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一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門

バックグラウンド処理を管理しよう! WorkManagerの基本の使い方を解説

一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門 第9回


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WorkRequestへの設定

 先述の通り、from()メソッドにより生成されたWorkRequestオブジェクトは、何も設定がされていないデフォルトの振る舞いを行います。次に、このWorkRequestの設定方法を紹介します。

WorkRequestへの設定にはビルダーが必要

 WorkRequestに設定を行う場合は、生成したWorkRequestインスタンスに直接設定を行うわけではありません。代わりに、以下の手順となります。

  1. WorkRequestのビルダーを生成
  2. ビルダーに設定
  3. WorkRequestを生成

 この手順で行ったコードサンプルは、Javaならばリスト9、Kotlinならばリスト10のようになります。

リスト9:WorkRequestに設定を行うコードサンプル(Java版)
OneTimeWorkRequest.Builder workRequestBuilder = new OneTimeWorkRequest.Builder(CountUpWorker.class);  // (1)
workRequestBuilder.addTag("DelayedWorker");  // (2)
workRequestBuilder.setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS);  // (2)
WorkRequest workRequest = workRequestBuilder.build();  // (3)
リスト10:WorkRequestに設定を行うコードサンプル(Kotlin版)
val workRequestBuilder = OneTimeWorkRequestBuilder<CountUpWorker>()  // (1)
workRequestBuilder.addTag("DelayedWorker")  // (2)
workRequestBuilder.setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS)  // (2)
val workRequest = workRequestBuilder.build()  // (3)

 以下、順に説明していきます。

1. WorkRequestのビルダーを生成

 (1)が該当します。これは、Javaの場合は、OneTimeWorkRequest.Builderインスタンスの生成コードです。その際、from()によるWorkRequestインスタンス生成の時と同様に、リスト9のように、引数としてワーカークラスを渡します。

 一方、Kotlinの場合は、リスト10のように、OneTimeWorkRequestBuilderインスタンスとなります。また、ワーカークラスの指定は、引数ではなく、ジェネリクスの型指定として行い、引数はなしとします。

2. ビルダーに設定

 (2)が該当します。表1のWorkRequestのビルダーのメソッドを利用して、設定を行っていきます。

表1:WorkRequestのビルダーの設定メソッド
メソッド 概要
addTag タグ文字列を設定
inputData ワーカーで利用するデータの設定
setInitialDelay ワーカーの開始タイミングを設定
setBackoffCriteria リトライに関する設定
setExpedited 重要度の高いワーカーの設定
setId IDを設定

 これらのメソッドのうち、リスト9とリスト10では、タグ文字列の設定のaddTag()を利用しています。このメソッドでタグ文字列を設定しておくと、ワーカーのキャンセルなどを行う際に、このタグ文字列でのワーカーの検索が可能となります。

 また、同じく、setInitialDelay()も利用しています。このメソッドでは、ワーカーの開始を遅らせる設定が可能です。設定方法は、第1引数に数値を、第2引数に第1引数の数値の単位を指定します。リスト9とリスト10では、第1引数が5、第2引数がTimeUnit.SECONDSとなっているので、ENQUEUED状態になってから5秒後にワーカーが開始される設定となります。

 その他のメソッドのうちいくつかは、次回以降紹介する予定です。

3. WorkRequestを生成

 (3)が該当します。各種設定が行われたビルダーに対してbuild()メソッドを実行することで、WorkRequestインスタンスが生成されます。あとは、from()で生成したWorkRequestインスタンスと同様に、WorkManagerのenqueue()に登録を行います。

 なお、ここまでの手順を、メソッドチェーンを利用して、以下のようなコードを記述することも可能です。

WorkRequest workRequest = new OneTimeWorkRequest.Builder(CountUpWorker.class).addTag("DelayedWorker").setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS).build();

Constraintsを利用した細かい設定

 表1を見てもWorkRequestのビルダーで設定できる内容は、あまり種類がありません。代わりに、細かい設定にはConstraintsオブジェクトを使います。これは、Javaではリスト11、Kotlinではリスト12のコードとなります。

リスト11:Constraintsを利用したWorkRequestの設定コード(Java版)
Constraints.Builder constraintsBuilder = new Constraints.Builder();  // (1)
constraintsBuilder.setRequiredNetworkType(NetworkType.UNMETERED);  // (2)
Constraints constraints = constraintsBuilder.build();  // (3)
workRequestBuilder.setConstraints(constraints);  // (4)
リスト12:Constraintsを利用したWorkRequestの設定コード(Kotlin版)
val constraintsBuilder = Constraints.Builder()  // (1)
constraintsBuilder.setRequiredNetworkType(NetworkType.UNMETERED)  // (2)
val constraints = constraintsBuilder.build()  // (3)
workRequestBuilder.setConstraints(constraints)  // (4)

 Constraintsオブジェクトを利用する場合も、(1)のように、まずConstraints.Builderインスタンスを生成し、(2)のように、そのビルダーに対して表2のメソッドを使って設定を行っていきます。その後、(3)のようにbuild()メソッドを実行して、ようやくConstraintsオブジェクトを生成します。最終的にWorkRequestのビルダーのsetConstraints()メソッドに(3)のConstraintsオブジェクトを渡すことで、表2で行った設定が可能となります。

表2:Constraints.Builderへの設定メソッド
メソッド 概要 引数
setRequiredNetworkType 特定のネットワーク状態の時のみワーカーを実行する設定 NetworkTypeの定数
setRequiresBatteryNotLow バッテリの充電量が充分の時のみワーカーを実行するかの設定 boolean
setRequiresCharging 充電時のみワーカーを実行するかの設定 boolean
setRequiresStorageNotLow ストレージの空き容量が充分の時のみワーカーを実行するかの設定 boolean

 なお、setRequiredNetworkType()の引数として利用するNetworkTypeの定数には表3のものがあります。

表3:NetworkTypeの定数
定数 概要
CONNECTED いかなる種類でもネットワークに接続されている必要がある
METERED 従量制ネットワークに接続されている必要がある
NOT_REQUIRED ネットワーク接続は不要
NOT_ROAMING 非ローミングのネットワークに接続されている必要がある
TEMPORARILY_UNMETERED 通常は従量制だが一時的に非従量制のネットワークに接続されている必要がある
UNMETERED 非従量制のネットワークに接続されている必要がある

 リスト11では、UNMETEREDを指定しています。このUNMETEREDは、通常はWi-Fi接続を指すため、端末がWi-Fiに接続している時のみワーカーが実行されるようになります。

まとめ

 Android Jetpackについて紹介していく本連載の第9回は、いかがでしたでしょうか。

 今回は、3回にわたって紹介するWorkManagerの初回として、WorkManagerの概説とその基本的な使い方を紹介しました。次回は、この続きとして、WorkRequestへの設定を掘り下げ、もう少し応用的なワーカーの実行方法を紹介します。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook<個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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