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ますます便利になるTypeScript! バージョン3からの変更点と総まとめ

TypeScriptの変更点まとめ ──新しい演算子・トップレベルawait・usingについて

ますます便利になるTypeScript! バージョン3からの変更点と総まとめ 第1回

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トップレベルawait

 次に紹介するテーマは、「トップレベルawait」と呼ばれるものです。

awaitの使い方の確認

 ここで紹介するテーマは、そのテーマ名からもわかるように、awaitキーワードの使い方に関するものです。このawaitは、非同期処理でよく登場するキーワードです。

 非同期処理を含む関数はasync関数とも呼ばれ、その関数宣言にはasyncキーワードをつけるようになっています。そして、その関数からの戻り値は、Promiseオブジェクトでラップされるようになっています。例えば、リスト8のようなコードです。

リスト8:async関数の本来の使い方
async function doProcess(name: string): Promise<string> {  // (1)
  :
  return str;  // (2)
}

const promise = doProcess("しんちゃん");  // (3)
promise.then(  // (4)
  (result) => {  // (5)
    console.log(result);  // (6)
  }
);

 リスト8の(1)にasync関数doProcess()が定義されています。この関数は、引数として文字列nameを受け取り、それを非同期で加工処理を行いながら何かの文字列(str)を(2)のようにリターンする関数です。その場合、通常の関数なら、戻り値の型はstringとなります。一方、async関数の場合は、この本来の戻り値がラップされたPromiseオブジェクトがリターンされます。そのため、(1)のように、戻り値のデータ型はPromise<string>となります。

 そして、この関数を実行した際のコードも、(3)のように戻り値は文字列ではなく、Promiseオブジェクトです。このPromiseオブジェクトから本来の戻り値を取得する場合は、(4)のようにthen()メソッドを利用して、その引数に、本来の戻り値を取得し、何かの処理を行う関数を渡す必要があります。リスト8では、(5)のアロー関数が該当し、その引数resultが本来の戻り値、すなわち、(2)のstrに該当します。(6)では、その戻り値をコンソール出力しています。

 このように、単に関数の戻り値の文字列をコンソール出力する処理でさえも、非同期関数(async関数)の場合は、回りくどいコードを書く必要があります。このPromiseオブジェクトの処理を簡略化し、非同期処理の終了を待って本来の戻り値を取得するためのキーワードがawaitです。awaitを利用することで、リスト8の(3)〜(6)はリスト9のように書き換えることができます。

リスト9:awaitを使ったコード
const result = await doProcess("しんちゃん");
console.log(result);

awaitの制約とその解消

 このように便利なawaitですが、以前はひとつ制約がありました。それは、awaitを利用できるのは、async関数内のみである、というものです。よって、リスト9のコードは、実行ポイントとなるtsファイルの直下(=関数に括られていないトップレベル)に記述することはできません。

 これが、ES2022では、実行ポイントであるjsファイルの直下に記述することが可能となり、これを「トップレベルawait」といいます。実は、このトップレベルawaitは、TypeScriptでは、ECMAScriptよりははるかに先行しており、2020年リリースのバージョン3.8で導入されています。

 ただし、このトップレベルawaitを利用する場合は、コンパイルオプションとして、targetオプションをes2017以上に、moduleオプションをesnextかsystemにする必要がある点には注意してください。

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リソースの解放を自動化できるusing宣言

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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