開発現場で活用できる「AI人材」の育成方法
──「AI人材」を育成するための具体的なお取組みをお聞かせください。
加藤:AIへの取り組み事例の一つは、当社専用のAIチャットCASAIを独自開発したことです。当社は約4000社のベンダーと、約1万3000社のパートナーと取引があり、それら各社から日に数十万件もの商品の問い合わせがあります。その問い合わせ業務を効率化するために「CASAI」を開発しました。
社員に愛着を持ってもらうために親しみやすいキャラクターをつくり、社内ではCASAIくんと呼ばれています。CASAIくんにメールの回答をしてもらったり、FAQを作ってもらったりしてお客さまに渡したりするなど、オペレーション業務の簡素化に貢献しています。AIを活用する人材を育成するには、このようにAIに愛着を感じてもらい、AI活用を当たり前にする草の根的な活動は欠かせません。

また当社では2025年4月頃、SB C&S AI検証センターをオープンする予定です。ここではNVIDIAのGPUが搭載されたサーバを使って、本番に向けたAIサービスのPoCを行うことができます。
飯久保:草の根活動は大事ですね。そのほか組織面でいうと、DASAでは昨年からハイパフォーマンスデジタルオーガニゼーションが必要だと提唱しています。また、開発と運用とAIの掛け合わせも出てきています。それらを実装するのに必要な能力を育成するトレーニングサービスを提供しています。
小林:最終的には実装が大事ですからね。カサレアルでも、技術研修、プログラミング言語の研修を提供しています。また2023年度から、新人研修でも生成AIを活用するプログラムが始まっています。研修では自分でコードを書くことから始め、最後の総合演習のような項目で、生成AIに手伝ってもらいながらコードを生成することを体験していただいています。もちろん、お客さまの制約やルールによって研修の中身は変わっていきます。新人研修ではないAI関連の研修サービスの提供については、これから取り組んでいく段階です。
──最後にAI活用に悩むエンジニアの方にメッセージをお願いします。
加藤:実践から学ぶことがすべてです。オライリーメディアの創立者であるティム・オライリー氏が同社ブログに「生成AIで置き換えられるのはジュニアおよび中級レベルのプログラマーではない。新しいプログラミング ツールやパラダイムを受け入れず過去に固執するプログラマーである」と書いていました。このマインドを忘れずに業務に当たっていくといいと思います。
飯久保:アドバイスは3つ。1つは楽しむこと。やって楽しい、誰かに認められる、必要とされることを楽しむことです。2つ目は対話すること。同僚、お客さま、ユーザーと対話して一緒に価値を共創していくことです。3つ目は見極める。あくまでも出てくるのは機械が考えたこと。自分の価値観や正義感を持ってAIを使って正しい情報を見極めることです。
小林:数年後には必ずAI活用は当たり前になります。そこで、いろいろ試してみることが大事です。考え方を含めて同僚間で情報を共有しながら、どうすれば活用が定着するか。それを考えていくことも重要だと思います。