Copilotのコード採用率は25%、API活用で管理を自動化
NTTドコモグループでは2023年3月からGitHub Copilot Businessを導入しており、現在の利用者数は3,647名に達している。利用状況を分析すると、週末を除き毎日約1,000名のユーザーがアクティブに利用しており、開発者の日常的なツールとして定着していることがわかる。利用モードとしては、チャット形式で質問する「Askモード」と、自律的にタスクをこなす「Agentモード」が主に使われており、特に直近ではAgentモードの利用が拡大している点は、GitHubが提唱するエージェント活用の方向性と合致している。
特筆すべきは、Copilotが提案したコードの採用率(Acceptance Rate)である。森谷氏によると、直近1ヵ月で毎日約3万件のコード提案があり、そのうち約25%がそのまま採用されているという。この「25%」という数字について森谷氏は、一発で正解を出すのではなくCopilotとの対話を繰り返しながらコードを洗練させていくプロセスを考慮すれば、最終的に採用される割合として非常に高い水準であり、実用的な支援が行われている証左だと評価した。
数千人規模のユーザーに対し、手動でライセンス管理を行うのは現実的ではないため、CCoEではAPIを活用した管理の自動化を徹底している。その象徴的な取り組みが「休眠ユーザーの自動削除」だ。ライセンス費用の無駄を省くため、過去3カ月間GitHubおよびGitHub Copilotの利用履歴がないユーザーを自動的に抽出し、削除対象リストを作成・削除する仕組みを構築している。この際、GitHub本体の利用履歴だけでなく、GitHub Copilotの利用履歴もAPIで取得し、「Copilotだけを使っているユーザー」を誤って削除しないよう配慮されている点が運用上の工夫である。
また、こうした利用状況や削除対象者の情報は、社内向けのダッシュボードで可視化されている。ユーザー自身や管理職が現在のステータスや従量課金サービスの利用量(GitHub Actions等)を随時確認できるようにすることで、透明性を確保している。問い合わせ対応についてもZendeskに集約し、チケットをグループ内で公開することで、過去の類似事例を参照した自己解決(ナレッジベース化)を促している。
森谷氏は、これまでの取り組みを通じて「GitHubを使うことで、リリースサイクルを含めあらゆる開発プロセスが『速く』なった」と手応えを語った。今後も最新技術の利用とガバナンスの両立を目指し、特に進化の著しいCopilotのAgent機能の活用を深めていく方針だ。日本のユーザーアカウント数の増加、データレジデンシーによるエンタープライズ対応の強化、そしてNTTドコモのような大規模組織における実践知の蓄積。これらの要素は、日本のソフトウェア開発が単なるツールの導入フェーズを超え、組織的な生産性向上のための基盤として定着しつつあることを示している。
