基幹システムのハイブリッド開発、成功の秘訣とは
最終工程では、システムの移行とユーザーへの導入説明会を小山氏が担当した。主なタスクは「移行計画書の作成」と「導入説明会の実施」の2つだ。
移行計画書は、移行要件や方針に基づいて「誰が」「いつ」「どのような方法で」移行を行うのかを具体的に記したものだ。小山氏によれば、「業務移行」「データ移行」「システム移行」という三つの視点から必要なアクションを詳細に記載し、それぞれの作業を明確に分担することがスムーズな移行の鍵だという。
また、今回の基幹システム開発はアジャイル手法で進められたため、「どの範囲が完了した時点で業務運用を開始するか」を業務部門と合意する必要もあった。小山氏によると、過去に必要な機能が完了していない状態で業務リリースを迎えた際、それをユーザーに伝え忘れてトラブルになったケースがあったという。これを防ぐためには、業務運用開始のタイミングを明確に定め、周知することが欠かせないだろう。
最後のタスクは、導入説明会だ。この段階では、大きく分けて4つのポイントが重要になると小山氏は説明する。
1つ目は「説明会の目的、対象者、進行の流れを事前に決めておくこと」だ。これにより、参加者全体の理解を促進できる。2つ目は、「開発マネージャと業務マネージャが一枚岩になっておくこと」。これができていないと、説明会での混乱を招きかねない。
3つ目は、「参加者にシステム導入のポジティブなイメージを持たせること」だ。システム導入のメリットを中心に伝えることにより、受け入れが円滑に進む。そして4つ目は、「フィードバックの収集とアフターフォロー」であり、説明会の内容を録画するなどして、当日参加できなかった人をフォローする仕組みを整えることを推奨した。
最後に小山氏は、「開発マネージャの役割は、プロジェクトを円滑に進めるための仕組みやスキームを考え、実行し、定点でモニタリングすることだ」と主張。また、「各計画書等で自身の想いを可視化し、関係各所との泥臭い合意を重ねていく。この地道な取り組みこそ、プロジェクト成功の唯一の道だ」と聴衆に語りかけ、自身の体験を総括した。