モノタロウはなぜ、AI駆動開発を取り入れたのか
モノタロウは製造業や工事業、自動車整備業など、現場で必要となる工具、部品、消耗品、事務用品などの間接資材をインターネットで販売する、大手EC事業者である。同社の特徴は、「商品点数は2300万点以上あり、さらに増えていること」と普川氏は語る。しかもコールセンター、商品採用、物流、マーケティング、データサイエンス、ITなど多くの業務とシステムを自社開発、自社運用している。「売上も年々増えており、15年連続増収を達成している」と普川氏は話す。

このように企業が成長する一方、「業務をどうスケールさせていくかは、社内では普遍的な課題となっていた」と普川氏は言う。また同社はデータドリブンな文化があることから、データの蓄積、活用の基盤もある。データサイエンティストも社内に約30人が在籍し、10年前から社内でアルゴリズムを開発するなど、データ活用についても積極的に取り組んでいたという。
同社が当時抱えていた課題は、主に2つあった。一つは、20年間にわたり開発を続けてきたシステムに蓄積された技術的負債を解消するため、モダナイゼーションの実施が不可欠だったこと。もう一つは、社員数の増加や組織規模の拡大に伴い、知識やノウハウが特定の個人に依存しがちになっていた点である。
そうした中、なぜAI駆動開発の導入に踏み切ったのか。
普川氏はAIについて、次のように語る。「AIは、インターネットのように、世の中に対して大きな変革をもたらす技術だと認識しています。さらに、一過性の流行ではなく、不可逆的な変化をもたらすものだと捉えていました」
この認識のもと、同社ではAI活用の基本方針として、「状況が落ち着いてから」「小さく始める」といった段階的なアプローチではなく、AIによる不可逆な変化が継続することを見据え、「一気に導入を進めるべき」と判断した、と普川氏は説明する。
ツールの導入に関しては、一定の予算枠を設けつつも、まずは試してみることを優先し、費用対効果は後で検証する方針を取った。これは、優れた活用ノウハウを組織に広げていくことの方が重要だと考え、トップダウンとボトムアップの両方から、組織全体への浸透を図った。LLMが急速な進化を続けることを前提とし、その恩恵を継続的に受けられる仕組みや体制の構築を進めたという。