2011年上半期に正式リリース予定とされる次期バージョンのFlash BuilderおよびFlex SDKでは、Androidをはじめとしたモバイル向けのAIRアプリケーション開発機能が大幅に強化されるという。アドビシステムズの轟 啓介氏は、実際にそれらのプレビュー版を使いながら、従来のAndroidアプリケーション開発における課題を解決するFlexフレームワークの新機能を中心にプレゼンテーションを行った。
プラットフォームを拡充し、モバイル対応強化を図ったAdobe AIR
アドビシステムズでは、Adobe AIRを「クロスプラットフォームを実現するアプリケーションの実行環境(ランタイム)と開発キット(SDK)」と位置づけている。2008年のファーストリリース以来、対応プラットフォームを拡充し、最新版のAdobe AIR 2.5では、Windows、Mac、Linuxに加えて、AndroidやiOS、BlackBerry Tablet OSなどをサポート。さらには、今後市場に投入されるSamsungの「Smart TV」にも搭載される予定となっている。
アドビシステムズの轟 啓介氏は、「中でも特に、Androidプラットフォームへの対応は『AIR for Android』として大幅に強化されている」と強調する。たとえば、Adobe AIR 2.5では、加速度センサー、カメラ、位置情報、マルチタッチ、ジェスチャーなど、Androidで利用できるさまざまなAPIを用意。また、AIR for Androidアプリケーションの雛形をウィザード形式で生成できる「Adobe AIR Launchpad」や、Android向けのFlex/AIRサンプル集アプリ「Tour de Mobile Flex」などの開発支援ツールも無償で提供される。
そして、AIRアプリケーションの開発環境であるFlexフレームワークについても、次期バージョンのFlash Builder(コードネーム“Burrito”)およびFlex SDK(コードネーム“Hero”)では、Androidをはじめとしたスマートフォンなどのモバイル向けアプリケーション開発のための機能が大幅に強化されるという。「これらの正式リリースは2011年上半期」(轟氏)とのことだが、プレビュー版はすでにAdobe Labsにて公開されている。
「この新しいFlexフレームワークで、Androidアプリケーションの開発がいかに効率よく行えるか、ぜひ体験していただきたい」と轟氏は語り、続いて、実機でのデモを交えながら、BurritoおよびHeroの代表的な特徴を紹介した。
Androidアプリケーション開発を大幅に効率化するFlexフレームワーク
Flexフレームワークでは、Flex 4よりコンポーネントの「見た目」と「ロジック」を分離し、コアコンポーネントのソースコードを修正することなく、UIを柔軟に変更することが可能となっている。こうしたアーキテクチャをベースに、モバイル向けの機能として、デフォルトでタッチ操作に最適なサイズやスワイプなどのジェスチャーに対応したモバイル用スキンを豊富に用意。これにより、UIの実装が大幅に省力化されるという。
また、モバイルアプリケーションは1画面あたりの情報量が少ないため、必然的に画面遷移が多くなるが、一方では限られたメモリを圧迫しないように管理しなければならない。こうした画面遷移のコントロールは非常に手がかかるポイントだが、「それをフレームワークに任せることができるのも、Flexのメリット」と、轟氏は説明する。
「Flexモバイルアプリケーションは、1つ1つの画面をViewコンポーネントとし、Viewのスタックで構成される。別の画面(View)に遷移する際には元のViewは破棄されるが、中の情報(data)はViewのスタックをコントロールするViewNavigatorによって自動保存(キャッシュ)されるため、メモリ使用量を最小限に抑えながら、必要な情報を保持した状態で画面遷移させることができる」(轟氏)
ほかにも、縦(portrait)・横(landscape)の画面向きに応じて自動的に再配置する画面レイアウトなど、Androidアプリケーション開発に有効な機能について説明した後、轟氏は技術情報入手先として、アドビシステムズのWebサイトで公開しているチュートリアルや、「AIR/Flash for Android Group」「Flex User Group」などのコミュニティを紹介。
「“Burrito”“Hero”の正式版リリースは数か月後。今からチュートリアルなどを参考にプレビュー版を試していただき、正式版リリース後には、面白いアプリケーションをどんどん開発してほしい」と最後に述べ、セッションを結んだ。