日本市場で広がるCPaaS利用と、APIの実践的な活用事例
CPaaSを提供するベンダーは、グローバルではTwilio、Vonage、Infobip、Sinchの4社が主要プレイヤーとしてあげられる。Vonageが2017年から、Infobipが2021年から、Twilioが2013年から日本で展開しており、それぞれは現在、KDDI、NTT、ソフトバンクという日本の3大通信キャリアと提携関係にある。
CPaaSの主な活用例としては、二要素認証におけるSMS送信、システム障害時の電話での緊急通報、レコメンデーション通知(SMS)、コールセンター業務(電話)やビデオ会議システムなどが挙げられる。
興味深い事例として、高橋氏自身が開発した「slackfone」が紹介された。電話の着信があるとCPaaSが受けて音声を文字化し、Slackで通知するというもの。電話データベースと連携させることで、Slackで受けた電話番号の相手がわかるようになっている。電話相手をチェックし、必要に応じて受ければよいため、煩わしい電話対応が不要になる。他にもFileMakerで作成したコールセンターシステム、サイボウズのGaroon用ビデオ会議などが紹介された。
なおKDDIウェブコミュニケーションズが提携するVonageは、2001年に米国で設立したCPaaSベンダーであり、国内外で12万社以上に採用されている。しかし、提供されるソリューションの裏側にあるため、「使っている」とあえて明らかに明言している企業は多くはない。
Voice(電話)やMassages(SMS)をはじめ、多彩なコミュニケーションAPIを擁し、ユースケースAPIやマネジメントAPIなどが潤沢に用意されている。これらを活用することで簡便にサービスをつくることができる。
高橋氏は、CPaaSの魅力を一言で言うなら「アイディア次第で、今までにはなかったコミュニケーションを作れること」と語る。そして、1つのAPIを叩くだけで電話発信ができるデモンストレーションを行なってみせた。

CPaaSは、基本的にエンジニア向けのプラットフォームサービスではあるが、実際にはエンジニアではない人も使うことが想定されている。その1つが、ドラックアンドドロップで線を繋いでいくだけで、チャットフローが作成できるノーコードツール「AI Studio」だ。
その中の新機能として搭載される「ナレッジAI」はこれまでチャットボットに多いシナリオ作成型の分岐モデルではなく、既存のPDFやサイトURL、テキストファイルなどのナレッジをVonageに学習させることで「AI Studio」が参照して回答を作成するというものだ。
これを使って、自動着信・回答チャットのデモンストレーションが実施された。質問を入れると、既存のナレッジから回答文を作成する。チャットだけでなく、音声などにも適用できるという。高橋氏は「従来のシナリオベースのチャットボットは作るのが大変で、かつメンテナンスも大変。しかし、「AI Studio」なら、ナレッジをどんどん入れるだけでナレッジベースのチャットボットが簡単にでき、メンテナンスも自動的に行なえる」と強調した。

そして、「Video API」によるWeb会議システムの構築についてもデモが行なわれた。従来から提供していたVideo APIを使ったオープンソースでReactベースのVideoアプリケーションをGitHubに公開しているという。これを用いることで簡単にビデオ会議などが構築できるというわけだ。チャット機能などさまざまな機能がコンポーネント内に含まれ、最も手間がかかるUIも簡単につくることができるので、興味のある方はトライしてみてはいかがだろうか。