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Developers Summit 2024 セッションレポート

「どこか他人ごと」な防災DX、実際どれだけ進んでいる? 国・自治体が提供しているシステムと自分でできる備え

【15-E-4】地方自治体防災DX最前線~なぜあなたの街の防災DXは進まないのか~

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 2024年1月1日に発生した能登半島地震が記憶に新しいとおり、自然災害が頻発する国、日本。国民の命と財産を守るには、官民を挙げた防災DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務だ。本講演には、デロイトトーマツコンサルティング合同会社のCore Business Operations 執行役員であるkyon_mm氏と、同Government & Public Services Directorである山田 剛士氏が登壇。国や地方自治体における防災DXの取り組みとそれに伴う課題、課題への向き合い方について、プライベートや業務の経験をもとに語った。

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災害が多い日本で、防災DXが「どこか他人ごと」な理由

 前半の講演を担当するのは、システム開発やアジャイルコーチ、新規事業の立ち上げ、大学生への指導などに尽力する傍ら、防災DXのための自社サービス、ツールの開発に携わるkyon_mm氏だ。

デロイトトーマツコンサルティング合同会社 Core Business Operations 執行役員 kyon_mm氏
デロイトトーマツコンサルティング合同会社 Core Business Operations 執行役員 kyon_mm氏

 初めにkyon_mm氏は、災害リスクが高まっている現状として、2023年に公表された気象庁の気候変動監視レポートを紹介した。これによると、土砂災害が発生しやすくなる「日降水量200mm以上」の日数は、50年前と比較して約1.5倍に増加しているという。日頃の雑談で「ゲリラ豪雨が多くなった」などと話すことがあるが、「体感だけでなく、数字として現れている」ことがこのレポートからは読み取れる。

気候変動の影響により、50年前と比較して災害リスクが高まっている
気候変動の影響により、50年前と比較して災害リスクが高まっている

 しかしkyon_mm氏個人はというと、「災害リスクを体感出来る状況には全くなかった」という。「生まれ育った北海道旭川は内陸の盆地なので、台風も地震もほとんどなかった。東京で東日本大震災には遭ったが、幸いなことに深刻な被害は受けずに済んだ。そのためか、防災というトピックはどこか他人ごとのままだった」というのが率直な感想だ。

 そんななかkyon_mm氏は、業務で防災DXに取り組むことになる。そして地方自治体、住民、防災サービスそれぞれで課題が山積している現状を目の当たりにしたという。

 「あまり知られていないことだが、自治体人口の中央値は3万人程度だ。この規模感を描写するなら、『市内のチェーン店カフェは駅ナカの1店舗のみ』という風景をイメージしてもらえばいい。そしてこうした自治体の課題は、何より予算不足だ。人口減少により税収が少なく、システムを導入することすらできない」。

 さらに、よしんば予算があったとしても、市民に対してどのようなシステムを入れればいいのか、どういった改善をしていくべきかといったニーズの把握もできていないのが実態だとkyon_mm氏は語る。

 住民側の課題は、大地震への対策が頭打ち気味になっている点だという。kyon_mm氏自身がそうであったように、被災を経験した人ですら数年後にはモチベーションが低下してしまう。なおかつ公共サービスへの期待感も低く、「住民の方にインタビューしてみると、『欲しいサービスはない』とおっしゃる。しかし実際に『ない』わけではなく、期待するのを諦めているだけだ」とkyon_mm氏は苦笑する。

 防災サービス側の課題としては、自治体の予算が少ないため、スクラッチ開発はできてもSaaSとして大規模に展開するモチベーションが出てこない実態がある。

自治体、住民、防災サービスそれぞれが抱える課題
自治体、住民、防災サービスそれぞれが抱える課題

 このように防災DXは、エンジニアリング面を解決すれば即座に促進されるものではない。だからこそ、ニーズが掘り起こしにくい、予算が少ないといった問題を総合的に変革する必要があるとkyon_mm氏は強調する。

 「エンジニア視点だとデジタルアセットに目を向けがちだが、せっかく作っても予算を確保できない自治体には売れないし、防災に対してモチベーションが低い人には使ってもらえない。さらに、そういうものを総合的に支援できる会社も少ない。ステークホルダー全てに対してトータルでサポートしていかなければ、防災DXは進まない」。

 防災DXには、「点」ではなく「面」での対策が求められているのだ。

次のページ
防災にはどのようなシステム・データが関わってくるのか

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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