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キャリアの岐路に立つエンジニアへ伝えたい、「プレイヤーかマネージャーか」の二者択一じゃない生き方

【A-9】マネジメントor技術は二者択一?「中途半端」なエンジニアの生存戦略

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 飲食店や小売店でiPadのレジやマルチ決済端末を見たことがあるだろうか。スマレジはiPadやiPhoneアプリで使えるPOSレジや各種業務システムを開発している大阪の企業だ。アクティブ(1日1回以上使用)な顧客は46,000店舗を突破し、サービス解約率は0.46%と低い。スマレジなぜこれほど成功しているのか。同社 代表取締役/CTOの宮﨑龍平氏が成長の背景にある理念について、またエンジニアとマネジメントの両方を経験している開発本部 CTO室 室長の上野裕貴氏がエンジニアの生存戦略について語った。

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スマレジが大切にしてきた開発バリュー

 スマレジで代表取締役/CTOを務める宮﨑龍平氏はスマレジを立ち上げたメンバーの1人。創業時の自身について「エースではなくルーキー。ピカピカのイケてるエンジニアではなかった」と言う。2019年にCTOとなり、2024年7月からCEOに就任した。

宮﨑氏の自己紹介

 スマレジの会社としての特徴は3点ある。1点目は「iPadレジの会社」。小売や飲食店で見かけるPOSレジだけではなく、さまざまな業務システムを開発している。2点目は「エンジニアの会社」。取締役4名のうち3名がエンジニア出身なので「作ることが得意」と宮﨑氏は言う。

 それなら3点目は「キラキラベンチャー」に思えてしまうかもしれないが、そうではない。宮﨑氏は「有名エンジニアもいなければ大型調達もしていません。コツコツと積み上げていたら黒字化してしまった企業です」と説明する。

株式会社スマレジ 代表取締役/CTO 宮﨑 龍平氏
株式会社スマレジ 代表取締役/CTO 宮﨑 龍平氏

 ビジネスを見ると、スマレジのアクティブユーザーは46,000店舗を突破するなど好調だ。パブリックSaaSのビジネス時価総額ランキングでは10位にランクインしている。年次成長率は30%、営業利益率は10〜20%で安定的かつ堅実だ。

 キラキラ要素なしに堅実な成長を成し遂げている理由として、宮﨑氏は「大切にしてきた3つの開発バリューがある」と言う。

生涯現役

 役職や役割で分業する組織もあるが、スマレジでは役職者でも現場で作業し、ディレクター、プロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーなど間接要員をできるだけなくしている。現場で手を動かしているからこそ、「現場の解像度が高まり精緻なマネジメントができている」と宮﨑氏。

エンジニアはビジネスマン

 新しい技術を追うなかで、なぜ必要なのか、過度な節約ではなく無駄遣いしてないかという金銭感覚も持つことを重視している。

要件定義ではなく要求定義

 顧客の依頼に応えるだけでは不十分で、顧客が本当に求めている本質を知ることが大事だ。宮﨑氏は「お客様は要件定義の素人なので、うまく伝えられません。要望をよく聞いて正しく理解することでプロダクトの質の向上や解決策の精度が高まります」と話す。

 スマレジが実体験を通じて編み出した生存戦略が「生涯現役で、ビジネスの分かるエンジニア」だ。現役だから解像度の高い解決策を提示できて、ビジネスが分かるエンジニアだからアウトカムを高めていけるということだ。

 宮﨑氏は「会社の数字は営業が作ると言われていますが、そうではない。開発がビジネスのコアを握っています」とエンジニアの重要性を強調した。そのうえで作り手となるエンジニアを「全ポジションで大募集中です!」と付け加えた。

プレイヤーを続けるメリット・デメリット、マネージャーに進む期待と不安

 ここからはスマレジの生存戦略をそのまま体現しているメンバーの話を聞いてみよう。同社CTO室の上野裕貴氏はプレイヤーとマネジメントの間で揺れ動きながらキャリアを選択してきた人物だ。2022年2月にスマレジの福岡開発拠点の第一号メンバーとして入社し、普段は福岡でWeb系開発に従事している。

株式会社スマレジ 開発本部 CTO室 室長 上野 裕貴氏
株式会社スマレジ 開発本部 CTO室 室長 上野 裕貴氏

 まずは上野氏のこれまでのキャリアを振り返る。最初に入社したのは受託開発会社で、Web開発(PHPやRuby on Rails)やモバイル開発(iOSやAndroid)のプレイヤーとして働きはじめた。次に自社開発の会社に転職し、途中でマネージャーを打診された。

上野氏の経歴

なぜ自分がマネージャーに選ばれた? 技術に疎くなる不安もあった

 打診というよりは突然の指名で上野氏は困惑した。嬉しさもあるものの、「自分に向いていない。もっと優秀な人がいるのになぜ自分が?」という受けいれがたさがあり、不安もわき上がってきた。

 プレイヤーを続ける選択をした場合、好きな技術や開発に携わり続けることができるのがメリットだ。一方、世の中には自分よりも強いプレイヤーがいるのに「これからも通用するだろうか」「エンジニアだけではキャリアの幅や可能性を閉じてしまわないだろうか」という不安もあった。

 逆にマネージャーになる選択をした場合、業務の幅や裁量が広がり、自分の成長や収入アップが期待できる。一方「そもそもコミュニケーションが苦手なのにできるだろうか」「そのうち技術に疎くなり、無能なマネージャーになるのではないか」「この会社でしか通用しない政治屋になってしまわないか」といった不安が次々とわいてきた。

 エンジニアなら経験が実績となり転職時に有利に働きそうだが、マネージャーではどうか。チームをとりまとめた経験は「ポータブルスキルにならないのでは」と上野氏は疑念を抱いていた。

 ジレンマを抱えつつも、最終的にはマネージャー打診を受けいれることにした。「誰にでも訪れるチャンスではないなか、自分が選ばれた。やったことがないのに向いていないと決めつけるのはカッコ悪い。とりあえずやってみよう」と一念発起したのだ。

マネージャーはやってみると奥が深い──そして新たな不安も生じる

 実際にマネージャーとしてやったのは、アサインやリソース調整、進捗(しんちょく)管理、目標設定や評価、1on1、採用、制度設計などだ。経験してみると「専門性が高く、奥深い。学ぶことがたくさんある」という発見があった。

 チームで働く楽しさも高まった。上野氏は「プレイヤー時代は不機嫌になると強い言い方をするなど不器用なところもありましたが、まとめる立場になるとそういうことがすごく見えてきて、チームのために振る舞うことを意識できるようになりました。またそれまでは一人で抱え込みがちでしたが、素直に『自分は万能ではない』と認めて周囲を頼れるようになるなど、肩の力が抜けました」と自身の成長と心境の変化を振り返る。

 とはいえ良いことだけではなかった。やはり心配していたように現場や技術に疎くなってしまった。プレイヤーの世界同様にマネージャーの世界にも果てしなく上がいることを思い知らされた。加えて「マネージャー経験は本当に自分の血となり肉となっているのか? ただ在籍期間や人間関係の蓄積でチームを動かせているだけで、他社では再現性はないのでは」という疑念もわき上がってきた。そうしたなか転職を決断した。

スマレジに転職してプレイヤーもマネージャーもどちらもできる

 そしてスマレジ入社へと至る。現在はチームをリードする立場として目標設定、評価、採用面接などを行い、同時に開発者としてスケジュール・進捗管理、タスク割り振り、コードレビュー、コードを書いて実装も行う。プレイヤー業務の傍ら、現場に近いマネジメント業務を兼任しているところだ。

上野氏の経歴(スマレジに入社)

 転職先にスマレジを選んだ理由は、宮﨑氏が挙げたようなスマレジの開発バリューに魅力を見いだしたからと言える。まず「生涯現役」であるところ。スマレジでは開発部の現場ではほぼ全員がコードを書く。年齢も関係ない。上野氏は「ここならコードが書ける」と期待し、入社してその期待が裏切られることはなかった。

 もう1つは「ビジネスがわかるエンジニア組織」を目指しているところだ。マネージャー業務だけに従事するメンバーはいない。機能を実装するメンバーが営業やカスタマーサービスと協議してプロダクトの方針を決めているため、まさにエンジニア主導で開発が進んでいる。上野氏は「分業をなるべく減らして、必要であればマネジメント業務もやるというスタイルなので、プレイヤー経験もマネジメント経験も活かせると思いました」と話す。

 実際、上野氏が転職前に抱いていたマネージャーのデメリットや不安はスマレジへの転職で払拭できた。現場から離れて現場や技術に疎くなったところは、現場に復帰できた。マネージャーの世界にも「上がいる」と途方に暮れてしまった点は、プレイヤーとマネジメントを兼任できる環境を選ぶことで「どちらもある程度できる」を目指すことにした。マネージャー経験が自分を成長させているのかという疑問については、別環境でマネージャー業務に挑戦することで確信が得られるようになるだろう。

 一般的にはプレイヤーとマネージャーで分業する組織は多いものの、「プレイヤーかマネージャーか」の二者択一ではなく「どちらもやる」のが向いている人もいるし、実際にスマレジのように「どちらもできる」現場もある。マネジメント業務の責務をどこまで現場に委譲しているかは環境により多種多様だろう。上野氏はプレイヤーかマネージャーか区別することよりも「自分がどういうところに身を置いたほうがいいのかを考えることのほうが大事」と話す。

 また上野氏は「マネージャー経験は食わず嫌いしないほうがいい」とアドバイスする。当初は戸惑いがあったものの、やってみたら視野が変わり、違う境地にたどり着くことができた。例えば「現場で人が足りないから採用を増やす」という状況に直面した時、プレイヤーだけではなかなかうまく動けなかったりするが、マネージャー経験があるからこその発想で言えることや動けることがある。「幅広い選択肢からチーム運営ができているのは間違いなくマネジメント経験から来ている」と上野氏は言う。

 分業や役割がしっかり決まっている組織では、プレイヤーとマネージャーの間には大きな溝があるかもしれない。しかし上野氏は、「業務は(プレイヤーとマネージャーの)二者択一ではなくグラデーションのようなものです。マネージャーをやってみてダメだなと思えばプレイヤーに戻ればいいだけの話。どちらも経験したからこそどちらにも行き来できると思えるようになりました。自分の特性に合った柔軟な生き方が大事です」と最後に述べ、セッションを締めくくった。

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提供:株式会社スマレジ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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