今後はどうなる?
今回のTensorFlowのオープンソース化は、大きな流れを作り出しているようです。現に著名な深層学習の研究者や開発者も積極的に参加を表明しています。現状のライブラリの完成度としては、参加者の中でも前述のChainerに軍配を上げる方もいましたが、移り変わりの激しい深層学習フレームワーク業界にあって、Googleがサポートするということは将来への大きな約束につながり、不安定なこの分野だからこそ、皆が1つのフレームワークを選ぼうという動きに拍車をかけているように見えます。
つまり、可能性としては他のライブラリはほとんどが淘汰されてなくなり、独自の特徴を持ったフレームワークからはそのおいしいところだけがTensorFlowに移植されていき、その後のイノベーションがこのフレームワーク上で起こる好循環が生まれます。今回講師としてご参加いただいた柏野さんはTensorFlowを「最もマーケティングに成功したライブラリでは」と述べられており、今後の深層学習開発分野に決定的な一石を投じたと言っても過言ではないでしょう。
一方で、TensorFlowにはまだまだ課題も残ります。特に大きいのは処理速度の問題です。シングルCPUでの実行速度はベンチマーク上でも他に大きく劣るようです。また、並列処理へのサポートはサブグラフの分散可能性などの特性から原理的にはかなりフレキシブルに行えるはずですが、実際にはまだ提供されておらず、単一マシン上のGPU処理も一部のアーキテクチャーに限り有効という状況です。
PyData.Tokyoでは、今後も深層学習を始めさまざまなデータ解析技術をウォッチしていきます。毎回各分野のエクスパートをお呼びした質の高い勉強会を行っていますので、読者の皆さんもぜひご参加いただけましたら幸いです!
追記
本記事の原稿整理をしている間に、Googleからまた新しい動きが見られました。画像認識の学習済みネットワーク、Inception-v3のTensorFlowによる実装の配布です。昨年ディープラーニングフレームワークのCaffeを一躍有名にしたModelZooのように、Image Netの教師データで学習済みのネットワークを配布することで、手元にデータや高速なプロセッサーがないユーザーも画像認識の分類器を簡単に手にすることができます。精度も非常に高く、人間の認識力を既に超えている(写真の中の物体を認識し、5つ選んだ候補の中に正解がある確率が96%以上)ということです。
Googleは今後もTensorFlowのマーケティングのために、様々なネタをちょこちょこ出してくることが予想されますので、今後も目が離せません。