SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2024 セッションレポート

BuySell・キャディ・エムスリーのCTOが語りあう、事業で成果を出すエンジニア組織の難しさ

【15-B-1】事業で成果を出すCTOたち

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「技術に責任を持つ経営者」であるCTOは、技術革新や組織のマネジメントのみならず、事業成長や利益追求もその職掌とする。分刻みのスケジュールで動くこともある多忙な役職だが、その職務の本質はどこにあるのだろうか。本記事では、株式会社BuySell Technologies・今村雅幸氏、株式会社キャディ・小橋昭文氏、エムスリー株式会社・山崎聡氏の3名による、CTOとしての意思決定や仕事についてのパネルディスカッションを紹介する。

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

三者三様! CTOの意思決定で大事なこと

PIVOT株式会社 プロダクトマネージャー 蜂須賀大貴氏(モデレーター)
PIVOT株式会社 プロダクトマネージャー 蜂須賀大貴氏(モデレーター)

──まずは「技術的な意思決定をどう進めているか」についてですが、最近大きな意思決定をした方はいますか? BuySellさんは買収の話が出ていましたね。

今村:はい。同じリユース業の企業を買収させていただきました。M&Aをするときには、対象企業の技術スタックやエンジニアの体制、開発受託の規模感や各種指数などにきちんと立ち入ります。技術の意思決定者として、M&Aの後にどうグロースさせていくかはある程度事前に予測を立てますね。

株式会社BuySell Technologies 取締役CTO 今村雅幸氏
株式会社BuySell Technologies 取締役CTO 今村雅幸氏

小橋:どういうところを重点的に見ますか?

今村:一番は「人」です。誰が開発を主導しているのか、自分たちで意思を持って開発しているのかは結構見ています。

小橋:意思決定という観点でいくと、「この会社ヤバそうだから、買わない方がいいぞ」とNGを出すのはどういう時ですか?

今村:買収する場合、すごく古いものは変えたり、外注から内製化の方向に舵を切ったりと、きちんと手を入れるので……技術アセットだけで、安易に判断することはないですね。何か課題を抱えていたとしても、エンジニアが介在することで改善する事も多いので。

──エムスリーさんもM&Aをたくさんされていると思いますが、いかがですか?

山崎:今日のテーマに沿うところですと、「事業で成果を出すための意思決定とはどうあるべきか」が1つのポイントなのかなと。ここは組織や会社のフェーズ、プロダクトの持ち方によって結構変わるんじゃないかなと思っています。

 エムスリーのようにマルチプロダクトを展開していると、最適な技術はチームによって違うんですよ。つまり、事業で成果を出すためには、クラウド環境やデプロイするための仕組みといった「事業を伸ばすために最も適した技術」や「生産性を最大化する仕組み」を、現場レベルで選んでもらうことが重要なんですね。

 現場の状況を理解しているのはCTOではなく、各プロダクトチームです。そのため私はCTOとして「技術的な意思決定を『しない』」ことを心がけています。

 一方で、私がCTOとして行う意思決定は、「全体的にクラウド化していきましょう」みたいに、各チームでの意思決定が難しいものを代わりに決定するというものです。「細かな意思決定には立ち入らない」っていうのを、私たちの組織では徹底してますね。

エムスリー株式会社 取締役CTO/VPoP 山崎聡氏
エムスリー株式会社 取締役CTO/VPoP 山崎聡氏

──お隣で小橋さんがうなずいてますね。キャディさんも技術選定はそういう感じですか?

小橋:技術選定は私もほぼやったことがないです。ただ、ここは山崎さんが仰ったとおりフェーズによって違うと思いますけれど。

 あと、私自身はソフトウェア系じゃなくて、ハード側の人間なんで、「私に言われても……」という場合もあって(笑)。本当にいろんな方に助けられながら意思決定をしてきたので、やっぱり現場で意思決定がなされるっていう風土は最初からあったのかなと思います。

 興味深いのが、組織が大きくなってくるとトップダウンで決まるルールも増えてくる一方で、現場が「ここまでなら自由にできる」と線引きできるようになる現象です。ここはものすごくCTOのバランス能力を試される場面ですね。

 技術から離れたところで言うと、我々は事業にコミットして事業の今後の成果に責任を持つという職責を担っています。なので、「短期的に見ると最適ではないが、長期的に見ると最適な方向に針路を取る」という意思決定も職務だと思いますね。

キャディ株式会社 取締役CTO 小橋昭文氏
キャディ株式会社 取締役CTO 小橋昭文氏

今村:意思決定に際してはいろんな背景がありますよね。その背景も、自分の視座からは100を伝えているつもりでも、メンバーから見ると10ぐらいしか伝わってないこともよくあります。そのため、決定した事実だけを伝えるのではなく、決定の経緯や背景といった「Why」の部分を丁寧に説明したり、文章に残したりするように意識しています。

次のページ
エンジニア組織として、CTOとして、一人前になるには?

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Summit 2024 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/19226 2024/10/23 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング