はじめに
もうご存じかと思いますが、AppleはiPhone SDKを使用する開発者に義務付けていた秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement: NDA)を撤廃しました。現在、開発者はSDKについて自由に議論し、自分の経験を仲間の開発者と共有することができます。Windows Mobileや最近のAndroidプラットフォームを中心に活動しているモバイル開発者にとって、今後取り組むべき特に重要なプラットフォームの1つがiPhoneであることは間違いありません。
Windows MobileやAndroidプラットフォームでは構文的によく似たオブジェクト指向言語(Windows MobileではVB.NETとC#、AndroidではJava)を使いますが、iPhone SDKではSmalltalk風のメッセージング機構が付加された拡張版C言語であるObjective-Cを使う必要があります。Objective-Cはオブジェクト指向言語ですが、その構文はJavaやC#とはまるで似ていません。これは、特にMac OS Xプラットフォームを初めて使う開発者にとって習得上の大きな障壁となります。
筆者のように他のプラットフォームから移行した開発者にとって、iPhone開発で使われる大量の概念は今まで経験したことがないものであり、初心者は大きなフラストレーションを感じるかもしれません(実際、私もそうでした)。iPhoneプログラミングを習得する最もよい方法は、ともかく手を動かしてコーディングを開始することです。そこで、iPhoneプログラミングに関するこの新しいシリーズでは、iPhoneアプリケーション開発に初めて取り組む読者を対象に、この新たな世界への道筋を示すことにします。シリーズ初回の本稿では、SDKの使い方を学び、簡単なiPhoneアプリケーションを作成し、それをiPhoneシミュレータに配備します。この作業の基礎となるフレームワークについて深く理解する必要はありません。このフレームワークについては、次回以降の記事で徹底的に探求します。
用意はいいですか? では先に進みましょう!
iPhone開発に必要なもの
iPhoneプログラミングを開始するには、次のものが必要です。
- Mac OS X Leopard v10.5.4の稼働するIntel Macコンピュータ。
- iPhone SDK for iPhone OS 2.1。ここからダウンロードできます。このiPhone SDKには、iPhoneアプリケーションの開発に必要なすべてのツールとユーティリティが含まれています。特に、Xcode 3.1(統合開発環境)と、実際の機器がなくてもアプリケーションをテストできるようにするiPhoneシミュレータが同梱されています。
- 不屈の努力!
Hello Worldアプリケーションの作成
Xcodeを起動します。Spotlightで「Xcode」と入力すれば、Xcodeがすぐ起動し、開始画面が表示されます。
新規のiPhoneプロジェクトを作成するには、[File]→[New Project]を選択します。図1を見てわかるように、Xcodeではさまざまなプロジェクトを作成できます。これはiPhone OSアプリケーションとMac OS Xアプリケーションの2つのカテゴリに分かれます。もちろん本稿では、iPhoneアプリケーションのみを扱います。[iPhone OS]の下の[Application]項目をクリックすると、iPhoneアプリケーションの開発に使用できる各種のテンプレートが表示されます。
現段階では、作成できるiPhoneアプリケーションの種類がかなりあることを押さえておけば十分です。[View-Based Application]テンプレートを選択し、[Choose]をクリックします。
プロジェクトの名前を「HelloDevX」とし、[Save]をクリックします。選択したテンプレートに対応するプロジェクトが作成されます。図2は、プロジェクトを構成する各種のファイルとフォルダです。
Xcodeの左側のパネルにはプロジェクトを構成するさまざまなグループが示されます。個々のグループを展開すると、そのグループ(およびフォルダ)に含まれるファイルを見ることができます。右側のパネルには左側のパネルで選択したグループ(またはフォルダ)に含まれるファイルが示されます。特定のファイルを編集するには、ファイルを選択します。右側のパネルの下部にあるエディタにファイルの内容が表示され、編集できるようになります。別のウィンドウで編集したければ、ファイルをダブルクリックします。これで編集用の新しいウィンドウが開きます。
画面上部はツールバー領域です。この領域には、開発作業でよく使うツールバーメニュー項目が置かれています。ツールバー領域をカスタマイズして、よく使う項目を追加できます。試しに、[View]→[Customize Toolbar]を選択してください。ドロップダウンウィンドウが表示されます。
ツールバーにドラッグアンドドロップするだけで項目を追加できます。図3は、ツールバーに[Active Target]項目を追加した状態を示しています。
[Active Target]項目では、アプリケーションを実際の機器に配備するのか、それともiPhoneシミュレータに配備するのかを選択できます。