HPC Dayで注目すべき3つの技術講演
今回のイベントは1日目がHPC、2日目はAIをテーマにセッションを展開。1日目のHPC Dayでは3つの技術講演を用意。技術講演1はエクセルソフトの宇崎裕太氏による「インテル ソフトウェア開発ツール:コンパイラーとツールのアップデート」。製品概要に加え、インテルソフトウェア開発ツールのバージョン2025に関する主な変更点、各コンパイラーと解析ツール、一部のライブラリーを対象にアップデートの詳細が紹介される。
インテルのソフトウェア開発ツールは、oneAPI(さまざまなアーキテクチャにおいて、高性能なアプリケーション開発を容易にする、オープンでスケーラブルなソフトウェア・スタック)に基づいており、「インテルが進めるoneAPIを知りたい」という人にとって、必聴のセッションだ。

例えばAI関連の処理ではGPUやAIアクセラレーターが使われることが多く、シミュレーションにおいても、CPUのみの単一アーキテクチャですべてのワークロードに対応するのは難しくなっている。そのため、「開発スタックの複雑さが増している」と竹田氏は話す。アーキテクチャごとに個別のプログラミングと開発ツールを用意し、学習する。またプラットフォームごとにコードを書き直す必要もあった。そのため開発コストや市場投入するまでの時間もかかっていたという。oneAPIは各種ハードウェアの違いを抽象化してこれらの問題を解決する。
「開発者はoneAPI のプログラミングモデルに従ったコードを一つ書くだけでさまざまな環境で動かすことができる」と竹田氏。現在、oneAPIはLinux Foundation傘下のマルチアーキテクチャ、マルチベンダーのアクセラレーター・ソフトウェア・エコシステムを構築するオープンな団体「Unified Acceleration(UXL)Foundation」のプロジェクトとして、仕様策定が行われている。元々インテルが主導していたこともあり、インテルは同団体の主要メンバーの1社。ヘテロジニアス・システムを開発ターゲットにしているエンジニアにとっても、見逃せないセッションだろう。
技術講演2では、「マルチプラットフォーム・プログラミングの現状と可能性」をテーマに、インテル関連のソフトウェア開発情報を発信している「iSUS」の編集長である菅原清文氏が登壇し、oneAPI環境でのCPU、iGPU、NVIDIA GPU、そしてAMD GPUを活用するSYCLによるプログラミングが紹介される。SYCLはクロノスグループが定義する、ヘテロジニアス・システム向けの並列プログラミングを可能とするためのオープンな標準仕様。ベンダー依存から解放されるだけではなく、「パフォーマンス的にも優れている」と竹田氏は言う。
インテルの子会社の一つである Codeplay Software 社が実施したベンチマークによると、NVIDIA GPU開発のネイティブツールであるCUDAで実装したものに匹敵するパフォーマンスが出たという。

「SYCLを使うメリットは他のハードウェアでも動かせるだけではなく、パフォーマンスもある程度担保できること」と竹田氏は言う。SYCLの利用事例を知りたいという人は、エクセルソフトの中村弘志氏の技術講演3「HPCコードにおけるSYCLの利用事例:OpenFDTD_SYCL」を聴講してほしい。同セッションでは、とあるコミュニティー・ユーザーの尽力により、オープンソースの電磁界シミュレーター・ソフトウェア「OpenFDTD」をSYCLに対応させた「OpenFDTD_SYCL」が公開され、NVIDIAのGPUに加え、インテルのGPUでも利用できるようになった。この取り組みを例に、HPC向けプログラムコードへSYCLを適用する方法が紹介されるという。
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