「Agent HQ」構想とデータレジデンシーの提供
冒頭、GitHub Japanの角田賢治氏は、日本国内のGitHubユーザーアカウント数が450万人を突破し、直近1年間で100万アカウント増加したことを報告した。この数字は、職業エンジニアのみならず、学生やAIツールを活用するノンエンジニア層のIDも含まれるものであり、日本のデジタル活用人口の裾野が急速に拡大していることを示唆している。
GitHub アジア太平洋地域担当 バイスプレジデントのシャリーン・ネイピア氏は、現在のソフトウェア開発現場において複数のAIモデルやエージェントが乱立し、ツール間の分断(フラグメンテーション)が課題になっていると指摘した。これに対しGitHubは、開発者がAnthropic、Google、OpenAIなど好みのコーディングエージェントに関して、単一のインターフェースから利用、統合管理できる環境「GitHub Agent HQ」を推進する。
「Agent HQ」の構成要素として、ネイピア氏は以下の具体的な新機能を挙げた。
- Mission Control:開発者が複数のAIエージェントの作業を一元的に可視化・制御・承認できる新しいインターフェース。
- Control Plane:管理者向け機能として、エージェントやモデル全体にわたるAIポリシーの管理、監査ログの取得、アクセスコントロールを提供し、ガバナンスを強化する。
- Copilot Metrics Dashboard:組織内でのAI導入状況やそのインパクトを高度に可視化するためのダッシュボード機能。
- Code Quality/Copilot Code Review:コードの信頼性と保守性を担保するため、開発者とリアルタイムで連携するレビュー機能(プレビュー提供)。
また、Copilotの連携先も拡大しており、SlackやLinearに加え、Jira、Raycast、Teams、Azure Boardsといったツールとの統合、およびVS Codeとのより深い連携が進められている。これらの機能群により、開発者の選択肢を狭めることなく、AI時代に求められる秩序とガバナンスを提供するのが狙いだ。
さらに、日本のエンタープライズ企業向けの機能として、「GitHub Enterprise Cloud データレジデンシー」の提供がアナウンスされた。これは、ソースコードやリポジトリデータの保管場所を日本国内に指定できる機能であり、2026年1月からの提供開始を予定している。
本機能はエンタープライズグレードのMicrosoft Azureインフラストラクチャ上で稼働し、データの転送中および保存中における保護を実現する。これにより、金融機関や通信事業者など、各地域の規制により厳格なデータ所在要件を持つ業界であっても、データの保管場所を制御しながらグローバル水準のクラウド環境を利用可能になる。GitHubはこれを、日本企業がレガシーシステムから脱却し、クラウド移行とモダナイゼーションを安全に加速させるための重要な施策と位置づけている。
