成熟期を迎えたとされるWebテクノロジーにおいて、これから勝負すべきポイントは、ずばり「使う人の使いやすさ」。これは、単純に操作性だけではなく、楽しさや見やすさなど感覚的な要素も含んでおり、それらを実現するリッチクライアントアプリケーションに大きな期待が寄せられています。さらにそのプラットフォームとして「WPF(Windows Presentation Foundation)」が注目されているのは、読者の皆さんならご存知のはず。しかしWPFに対し、どのようにアプローチしてよいのか、躊躇している方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、世界初のWPFのユーザインターフェースコンポーネント「NetAdvantage for WPF」を提供するインフラジスティックスを訪ね、デベロッパーサポートエンジニアの池原大然氏に、今後のリッチクライアントアプリケーションの方向性と同社の戦略、および「NetAdvantage for WPF」についてお話をうかがいました。
インフラジスティックスの前身であるProtoView Development CorporationとSheridan Software Systemsは、1990年代初頭よりプレゼンテーションに特化したコンポーネントを開発してきました。世界がリッチクライアントに注目し始める以前から、いかにインターフェイスを魅力的でわかりやすく、訴求力に富むものにするかという課題に対して積極的に取り組んでいたわけです。
一方、世の中では「リッチさ」を実現に手間のかかるものとして捉える傾向にあり、これまでは「見た目の楽しさ」を追求したコンテンツや、一部のハイコストなシステムに採用されることが多かったように思われます。しかし、そうした恩恵は、決してアートや一部のシステムだけが享受するものではないという考え方が、ようやく浸透してきました。見やすさや訴求力といったものが、「作業効率の向上」や「意思決定の迅速化」「製品の魅力」といったベネフィットに直結することに気付き、実現するための環境が整い始めたというところでしょう。事実、日常的に使われる業務システムやWebサイトといったさまざまな場面で、リッチクライアントアプリケーションへの期待が高まっています。
しかしながら、たとえばWindowsでリッチなインターフェイスの業務システムを構築しようとした場合、一定のコンポーネントは用意されているのですが、決して十分ではありません。かといって、カスタムコードを書くのも大変な作業です。そこで、簡便かつスピーディにカスタマイズするツールが求められ、そこに弊社の「NetAdvantage for WPF」のニーズがあるわけです。特に最近になって急に、多くの方々の関心や期待が高まりつつあることがひしひしと感じられ、そこに当社としてどのように応えていくかが課題となっていました。
そこで、その応えの1つとして2008年1月にNetAdvantage製品のユーザーを対象としたコミュニティサイトを開設しました。ここでは、これまでの質疑応答やベストプラクティスに関する記事がまとめられているだけでなく、ビデオを用いたスピーディな理解をめざしたWebセミナーなどのコンテンツが用意され、自発的なイベントやユーザーグループなども生まれつつあります。
特にぜひご覧いただきたいのは、3つのレベルから成る「学習事例」です。レベル1は機能を一つひとつ紹介する「機能ブラウザ」、レベル2はそれらを組み合わせた動きを見せる「ショーケースサンプル」、そしてレベル3では「ソリューション事例」を紹介します。その第一弾として、書店を想定したビジネスシナリオに基づく「Tangerine」と名付けたサンプルアプリケーションを掲載しています。ここでは実際にその動きを体験していただけるだけでなく、ソースそのものもダウンロードすることができます。
これらのコンテンツやユーザー同士の交流を通して、「NetAdvantage for WPF」の有用性や可能性について触れ、理解を深めていただければと考えています。
コンセプトをシンプルに申し上げれば、「スピーディに、簡単に、訴求力のあるアプリケーション構築を支援すること」といえるでしょうか。たとえば、人気のコンポーネントとして「UltraWebGrid」「UltraWinGrid」があり、Visual Studioで用意されているグリッドのコンポーネントでは足りない部分を補足します。列移動やグループ化といった、通常コードに手を入れなくてはならない部分も、このコンポーネントを使えば、プロパティの設定だけでカスタマイズが可能です。
また、「NetAdvantage for .NET」には、初級者向けにウィザードが用意されており、それを使うことで簡単に機能の設定が可能になっています。その際にも必ずプロパティが表示され、どのソースコードに対して作業しているのかが明らかです。また、コンポーネントのすべてのソースコードは開示されていて、その効用は「セキュリティ」や「デバッグ」においてだけでなく、「学習」においても大きいといえるでしょう。つまり、使い続けていただくことで、ソースコードや全体的な構成についての学習が自然にできるというわけです。
こうしたソースコード開示の背景には、「常に次の高みをめざして進んでいる」という先駆者としての自負と心意気があると思っていただければ(笑)。人の目はどんどん肥えていくものです。より使いやすく魅力のあるものが求められるのは市場の摂理。どんな表現も陳腐化していくことは否めません。ソースコードを開示した時には、弊社は次を実現していく。その積み重ねによって、多くのユーザー方々が実現しようとしていることを製品やサービスを通じて支援していきたいと考えています。
先駆者として知識や経験を蓄積し、製品に反映させてきた結果、「NetAdvantage シリーズ」が10年間でほぼ全てのフォーチューン 2000 企業に採用されるなど、高い評価を得てきました。世界各国で受賞した220を越える賞(読者選定を含む)は、その裏付けともいえるでしょう。なおソースが公開されていることもあり、セキュリティにナーバスな金融やインフラ系の企業にも多くの顧客がいます。
このように常に世界にて市場をリードしてきましたが、まだまだ知名度は十分とはいえません。これまで代理店を通じて、日本の皆さんには紹介を行ってきたのですが、さらに多くの方に知っていただき、また日本に適したサポートができるようにインフラジスティックス・ジャパンを立ち上げたというわけです。
先駆者としてのアドバンテージは、製品の機能やクオリティはもとより、価格優位性においても十分に発揮されています。弊社の製品は、基本的にすべてのものを含む「スイート」という形で提供されています。つまり、他社製品であれば一部のコンポーネントの購入額で、ほぼトータルなサービスが受けられるという仕組みになっているわけです。
こうした利用者に対してのトータルなサービスという発想に基づいているのは、先述のコミュニティも同様です。つまり、最大限に活用して効果を上げてもらいたいという気持ちが込められた「ギフト」にあたるといっても差し支えないでしょう。ぜひ、この「ギフト」を受け取っていただき、WFPの可能性に触れていただきたいですね。