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Developers CAREER Boost 2023 セッションレポート

生成AI時代のエンジニアの生存戦略──AIをうまく活用するうえで求められるスキルとは?

【B-4】GPT-4時代のエンジニアの生存戦略 Turbo

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AI時代のエンジニアに必要なスキル

 話題はいよいよAIの活用スキルへと移る。ただし具体的なスキルに触れる前に、鈴木氏は「AIが活用できない理由には、主観的要因(本人の意思で解決できるもの)と環境的要因(本人の意思では解決できないもの)がある。今回のセッションは、主観的要因についての内容に限定する」と留保する。

 鈴木氏が補足したところによると、環境的要因の具体例は、独自フレームワークやマイナー言語を使用しており、AIを使っても補完率が落ちてしまうケースや、情報セキュリティの観点から、業務でAIをフル活用できないケースなどだ。このような環境的要因は本人の意思では解決しきれないことから、今回のスコープからは除外された形となっている。

 そのうえで、AI活用に必要なスキルとは何か。鈴木氏によれば、それは「AIにイメージ通りの結果を出力させるスキル」と「AIの出力内容を判断して、自らのアウトプットにつなげるスキル」の掛け算だという。曰く、たとえどちらか一方のスキルが高くとも、他方がゼロの場合、全体としてのスキルもゼロとなり、「AIを使わない」選択に陥るというのだ。しかし、2つのスキルがそれぞれに高ければ、アウトプットの質が高くなる。したがって2つのスキルは独立ではなく、あくまでも掛け合わせで効果を発揮するというのが鈴木氏の考えだ。

AIを活用するためにはスキルの掛け算が必要になる
AIを活用するためにはスキルの掛け算が必要になる

 「AIにイメージ通りの結果を出力させるスキル」が足りない場合の具体例として、鈴木氏はGoogle検索と同じようにAIに指示を出すケースを紹介した。「営業デモ資料」「資料テンプレート」など、キーワード検索のような指示の出し方をすると、AIは充分に能力を発揮できない。これを受けて、「AIは役に立たない」と判断してしまうというケースだ。

 また「AIの出力内容を判断して、自らのアウトプットにつなげるスキル」が足りていない場合の具体例として、アメリカで実際にあった事例を紹介した。弁護士がAIで出力された判例を鵜呑みにしてそのまま使用した結果、存在しない判例の文書を提出してしまい、罰金を課されたという事件だ。Generative AIはハルシネーションリスクをゼロにはできないという前提があるが、それを理解せずに使用すると、「嘘をつく可能性があるならAIなんか使わない」という意思決定につながりがちだという。

 2つのスキルは、それぞれ4つの要素に分解できる、と鈴木氏は考える。「AIにイメージ通りの結果を出力させるスキル」にはLaziness(怠惰)、Analytical skills(分析力)、Verbalization skills(言語化能力)、English skills(英語力)の4つ、「AIの出力内容を判断して、自らのアウトプットにつなげるスキル」にはScientific thinking(科学的思考)、Critival thinking(批判的思考)、Experience(経験)、Expertise(専門性)の4つだ。

AI活用に必要なスキルは、ぞれぞれ4つの要素に分解できる
AI活用に必要なスキルは、ぞれぞれ4つの要素に分解できる

 鈴木氏曰く、「AIの出力内容を判断して、自らのアウトプットにつなげるスキル」は、AI以外の分野にも共通する部分が大きいという。たとえば部下の仕事内容をレビューする、プルリクエストの内容をレビューする際などには、科学的思考や批判的思考、専門性が必要だ。したがってこちらのスキルは、日常業務の中でも充分にトレーニングできる。

 他方、「AIにイメージ通りの結果を出力させるスキル」はAIに特化した技術であり、多くの人が悩んでいるというのが鈴木氏の見立てだ。そこで今回のセッションでは、こちらのスキルの身につけ方にフォーカスが当てられることになった。

 「AIにイメージ通りの結果を出力させるスキル」のうち、1つ目の要素は「怠惰」である。これは「エンジニアの三大美徳」としても著名であるが、「AIに関してはちょっと意味合いが異なる」と鈴木氏。というのもエンジニアの三大美徳のLazinessは、自動化できるところは自動化していこうとする考え方だが、AIに関して言えば、AIを導入したからといってただちに業務が自動化されるわけではない。そのため、「自分がやっている仕事に関して、積極的にAIを利用して効率化、高品質化を目指すことが非常に大事」というのが鈴木氏の考えだ。

 これをクリアしたうえで大切になるのが、2つ目の「分析力」だという。コードを書く業務のみならず、考える、コミュニケーションをとる、仕様書を書くなど、エンジニア領域のあらゆる業務オペレーションのなかから、AIに任せられる仕事を抽出していく作業が必要になるというのだ。AIには得意・不得意領域があり、使いどころを間違えれば「AIは役に立たない」という結論へ安易に辿りつきがちだ。「どこに、どのようにAIを適用していけば、仕事にとってプラスになるか。そのオペレーションを検証していく技術が必要だ」と鈴木氏は強調する。

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AIは本当にエンジニアの仕事を奪うのか?

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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