「プロトタイピング開発」への取り組み発表とパネルディスカッション
プロトタイピング開発は、プランナー、デザイナー、エンジニア間でのコミュニケーションを円滑にし、チームの意志決定プロセスを激変させる開発手法として、注目度が高まっています。勉強会では前半に、クックパッド、スタンダード、グリー、グッドパッチの4社から招かれたスピーカーが、各社のプロトタイピングへの取り組みを発表。後半に、スピーカー4名にモデレータ1名が加わってのパネルディスカッションが行われました。
発表1:チーム開発におけるkeynoteを使ったプロトタイピング
最初に登壇したのは、クックパッドの元山和之氏です。デザイナーとしてiOSリニューアルなどに関わっているという元山氏は、Mac用のプレゼンテーションソフト「Keynote」を使ったプロトタイピング手法を紹介しました。
元山氏は発表の中で、プロトタイピングをこう定義しています。
「プロトタイピングとは、製品やサービスを作る前に、早期に完成系に近い試作品を作って検証などを行うことだと思っています。目的は、時間およびコストを削減することと、ユーザーを理解すること。できるだけ早い段階で素早く作り、課題を洗い出して製品の精度を高めていくことが重要です」(元山氏)
つまり、プロトタイピング開発の要点は、実際の開発に入る前に問題点を見つけ、最短で製品の完成形を目指すこと。書く必要がなかったコードを書いてスクラップ&ビルドするのではなく、その前段階でスクラップ&ビルドするのがねらいです。
また、プロトタイピング開発による実際の利点は、「思考」「共有」「検証」の3つがあると元山氏はいいます。
「プロトタイピングは目に見えるものを作るので思考を重ねやすく、チームで共有することも容易。そして、それを(製品を作る前に製品に課題がないかを)検証することができます」(元山氏)
とはいえ、「スケッチを手で描いてペーパープロトを作ることもできるが、プランナーもエンジニアも誰でも描くのは得意ではありませんし、PhotoshopやSketchも非デザイナーが使うのは難しい」(元山氏)という現実的な壁が立ちはだかります。そこで元山氏が行うようになったのが、Keynoteを使ってアプリのプロトタイピングを行うこと。Keynoteならプランナーなども抵抗なく使えるからだそうです。
さらに、Keynoteを使うことにはもう1つ利点があると元山氏はいいます。
「プロトタイピング開発では、実際に目で見て動きなどを確認する必要がありますが、Keynoteにはトランジションが入っていて、モーダルやプッシュなどの動きも簡単につけられます」(元山氏)
ただし、Keynoteプロトタイピングはとても優れている一方、画面遷移などを作りこんだり、手元で確認するということには向いていません。そのため、誰でも簡単に使える「Prott」というプロトタイピングツールを併用しているとのこと。「両方のツールを組み合わせて使うのが効果的」(元山氏)と、1つのツールで無理に完結しようとせず、メンバーのスキルとの相性を考慮してツールを選ぶ重要さを説いた元山氏のセッションでした。