卒業制作として、業務に役立つソリューションを開発
若手向け教育プログラムは前半が講義、後半が卒業制作で構成されている。
前半はプログラミング基礎講座で、まずはPythonを基礎から学び、コーディング環境を準備したら実習を行う。実習ではPythonプログラムでAPIをコールして、コミュニケーションツールのWebexにメッセージを投稿するまでを体験する。
初年度は小松氏が白紙から手作りし、翌年以降はどんどんブラッシュアップを続けている。2023年のブラッシュアップを担当したのは窪田氏。前年(2022年)に受講し、その記憶が新鮮なうちに改善した。
主な改善点は2点あり、1点目はネットワークエンジニア向けにフォーカスしたこと。小松氏が作成したオリジナルはソフトウェアエンジニア向けで、システム開発要件定義から保守運用までの流れ、ウォーターフォールやアジャイルなどの開発方式なども盛り込まれていた。しかしネットワークエンジニアがPythonプログラミングを学ぶという前提に立ち返り、不要なものはそぎ落としていった。
2点目はネットで公開されている教材を活用して演習問題を厚くしたこと。NOPが着目したのは会津大学が提供しているプログラミング問題のオンライン採点システムだ。それぞれのレベルに合わせてプログラミング演習できるものになっており、国内外6万人がユーザー登録して活用している。
後半の卒業制作ではMerakiをはじめとしたNOPが扱う商材を対象に、APIを連携させて新たなソリューションを開発する。商材を活用しやすいように製品担当SEからアドバイスをもらえるようにするなど社内のフォロー体制を整えた。
2023年に受講した若手、入社2年目の橋本玲氏と飯塚凜々子氏に感想と成果を聞いてみよう。二人とも2023年12月までQA対応業務を行う傍ら、教育プログラムを受講した。飯塚氏は、教育プログラムに期待したこととして「社会のさまざまな場面で人材不足が問題視されています。IT業界でもまだ手作業が多く残るなか、プログラミングで工数削減し、働きやすい環境作りや社会問題改善のきっかけとなればと思いました」と話す。
橋本氏が作成したのは「Arrivalert」、意味は到着「Arrival」と通知「Alert」を組み合わせたもの。所定の位置に到着したらWebexのチャットに自動送信する。ここではiPhoneの位置情報から勤務先のビルに接近したら出勤、離れたら退勤とみなして、Webexの勤怠ルーム(チャット)に自動投稿するようにした。
所属チームではWebexの勤怠チャットルームがあり、出勤すると「業務を始めます」と投稿するようになっている。これを自動化しようと試みた。橋本氏は「一度作成すると、その後は自動化できて楽になりました。同じチームの人にも試してもらって、すごいねと感想をいただきました」と話す。
実際に試したところ、昼休みにオフィスを離れる時にも退勤の通知が飛んでしまったり、範囲を広げてしまうと電車に乗っているときにオフィスの最寄り駅を通過するだけで通知が飛んでしまったりするなどの想定外の動作も体験した。今後は位置情報に加えて、社内Wi-Fiに接続することを条件に加えて改善を試みようとしている。
飯塚氏が作成したのは「EzReg」、意味は簡単に「Easy」と登録「Registration」を組み合わせたもの。Cisco ISE(Radiusサーバ)への認証対象ユーザの登録を楽にするソリューションで、Excelに記載したユーザー情報をPythonで読み取り、API経由でCisco ISEに自動で登録する。通常は手作業なので自動化することでミスや工数を減らすことが可能となる。
飯塚氏は「1人分の登録は成功したものの、複数人を一括登録するとエラーが起きてしまい、原因の切り分けに苦戦しました。APIで一括登録する場合には特殊な権限が必要だということが判明しました」と苦戦の過程を語る。今後はユーザーのリストと、登録済みのリストを照合し、不要ユーザーの削除を自動化したり、他の機器にも応用したりすることで実用化を目指している。
二人ともプログラミング未経験から業務に役立つ機能を開発できて、いい成功体験になったようだ。
小松氏は「教材はブラッシュアップにより完成度が高まってきたので、今後は扱うプロダクトを広げてソリューションを開発し、社内外にアピールしていきたいです。また自社だけでのアプリ間連携や自動化等のプロトタイプ開発だけではなく、パートナー企業様と共創の場を広げてより良い関係構築ができたらうれしいです」と取り組みをプログラムスキル向上からパートナー企業との共創へと広げていく展望を語った。