyもインストールし、必要に応じて型チェックを行っています。