日本Ruby会議2008 初日(注1)は、日本Rubyの会/東京大学のささだこういち氏による、『現在の、そしてこれからのRubyVM開発』で幕を開けた。
この記事では、日本Ruby会議2008から次の5つのセッションを中心に、日本Ruby会議2008で示された現在のRuby、将来のRubyについてまとめてみたい。
- 『現在の、そしてこれらからのRubyVM開発』(ささだこういち)
- 『JRuby:Ready for Action』(Charles Nutter)
- 『The Magic of Rubinius』(Evan Phoenix)
- 『Ruby《を》教えてるんじゃない、Ruby《で》教えてるんだってば』(増原英彦)
- 『Rails症候群の研究』(前田修吾)
なお、本記事は必ずしもセッションの内容をそのまま書いているわけではない点をお断りしておく。
本記事では、セッションの限られた時間では語りつくせなかった点や、意図の掴みにくい点について、より掘り下げた内容をお伝えするため、ささだ氏と増原氏にお願いして懇親会終了後にセッションの意図する点についてお話を伺い、セッションの内容を補完している。また、筆者がささだ、増原両氏の意図するところを誤って理解した結果の記述を含む可能性についてもお断りしておく。これらの点については、気づき次第適宜修正することについてもご了承いただきたい。
ご多忙のところ、本稿のために快くインタビューに応じてくださった ささだ、増原両氏に感謝する。
多様性は善
メインセッションに先立って、日本Rubyの会の高橋征義会長から、開会の挨拶が行われた。
高橋氏は、最初にRubyのモットーである『多様性は善』(1999年に中村氏がJUS主催のセッションをレポートした「Opening session report: Ruby Workshop in 9/4を参照)を日本Ruby会議2008のテーマとして掲げた。
なお、まつもと氏が、Perlと作者のラリー・ウォール氏を尊敬していることは、2日目のセッションで田中氏が触れていた。
そして、高橋氏は、それらのインスタンスとして、日本Ruby会議2008における2つの実験
- 0日目という、ビジネス寄りに特化した発表を平日に設けたこと
- 2つの会場を使って同時に複数のセッションを設けたこと
を挙げた。確かにこれらは、従来の技術寄りのオープンソース系カンファレンスでは見られない(注2)特徴である。
また、東京ではない開催地、無地のノベルティの配布(エコバッグとタンブラーに、各自で好みのスタンプを利用してブランディングする)、といった新しい方法、メインスクリーンの脇にircのログを流すという(これは必ずしも新しい試みではない)並列性なども、「多様性は善」のインスタンス化と考えられる。