エンジニアに不足しているビジネススキルとは?──ビジネスの共通言語としてのアカウンティング
──MBAを取得し、現在は事業会社にて技術面から経営に関わる西川さんから見て、エンジニアが持っておくとよいビジネスサイドのスキルにはどのようなものがありますか?
西川さん:まずハード面でのスキルとして、会社の財務を適切に計算できるのかどうか、つまりアカウンティングの知識が挙げられます。簿記の勉強を想像していただくと分かりやすいかと思います。
私が、エンジニアに最も不足していると考えるのはこのアカウンティングの知識です。企業が公表する決算報告は企業情報を分析する上で欠かせないですし、アカウンティングの知識はビジネスを行う上での共通言語と言えます。
決算報告で特に重要なのは、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」という3つの書類です。自分の会社のこれらの資料を見たことがありますか?資料の数字が何を示しているのか、理解できていますか?
アカウンティングの考え方が身に付いているかの確認として、自分の家計を「貸借対照表」「損益計算書」で表してみるのもおすすめです。例えば、個人が銀行から200万円を借りて手元に現金が100万円しかなかったとしても、その人がすぐに破産をするわけではありません。収入があり、将来も働き続けて収入を得ることができるのであれば、その人の資産は人生全体でみるとプラスになる可能性があるわけです。
会社にも、個人の家計と同様にお金の流れがあります。まずは自身の家計のお金の流れを意識し、その後に会社の財務状況にも目を向けてみてください。こうすることで、ビジネスの共通言語を意識できると思います。
──ビジネスサイドのソフトスキルにはどのようなものがありますか?
西川さん:積極性や論理的思考力、そしてリーダーシップが重要だと考えています。
MBAでの経験を振り返ると、授業のディスカッションに積極的に参加し、価値のある発言を行うことが大きな評価ポイントでした。異なるバックグラウンドを持つ学生とのグループワークでは、相手を説得する手法や、組織中でリーダーシップを発揮する方法が重要な課題です。このような複雑な状況下でのリーダーシップは、実際のビジネス環境でも経営者に求められる資質となります。MBAでの学びは主にソフトスキルに位置づけられますが、その過酷な環境で養われたスキルが実践でのリーダーシップにも活かされているのだと思います。