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Developers Summit 2024 セッションレポート

「どこか他人ごと」な防災DX、実際どれだけ進んでいる? 国・自治体が提供しているシステムと自分でできる備え

【15-E-4】地方自治体防災DX最前線~なぜあなたの街の防災DXは進まないのか~

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マイナンバーカードも自治体も、有事にどれだけ機能するかは未知数

 講演はkyon_mm氏、山田氏によるパネルディスカッションへと移った。最初のテーマは「官公庁における議論と、実際の生活のギャップ」である。

 このギャップについて山田氏は、「中央省庁の一部のシステムは、マイナンバーカードを持ち歩くことを前提に設計されている。しかし災害時、キャッシュカードすら取り出せない人が大勢いるなかで、マイナンバーカードを持って非難することは難しい」と投げかけた。

 これに対してkyon_mm氏も、「能登地震ではSuicaが配られ話題になったが、同じことをマイナンバーカードで実現するのは難しい。指摘通り、有事の際にマイナンバーカードを持って逃げる余裕はないだろうし、個人認証はできても別の手間がかかる」と同調する。

 マイナンバーカードは個人認証として有効な手段だが、有事のことを考えれば、全てのことをマイナンバー頼みにしてしまうのは何かと不都合だ、というのが現時点でのkyon_mm氏の見解だ。同氏はこの解決方法として、「すでに進んでいるとおり、マイナンバーの一部機能がスマートフォンに搭載されれば、スマホ=マイナンバーによる対応も現実的になるだろう」と展望を述べた。

 官公庁と実生活のギャップについてkyon_mm氏はさらに、被災地のDXが急務であることを強調する。被災による支援金を受け取るには、り災証明が必要になるが、DXしている自治体とそうでない自治体とで大きく差が出ているというのだ。

 これには山田氏も同調し、「システムの有無だけでなく、自治体の職員がシステムに慣れているかによってもスピードが変わってくる。システムを適切に活用し、可能な限り早く被災者を救済することが大事だ」と続ける。

 kyon_mm氏はDXによる国・自治体へのメリットとして、「たとえば、それぞれの市民が受けた物資の供給などが適切にトラッキングされれば、その情報をもとに交付金を受けるという交渉・意思決定も可能だ」と例を挙げる。しかし現状、そのようなプラットフォームはなく、「同様の事象はあちこちに転がっている」。被災者はもちろん、国・自治体へのメリットも大きいからこそ、防災DXは急務だというのがkyon_mm氏の見解だ。

 次のテーマは「自分でできる防災DX」だ。このテーマについてkyon_mm氏は、「防災アプリを入れる、X(旧Twitter)で情報収集をする、住んでいる地域の自治体のアプリを探すなど、普段から防災に関心を持ち、活用してみることが大事」と提案する。

 また、避難所は各自治体で人口の10%程度しかカバーできないとしたうえで、公助(公共サービスの支援)とともに、自助・共助(自分で助ける・ともに助けること)の重要性にも触れた。「避難所は公助であり、あくまでも最終手段。基本的には自助・共助で災害に備える必要がある。防災DXでアナログな部分を減らすことはもちろん大切だが、自助・共助のためのツールがもっとたくさん必要だと感じる」。(kyon_mm氏)

 これには山田氏も、「避難所が足りないだけでなく、災害対応のいろいろなものが足りていない。大きな災害に備え、最低限の食料やトイレの問題に備えておく必要がある」と同調する。

 たとえば東京には首都直下地震や南海トラフ地震、富士山噴火などのリスクがあり、どれも国が対策計画を立てているものの、被災者一人ひとりに支援が届くかどうかは未知数だ。やはり実際問題として、自助・共助は避けて通れないだろう。山田氏は会場に向け、「ぜひ自宅でも、それぞれに備蓄などの準備をしてほしい」と呼び掛ける。

 「備えるためには、ハザードマップの確認も大事」とkyon_mm氏が付け加える。居住地区の水害リスクや地震、土砂崩れのリスクなどを確認し、逃げる際のルートを確認しておくことが被害軽減に役立つという。これには山田氏も「国交省で管理している『重ねるハザードマップ』や、各自治体のハザードマップをWebで確認しておき、家を借りる・買う際にも役立てて欲しい」と続いた。

 参考:重ねるハザードマップ|国土交通省

 最後にkyon_mm氏は、防災に加えて「減災」の重要性にも言及した。「災害の発生はコントロールできない。だからこそいかに二次被害を減らすか、災害関連死を減らすかが重要だ。自治体などでは災害に関連するイベントや避難訓練が多く実施されているが、高齢者の参加が多く、なかなか普及しないという課題がある」と話す。

 kyon_mm氏の言葉を引き取り、山田氏は「公助・自助・共助、どれも拡大させていく必要があるが、同時にどれも限界がある。今後ますます高齢化し、人口減少で地方自治体の力が弱くなっていくなか、公助はとりわけ弱体化していくだろう。自分や家族を守るためには、自助・共助の拡大が不可欠」と結んだ。

 国や自治体の防災対策に課題が山積する現状において、エンジニアリングが役立つシーンは今後さらに増えてくるだろう。しかし、自ら災害リスクに備える「自助・共助」の重要性も、同時に理解しておかなければならない。地域全体で災害に備える意識を持ち、自分事として情報収集や対策を実践していくことが、いま私たちにできる防災DXと言えるだろう。

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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