3つの普遍的スキルに寄与する「オブザーバビリティ」とその具体例
ここで改めて、エンジニアに求められる普遍的なスキルを思い出してみよう。山田氏は、「全体俯瞰」「ビジネス思考」「コミュニケーション」の3つのスキルに、「オブザーバビリティが非常に密接に関連してくる」と語り、Datadogを例に取って説明した。
まずDatadogは、クラウドベースでSaaSによって提供される「オブザーバビリティ&セキュリティプラットフォーム」を標榜する。オンプレミスのシステムはもちろん、AWSやAzure、Google Cloudなどのクラウド基盤から情報を集め、わかりやすく可視化するものだ。その機能の中から、「全体俯瞰」「ビジネス思考」「コミュニケーション」に関係するものがいくつか紹介された。
全体俯瞰(1):クラウドごと仮想マシンの分布と状況
たとえば2000台近い仮想マシンがどのようなクラウドプロバイダーに分布しているのか、ディスクの使用率で色分けして表示する。ディスクスペースが狭いホストが濃い色で表示され、どこにどのようなホストがあり、どのような状態かが俯瞰できる。
全体俯瞰(2):アベイラビリティゾーン間の通信量
さまざまなネットワークのトラフィックが可視化される。たとえば、AWS上のアベイラビリティゾーンやそれらで構成されるリージョンは地理的に少し距離が離れていることもあり、その間のネットワークの流れがどのくらいパフォーマンスに影響するか、全体を可視化できる。
全体俯瞰(3):マイクロサービスの依存関係
マイクロサービスアーキテクチャの複雑性を緩和して見やすくする。たとえば、ある特定のマイクロサービスに対して他のどのマイクロサービスがリクエストを投げているか、あるいはその特定のマイクロサービスが他のどのマイクロサービスに対してリクエストを投げているかが正しく把握できる。エラーや遅延などの問題が起きたの際の原因究明などに役立てられる。
全体俯瞰に限らず、ユーザーからの「ページ表示」や「キーワードでの商品検索」などの個別のリクエストについても表示が可能で、マイクロサービスの経路や所要時間、エラーの種類や発生場所なども追うことができる。
ビジネス思考:Web画面のクリック状況
エンジニアのスキルとしての「ビジネス思考」は、現在自分が作ってるものがどのようなビジネス価値を持つのか、どのようにお金を稼げるかを意識することが重要だ。Datadogでは、Web画面上でユーザーがどこをどれだけクリックしているのか、どのようにページ遷移をしているのか、傾向分析が可能だ。
コミュニケーションの円滑化:状況共有
さまざまな可視化方法によって共有すべき情報をダッシュボードでまとめて表示できる。それによって、1つの画面を複数の関係者が見て、可視化された目標や現状、課題など同じ情報を共有できるため、部門を跨いで円滑にコミュニケーションが取りやすくなる。山田氏は「お客さまからのコメントでもその有用性がよく聞かれる部分。コミュニケーションツールではないが、コミュニケーションを円滑化するために有効なツールと言える」と強調した。