AIコーディングを全社的に導入。導入時の課題、得られたメリットとは?
──AIを活用した開発環境について具体的に教えてください。
全社に導入したのはCursorです。まずは私が複数のツールを選定しました。その後、少人数のチームでPoCを行い、使い勝手や生産性を検証しました。具体的には生産性がどのくらい向上したか、数字で表してもらって集計しました。7倍向上したという人もいれば、2倍と回答した人もいましたが、平均すると5倍という結果になりました。その結果をもとにマネージャーが集まる会で、全社導入について意見を聞き、展開することになりました。
──Cursorをどのように使っているのでしょうか。
Cursorはコード生成、AIコーディングに活用しています。Cursorのチャット画面に「こんな機能を作ってほしい」と要件を投げると、10数秒後にはその要件を満たすコードが返ってきます。従来、2日間かかっていた作業が、10秒ぐらいで返ってくる。この仕組みを使うことで、10倍以上、場合によっては50倍など桁違いの生産性向上が期待できます。
また、生成AIの活用で最も重視しているのは、セキュリティです。Cursorはオプトアウト(利用時に入力したデータを学習用データとして提供しないことを選択できる機能)を設定しています。お客様の個人情報がAIの学習に使われないよう、しっかり管理して活用しています。
──生成AIの活用でエンジニアの働き方は変わりましたか。
今はコーディングの大半はAIが担っているので、人間の役割はAIが出した成果物をチェックしたり、次にやるべきことを考えたりすることです。コーディングの負荷やストレスは減りましたが、ロジックやアルゴリズムを考えるなど、新規性やクリエイティブ性を要する時間が増えたと思います。
──AI活用を推進する上での難しさや課題はありますか。またあったとしたらそれをどう克服したのでしょうか。
AIコーディングを推進する上で、一番苦労したのは、取り組む意義やビジョンを説明し、皆に納得してもらうことです。「今はAIも嘘をつくこともあるかもしれないが、5年後、10年後にはAIコーディングによる開発速度が今の100倍になるはずだ」とビジョンを示すだけではなく、エンジニアとしてキャリアを築いていく上でも、身につけないと損をすると話しました。
このような具体的な話をすると同時に、活用方法のレクチャーもしました。現在、ジーニーの生成AIを活用したコーディング率はほぼ100%です。
しかし、Cursorを導入した当初は、Copilotと同様にコードの補完機能しか使っていませんでした。そこでエンジニア全員が参加する月に一度の「R&D全体会」で、チャットを使ってコードを生成する方法を共有しました。とにかく細かくいろいろな機能を共有することで、導入を進めていきました。今はまだ個人の使い方の上達によって生産性にバラツキはありますが、その差を埋めるために、全体の会議の場を使って情報共有を図っています。