「デリバリー短縮」と「品質向上」を目標に、返済活動スタート!
1.開発組織としてのプロダクトの理想の世界観を定義する
技術的負債の返済を考える上で、「自分たちはプロダクトをどうしたいのか」、「どんなプロダクトにしていきたいのか」などを定義しておくことが重要だ。方向性が明確でなければ、途中でブレたり、一貫性が失われたりしてしまうからだ。浅井氏は「プロダクトの未来は『我々次第である』という気持ちで言語化をしよう。言語化して形に残すことで、悩んだときに立ち返る場所としても使える。徹底的に話し合い、一緒に活動する仲間の気持ちを理解しよう」と語り、実際に使っていたツールにまとめたものを紹介した。

『ホットペッパービューティー』では2つの世界観を定義。1つ目は「デリバリー短縮」であり、アプリ公開までの納期を短縮することで、多くの案件をリリースし、予約数・売上に貢献できている状態を理想とした。そして、もう1つは「品質向上」とし、障害が起こらず、安定して使い続けられる、技術的負債の継続的な返済ができている、開発中の弊害が少なく開発速度が速いという状態とした。
2.理想の仮説を洗い出す
次のステップでは、第一ステップで定義した理想の世界観を実現するための「理想の仮説」を洗い出す。ここでは、今ある最新の技術などでやりたいこと、やりたい理由について効果の有無に関わらず出し合う。ポイントとして浅井氏は「日頃から最新技術を理解しておくこと」「普段の業務中に理想を常に考えておくこと」をあげ、「『こうだったらいいな』という思いを吐き出しておくことが大切」と語った。
そして、洗い出しとともに、理想の仮説の項目ごとに簡単にグルーピングしておくと後の工程が楽になるという。例えば、『ホットペッパービューティー』の場合、縦軸に「コーディングコスト削減」や「チームの技術ケイパビリティ向上」などにグルーピングし、横軸に「理想の仮説」と「それをやりたい理由」で整理した。

3.課題の仮説と解決策案を洗い出す
ステップ3は「理想の世界観」を実現するにあたり、「弊害となっている課題の仮説」と「解決策案」を洗い出す。また、メンバーからアンケートをとるなどして、実装時の細かい課題も集めておくとよいという。なお「理想の仮説」と異なるのは、解決策案まで検討することだ。「課題の仮説」に対しては「なぜなぜ分析」を実施し“真因”を突き止める。そうすることで課題が解決できるか見当がつけられるというわけだ。
ここでのポイントとして、浅井氏は「リーダーでもコードを触って現場感を知ること」や「なぜなぜ分析で真因を突き止めること」をあげ、「課題の解像度を高くすることで真因を突き止めやすくなる」と語った。
『ホットペッパービューティー』でも、それぞれの課題について「なぜなぜ分析」で解決策を考え、「フロー効率最大化ができていない」「コーディングコスト増」「仕様が難しい部分がある」などの課題ごとにグルーピングし、「課題の仮説」と「検討される解決策」に整理している。
