アジャイルとウォーターフォールの違いを関係者にわかりやすく伝える方法
アジャイル開発の本質を理解することが、組織的な問題を解決する第一歩だと鈴木氏は説く。彼は遊園地にある電車のアトラクションを例に挙げ、アジャイルの仕組みを説明した。
この例えでは、電車が開発者たち、ホームの乗客が案件、駅長がプロダクトオーナーを表す。電車への乗車は、スプリントプランニングでのタスク引き渡しに相当する。通常の電車と異なる点は、走行中にホームの乗客(案件)の並び順(優先順位)を変更できることだ。
重要なのは、電車(開発者たち)が定期的に運行を続け、電車に乗る乗客(案件)が決まるのは出発直前でも構わないという点だ。これにより、進行中の作業と将来の計画を分離できる。電車が出発した後も、ホームでは次の乗客の並び替えができる。この並び替えは走行中の電車に影響を与えない。このモデルにより、変化する要求に迅速に対応しつつ、安定した開発プロセスを維持できる。
一方、ウォーターフォール型開発はタクシーに例えられると鈴木氏は語る。タクシーは行きたい場所に自由に行けるため柔軟性のあるアジャイルに似ているように思えるが、実際は違う。ウォーターフォールでは、案件が決まってから初めて開発チームの調達を始める。これはタクシーを捕まえるのに似ており、適切なチームが見つからない可能性がある。また、開発の質はチーム(運転手)の能力に大きく左右される。さらに、IT業界の好況期には優秀なチームの確保が難しくなる。これは雨の日にタクシーが捕まりにくくなるのと似ている。
最大の問題は、一度開発(走行)が始まると、方向転換が困難になることだ。タクシーで高速道路を走行中に目的地を変更するのと同様、ウォーターフォールでは途中での要件変更が大きな混乱と追加コストやリスクを招く。これらの特徴は、変化の激しい現代のビジネス環境には適さないと鈴木氏は指摘している。
電車モデル(アジャイル)では、誰がどの電車に乗っているかを管理するだけで、全体の状況が把握しやすい。これは複数の案件を並行して進める際に特に有効だ。タクシーモデル(ウォーターフォール)では、多数の案件を個別に追跡するのは煩雑になりがちだ。