9月13日、都内で「エンジニアの未来サミット」(主催:技術評論社)が開催された。「泥のように働く」必要があると言われたIT業界のネガティブなイメージに対して、IT業界で働くエンジニアやアルファギークと呼ばれる人達が業界の魅力を語ると同時に、今後エンジニアはどうしていくべきか意見を交わした。
「アルファギーク vs. 学生-エンジニア業界の過去・現在・未来,そして期待と現実」と題されたパネルディスカッションでは、小飼弾氏、ひがやすを氏、よしおかひろたか氏、谷口公一氏、伊藤直也氏らエンジニアと、田村健太郎氏、源馬照明氏、益子謙介氏、新井貴晴氏ら学生による討論が行われた。
泥のように働くことについて
まず、このイベントの発端となった「10年間、泥のように働く」ことについて意見が交わされた。
学生からは「エンジニアに限らず、他の業種でも一生懸命努力する必要はあると思う」「IT業界で働く際も、他業界と同様に下積みが必要だが、IT業界そのものが最近注目されてきたことで、そういった部分がクローズアップされただけでは」と、「働く以上、何をやるにしても一定の努力は必要だ」と冷静な意見が出された。
エンジニア側からも「元の記事が泥を強調しているようなところがあった」という指摘がなされた。「発言者が言いたかったのは技術力があっても、例えば金融畑にいけば金融の業務知識を知る必要があり、その知識を獲得する下積み期間が必要なんだよ、ということだと思う。また、この発言を聞いていたには若い人が多く、若い人は自分の力を信じているので『早く働かせろ』『早く評価しろ』という思いがあり、すれ違いが起きたのでは」(伊藤氏)。
Web開発の場合、入社した人が最初から何でもできるかというと、意外とできないものであり、「あながち間違いではない」と伊藤氏は言う。「多くの人と働くことを覚えなければいけないし、個人で作るものと企業で作るのではいろいろ違う。そういうことを覚えていく必要がある」と、技術力以外の面で習得しなければいけない知識があることを説明した。
一方で「10年も泥の中にいる必要があるのか?」という疑問もある。特にIT業界では「エンジニア35歳定年説」が常につきまとう。これについて「例えば大学を卒業し、10年間下積みしていると32歳。そこから3年間しか輝けないのか?」と弾氏が問いかけると、「そんなことはない」とひが氏は言う。
「そもそも私が外に出てこれたのは35歳。ただ、一般に言われるのは年齢に応じて管理職をやらないといけないからというのがあるかな」と、企業側の事情も付け加えた。しかし、「管理職でなくとも、自分の仕事に付加価値がつけられればいいと思う」と、抜け道がないわけでもないと述べた。
プログラマーであり続けるために
ひが氏が述べたように、IT業界、特にSIerの場合、30代に入ったあたりからマネージャー職への転換が求められることが多い。入社してからずっとプログラムを書いており、これからもプログラミングをしていきたい技術者にとっては大きな問題となってしまう。
これについて、よしおか氏は「今日の結論になってしまうが、自分の人生は自分で決めろと。やろうと思えばプログラマーのままでいられる」とし、何歳になってもプログラミングの最前線で活躍するために、オープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトへの参加を勧めた。「若い人に言いたいのは、ソフトウェアの開発に対する経験値をあげるならOSSに参加するのがすごく良いということ。大規模で多くの人と1つのものを作り上げることができる。学生の時からOSSにかかわって、経験を積むという積極的な戦略だってある」。
ひが氏も企業に勤めながらOSSにかかわるメリットことについて述べ、「SIerにいて、プログラムが好き。だけど、マネージャーになって…、というパスが決まっていることが気に入らなくて、変えたいなと思っている人。そういう人たちは、OSSを書くなりして、世の中や会社に認めてもらうことが大事。まずはその一歩を踏み出すこと」と、会社以外の評価軸を使って、プログラマーとしての地位を確立する道筋を紹介した。