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Developers Summit 2024 セッションレポート

熱狂の舞台へ──コミュニティリーダーが語る、リアル開催イベントへの誘い

【16-E-9】オフラインカンファレンス復活!イベント現地参加の魅力を語りつくすリレーセッション

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 コロナ禍でコミュニティ活動がオンラインへと移行して以来、現地開催のイベントに参加したことがないエンジニアが増えてきている。筆者自身も含め、対面での人との交流に苦手意識を持つ人は少なくないだろう。しかしオフラインイベントには、オンラインでは実現できない、さまざまなメリットがある。本セッションでは、オフラインカンファレンスを主催するコミュニティリーダーが、イベントに現地参加する魅力と、その実現のための工夫について語った。

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PHPカンファレンス:夜明けを迎えたコミュニティの熱狂

 日本PHPユーザ会 小山哲志氏は、オンライン時代のテックカンファレンスの悩みと、オフライン再開後の熱狂について語った。

日本PHPユーザ会 合同会社ほげ技研 小山哲志氏
日本PHPユーザ会 合同会社ほげ技研 小山哲志氏

 2023年5月のコロナ5類移行まで、エンジニアコミュニティはオンラインでのカンファレンス開催を余儀なくされた。その結果、コミュニティには配信のノウハウが蓄積され、海外の著名カンファレンスにも日本から参加しやすくなるなど、プラスの面もあったそうだ。しかし小山氏は「カンファレンスの廊下問題」、つまり、当日イベント会場の廊下で出会った人と自然と仲良くなるというオフライン時代の良さを、オンラインではどうしても再現できなかったと指摘する。この欠点を補うために、多くのコミュニティが、オンラインと現地開催を組み合わせたハイブリッドイベントに挑んだが、オフラインだけの場合と比べると、イベント運営の負担が大きかったと語った。

 そしてコロナ5類移行後、2023年6月に待ちに待った「PHPカンファレンス 福岡」が現地開催される。「プロポーザルが多すぎて採択率はわずか2割」「1つの本編に対して5つもの前夜祭イベントが開かれる」「イベント後も余韻が冷めず朝4時まで飲み明かす人が出る」など、その熱狂ぶりは大変なものだった。その動きは全国のPHPカンファレンス開催へと波及する。

 「良く誤解されることですが、PHPカンファレンスは単独の団体が主催しているのではなく、各地域での主催はそれぞれ異なる団体が行っています。2024年には、6月までに6地域での開催が決まっていて、毎月全国のどこかの地域でPHPカンファレンスが開催されているような状況です」(小山氏)

 PHPコミュニティのイベントへの情熱が、このようなカンファレンスのリレーを実現させているのだ。ここで小山氏は、カンファレンスファンを増やすための取り組みとして、「PHPカンファレンス関西 2024」での企画を紹介した。カンファレンス初心者向けに、参加者のアイコンシールを交換して集めるゲームを行ったそうだ。「シールを交換してもらえませんか?」という一言をきっかけに、参加者同士の会話が始まる。これには本セッションの参加者からも、「面白い」の声が上がった。小山氏は「廊下問題は廊下でしか解決できない」と言い、オフラインだからこそできるコミュニケーションの魅力をアピールした。

参加者同士の交流を生んだ「PHP Conference 大阪」のシール交換企画
参加者同士の交流を生んだ「PHPカンファレンス関西 2024」のシール交換企画

Kaigi on Rails:運営メンバーの多様性が参加者の多様性につながる

 次に、Kaigi on Railsの大倉雅史氏は、多様な人々の参加を促すための戦略と取り組みについて語った。

Kaigi on Rails チーフオーガナイザー 大倉雅史氏
Kaigi on Rails チーフオーガナイザー 大倉雅史氏

 2020年から開催しているKaigi on Railsは、その名の通りRails開発者のためのテックカンファレンスだ。当初はオフラインイベントとして企画していたが、2020年の初開催とコロナ禍が重なり、オンラインイベントとしてスタートした。2023年に初のハイブリッド開催を成功させ、現地参加400名、オンライン参加600名もの参加者を集めた。

 イベントを設計するうえで大倉氏が重視したのは、「初学者から上級者まで、みんなが楽しめるカンファレンス作り」だ。多様な参加者のニーズをバランス良く満たすことが、イベント企画のポイントだった。そこで大倉氏は、以下の3点を心がけたという。

 1つ目は運営チームの多様性だ。「Kaigi on Rails 2023」の運営チームは、男女比6:4、エンジニア経験年数は0〜20年、首都圏外在住のメンバーが2割と、多様度の高い構成になっている。大倉氏は「運営チームの多様性は、そのまま参加者の多様性につながる」と述べた。特にこの姿勢は、CFP(Call for proposal)の採択に顕著に表れる。運営メンバーは公平な持ち点で自分の聞きたいセッションに投票し、点数が多いものが採択される。運営メンバーの多様性が確保されていれば、それだけ幅広いセッションが選ばれることになる。このような工夫で、初学者向けから上級者向けまで、それぞれのニーズにあったセッションを用意していると、大倉氏は言う。

 2つ目はコミュニケーションと賑わいだ。Kaigi on Railsでは、フリースペースを充実させ、雑談したり作業したりする場所を確保した。初学者が会話に躊躇しない雰囲気づくりを重視し、全体としての賑わい感も大事にした。盛り上がっている場所には自然と人が集まる。スポンサーブースも、賑わいを演出するうえでは欠かせない要素だと。大倉氏は説明した。

 3つ目は懇親会の参加率だ。人と気軽に話しやすくなる懇親会は、初学者と上級者が交流する場として最適だ。しかし大倉氏によれば、多くのイベント運営者は懇親会の参加率に頭を悩ませているそうだ。そこでKaigi on Railsでは、本編と懇親会の参加チケットを分けずにセットで販売し、カンファレンス会場と同じ場所で懇親会を行った。これにより、チケット購入時や、イベント終了後の移動による離脱を防いだという。

参加者同士の交流を生んだ「PHP Conference 大阪」のシール交換企画

「初学者から上級者まで、みんなが楽しめる」Kaigi on Railsの工夫

 最後に大倉氏は、次回の「Kaigi on Rails 2024」は、10月25日(金)・26日(土)に有明セントラルタワーホール&カンファレンスで開催予定とお知らせした。

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この記事の著者

Innerstudio 鍋島 理人(ナベシマ マサト)

 ITライター・イベントプロデューサー・ITコミュニティ運営支援。 Developers Summit (翔泳社)元スタッフ。現在はフリーランスで、複数のITコミュニティの運営支援やDevRel活動の支援、企業ITコンテンツの制作に携わっている。 Twitter:@nabemasat Facebook Web

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山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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