あなたの社会を変える、シビックテックプロジェクトの進め方とは?
シビックテックコミュニティにおけるプロジェクトの進め方は、組織に所属して業務として行うプロジェクトとは異なるところが多いとコントリビュータの皆さんから言われています。2021年に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「ルール展」向けに制作した紹介動画では、シビックテックのプロセスを「見つける」「話す」「試しにつくる」の3つで説明しています。
STEP1:見つける
「見つける」は、課題抽出・課題提起に当たります。ここで難しいのが、「問題提起」ではなく「課題提起」であることです。社会課題や地域の困りごとは山積しています。例えば、「子どもの貧困」をテーマとして取り上げようとする場合、統計データやインタビューなどで量的・質的な情報を取りに行くことがまずプロセスとして考えられます。しかし、そこから得られた情報には「情報格差」「保護者の経済状況」「サポート機関の不足」など複数の背景要因が絡んでいたり、地域や世帯ごとの事情があったり、複数の課題が内包されていて、優先順位あるいは緊急度が高いものは何なのか吟味する必要があるのです。また、取り組むものを選ぶにしても1つの課題に特化してアプローチし解決するのか、複合的なアプローチが必要なのか、また対象は自治体なのか、支援機関なのか、当事者なのかなど整理しなければならないことが浮かび上がってきます。
STEP2:話す
これらを確認しながら進めていくために必要なのが、「話す」です。プロジェクトチーム内のエンジニアとデザイナー同士のみならず、専門家との対話、当事者や支援者との対話など、ステークホルダーとの多層的な対話が行われていきます。NHKスペシャルで取り上げられた「家事分担コンシェルジュ」の場合は、国立情報学研究所で“公平性”を研究している五十嵐歩美さんからアルゴリズムの提案があり、そのうえで参加メンバーが意見交換をしながらアプリ開発を進めていきました。普段の学業や職務において関わることがないような領域の専門家、自治体職員、ユーザーさんなど幅広い層の人たちと交流・対話しながら考えたり、閃いたり、共感したりすることができるのがこのプロセスです。
STEP3:試しにつくる
最後の「試しにつくる」は「ハッカソン(hackathon)」と呼ばれるイベントや「プロトタイピング(prototyping)」といわれる開発手法が当てはまります。対話を進める中で見えてきた課題とその対応策から、初期ユーザーに触ってもらえる試作品を目指して手を動かしていきます。2daysのハッカソンなどで短期集中的に作りきってしまうこともありますし、後述の「Social Hack Day」で数カ月かけてちょっとずつ進めていくようなケースも少なくありません。また、一度作って終わりではなく、試作品を元にユーザーヒアリングを行うなど、開発資金を得てサービスリリースや事業開発を目指す際には「話す」「試しにつくる」を往復しながらアップデートを重ねていきます。
シビックテックコミュニティに参加してみよう!
コミュニティポータル
ストック情報はNotionに、プロジェクトチャネルなどフロー情報・やりとりはSlackにあります。 自己紹介を書き込む#02_introduction
や、#proj-から始まるチャネルはプロジェクト毎のチャネルなので、気になるテーマや開発を見つけたら入ってみてください。
イベント一覧
イベント情報はPeatixに掲載しています。X(旧Twitter)などにも更新していますが、ハッカソンやミートアップイベントなどで主催しているものは基本的にPeatixのイベントページに集約されています。更新された情報がお届けできるので、Code for Japanをフォローしておいてください。
まとめ
シビックテックの楽しさについてヒアリングした際、「最新技術や高度なスキルを切磋琢磨するようなテックコミュニティーではなく、日曜大工的な取り組みをしてみんなが使えるところに置いておいた時に、反応してくれたりそれが役に立つシーンを垣間見たりすることが面白さだ」と話してくれたエンジニアがいました。シビックテックに参加することが直接的にスキルアップやキャリアアップに結びつくとは限りませんが、実際にシビックテックでの開発経験がきっかけでエンジニアに転身した方や仕事仲間と出会った方もいます。
リスキリングという言葉を最近よく耳にしますが、リスキリングは学び直しとは異なり、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。シビックテックコミュニティに参加しながら、自分が業務で触れている技術以外にどんなものがあるのか、他領域を専門にする人たちがどんな風に技術を捉えているのか、隙間時間を利用しながら垣間見ることで、普段よりも少し俯瞰して自分のキャリアを捉えたり、社会の動向に関心を持ったりすることができるのではないでしょうか。
シビックテックコミュニティでは「Why not?」という言葉が飛び交っています。YesやLet’sよりも更に前向きで肯定的な「いいね」「やってみよう」「もちろん」という意味で、背中を押したり、賛同したりする言葉がお互いのチャレンジを推進し合います。ちょっとでもシビックテックが気になると思えたら、足を運んでみてください。あなたのチャレンジを近くにいるコントリビュータが後押ししてくれるかもしれません。