トップダウンアプローチ手法
さて、ここまではアプリケーションダイアグラムを作成して、システムダイアグラムを作成するという手順で解説をしてきました。より小さいアプリケーションの定義から始まり、より大きいシステムの定義に作業が遷移していくため、これを便宜上、ボトムアップアプローチとしておきましょう。Visual Studio 2005 Team Edition for Software Architects(以下、VSTA)では、この順番でしかデザイン作業を進めることができず、この手順が王道となっていました。しかし、VSTS-AEではこの部分が機能強化され、アプリケーションダイアグラムがなくてもシステムデザイナを使って作業を進めることができるようになっています。より大きなシステムを考えながら、その中に含まれるより小さなアプリケーションも定義していけるため、こちらを便宜上トップダウンアプローチとしておきます。
ボトムアップアプローチの場合、アプリケーションシステムのデザインを行う際には、システムビューと言うところからアプリケーションやシステムをドラッグ&ドロップしましたが、これらはすべて定義済みのアプリケーションやアプリケーションシステムを利用していました。トップダウンアプローチの場合、定義済みのものは存在しないため、システムビューではなく、ツールボックスから直接ドラッグ&ドロップを行います。システムデザイナを開いているときには、図13に示すようにツールボックス上にシステムというカテゴリが表示され、そこにある「BlankSystem」や「.NETWebService System」を利用することで、アプリケーションシステムの中にアプリケーションシステムを配置するといったことも問題なく行えるようになっています。
削除について
少し、閑話休題という感じですが、モデリング作業をしていて、間違って配置してしまったものなどを削除しようとしたら、あれ?となったということはなかったでしょうか。削除にもいろいろありますが、ちょっとやっかいなので解説しておきます。
まずは、システムデザイナ上でアプリケーションまたはアプリケーションシステムを削除しようとした場合、図の上からはすんなり削除できたはずです。最もアプリケーションやファイルそのものが消えたわけではありませんが。間違って追加してしまったシステムダイアグラムのファイルをソリューションエクスプローラから削除しようとした場合、図14に示すようなエラーが表示されたかもしれません。
エラーの示す通りなのですが、システムデザイナでファイルを開いているときには削除ができません。慌てずにエディタ上の対象ファイルを閉じると削除ができます。
ですが、開いているはずないと思っていたものが削除できない場合もあります。例えば図12に示すようなシステムダイアグラムを作成している場合がこれにあたります。この場合、図12に含まれるそれぞれのアプリケーションシステムを定義しているシステムダイアグラムのファイルも勝手に開いています。また、図8に示すようなシステムダイアグラムを作成している場合も同様です。この場合は、アプリケーションを定義してあるアプリケーションダイアグラムのファイルが勝手に開きます。
これらは、現在モデリングしている対象が他のファイルに定義してあるものと密接に連携し、変更が即座に反映されるような仕組みが用意されているためです。変更の同期というメリットは大きいですが、そのために削除が直感的に行えない部分があるという制約もあるということを理解しておいてください。ここを押さえておけば、削除がうまく行かずに悩むという心配もなくなるはずです。