4. 情報の解像度を高める
4番目のヒントは、プレゼンテーション資料における情報の解像度を高めることです。情報の解像度とは、1ページで伝達できる情報の量です。解像度を高めていくと、使用するインクの量は最小限で済むようになります。
Edward Tufteのセミナーに参加しておもしろかったことの1つは、リンカーンがゲティスバーグの演説にPowerPointを使用したらどうなっていたかという話です。これは、データと情報の提供に関するアンチパターンの好例であり、情報の解像度を下げることのマイナス面をよく示しています。この方法が失敗する理由は、人間の心は、PowerPointの典型的なページ-1ページあたり6項目のリストと、Tufteが「チャートジャンク」と評する陳腐なグラフィックを含んだ-などが伝える内容よりもはるかに多くのことを吸収できるからです。
私がリーガルサイズの用紙1ページにまとめて成功した理由の1つは、聞き手となる重役が、重要な情報をすばやく把握し、その背後にある詳細についてもっと知りたいと望んだことにあります。この資料だけで、計画立案プロセスの全体的なコンテキストと、それに関連する多くの詳細を伝えることができたのです。そのときはまだ理解していませんでしたが、この資料の情報解像度は、80ページのスライドよりはるかに高かったことになります。
私が最初にこの1ページの要約形式にたどり着いたのは、ただの偶然でした。今では再利用可能なパターンとして定着し、アーキテクチャの観点、参照アーキテクチャ、役割と責務、ソリューションの連続性などを伝えるときに活用しています。私のオフィスに来ていただければ、私がアーキテクチャ情報の説明に使用している多くのダイアグラムをご覧いただけます。ダイアグラムの種類はさまざまですが、関連するアーキテクチャ成果物の縮小版サムネイルを作成し、これらのグラフィックとテキストを組み合わせることで、それぞれのストーリーを分かりやすく示すようになっており、聞き手にとっての情報解像度を高めています。
5. 普遍的な枠組みを使用してデータを示す
5番目のヒントは、データを普遍的な枠組みで示すことです。想定される聞き手が同じような情報を繰り返し参照する必要がある場合、可能な限り簡単に情報を解釈できるようにすることが重要です。
私が普段使用している普遍的な枠組みのパターンは、n層アーキテクチャの概念図を、同じ階層と背景色で示すというものです。聞き手がプレゼンテーション、サービス、コンポーネント、リソースという階層にいったん慣れてしまえば、表現されているアプリケーションとその変更方法をいっそう簡単に理解できるようになります。最初のプレゼンテーションが済むと、聞き手は、この方法で表されているアプリケーションの背後にある階層とアーキテクチャの概念を理解するようになります。私がアーキテクチャの計画立案を示したときに使った1ページの図には、n層の階層化された図を縮小したものが2つ含まれていました。聞き手の重役は、そこに示されているものを一目見て理解しました。
特定の種類のアーキテクチャの図を汎用的枠組みで表すと、アーキテクトの独創性が阻害されると思われるかもしれませんが、私はそうは思いません。むしろ、アーキテクトは、色や図の形式をいじり回すことに余計な神経を使わず、短期・長期のビジネスニーズを満たす最善のソリューションの全体像を考え出すことに想像力を集中できると思います。とはいえ、いわゆる「汎用的」な図が問題領域やソリューションの表現にあまり適していない場合もあります。そのような場合は、別の形式をしてもまったくかまいません。
6. 小さな並列を使用する
6番目のヒントは、小さな並列を使用することです。小さな並列とは、オブジェクトまたはオブジェクトセットに関する変更を視覚的に示した一連の小さい画像であり、大抵は1ページにまとめて提示します。
アーキテクトの作業の一部は、時間の経過とともにシステムをどう発展させるかについての計画を検討し、立案することです。これには固有の問題があります。時間という概念を加えると、発展の段階を聞き手に理解させるためのアーキテクチャ図を作ることが難しくなります。
この問題は、小さな並列を使用することで解決できます。アーキテクチャを計画立案するときは、現在の状態、将来の状態、そしてシステムの移行計画を示す必要があります。各時点での様子は、前に説明したn層の階層化された汎用的枠組みを使用して表します。次に、これらの図を縮小することで、提案する移行を1ページで簡単に理解できるようにします。
私が計画立案について重役と話し合ったときは、小さな並列という手法も、それをソフトウェアアーキテクチャのコンテキストに適用する方法についても、まだ知りませんでした。80ページに及ぶ移行計画シナリオのページをめくりながら説明したものです。アーキテクチャ移行計画を1ページで示すために小さな並列を使い始めたのは最近のことです。この方法を使用すると、業務部門やIT部門の関係者の理解は驚くほど促進されます。これは、時間経過による変化を1ページで視覚的に把握でき、プロジェクトを実行することで古いシステムがどのように終焉を迎えるのかを理解できるためです。
7. 内容が何より重要であることを理解する
7番目のヒントは、何よりも大事なのは内容であるということです。内容がお粗末では、他のヒントなどどうでもよくなります。
聞き手は情報の消費者という役割を担っています。聞き手が質問したり、参考資料を確認したり、詳しい補足情報を参照したりするなかで、矛盾や根拠のない結論が見つかった場合には、メッセージは信用を失い、話し手は信頼されなくなります。外見だけ取り繕って内容が空疎なプレゼンテーションより、洗練されていなくても内容が優れたプレゼンテーションの方が、よい結果が得られます。